はじめに ~ IoT時代のカメラのポテンシャルと、カメラ導入を阻む3つの壁
皆さん、こんにちは。ソラコムCEOの玉川(ニックネーム: ken)です。
ソラコムの新規事業プロジェクトのメンバーの一員として、熱い思いを伝えるためブログを書いております!😊
本日5月18日、ソラコムは新しいサービス、Soracom Cloud Camera Services (略称:ソラカメ)を発表(プレスリリース)し、販売開始しました!
ソラカメは、「あらゆるビジネス現場を身近につなぐ」をテーマとして設計した、カメラの映像をクラウドに常時録画できるクラウドカメラサービスです。1台2,980円、月額990円〜から使えて、すぐにやめることのできるクラウドサービスですので、IoTやDXの新しい取り組みにソラカメをご利用いただけます。
本日(5/18)のメディア発表会の様子をブログ形式でお伝えしたいと思います。
本ブログは、余すことなくソラカメをお伝えしているため、若干長文です。まずはブログ内のスライド画像をパパっとご覧いただき、興味のある部分を深くお読みいただければ、ソラカメの理解が深まるかと思います。
また、販売を記念して5月25日までソラカメ発売記念としてカメラ本体価格の半額キャンペーンを実施!ブログの最後で詳しく紹介しますので、ソラカメの概要や魅力と共にご覧ください。
まずソラカメの詳細を説明する前に、まずはIoT時代のカメラがもつポテンシャル(潜在能力)からお話させてください。
IoT時代のカメラのポテンシャル
いわゆる通常のカメラは、すでに世の中に大変普及しています。
みなさまの多くがデジカメを持たれていたと思いますし、近頃は大半の方がスマホを持っており、そこには高性能なカメラが搭載されています。カメラが好きな方は一眼レフのデジタルカメラを持っているでしょう。これら通常のカメラの共通点は「ユーザーが直接操作する」ことを想定しています。そのため、液晶パネルやタッチパネル等、人が操作するための機能が充実しているものが多いでしょう。
一方で、IoTカメラというものを考えてみると、これは主にIoT向け、M2M向け、ビジネス向けのカメラです。例えば、B2B向けのネットワークカメラ、IPカメラ、クラウドカメラ(カメラの映像をクラウドに保存するカメラ)などが挙げられます。共通の特徴は「ネットワーク接続があり、直接現地で操作しなくても自律動作、もしくは遠隔管理する」といった想定です。IoTカメラは無人ということですね。監視カメラなどは、その場でコントロールする液晶などがついておらず、遠隔操作を前提にしているものも多いでしょう。
通常のカメラは、一人あたり既に数台(スマホ、デジカメなど)もっていると思いますが、一人で100台以上も持つことは稀ではないでしょうか。しかし、IoTカメラはすでにいたるところに設置、活用されています。また、テクノロジーの進化、ネットワークの進化、クラウドの進化とともに、小型化、高機能化、低価格化が進んでおり、今後もますます普及していくことが予想されます。
そうなりますとIoTカメラが産み出す画像や動画は、人では処理しきれない量になりえるわけです。そのため、カメラと共に注目されているのが「AI」です。カメラの画像や映像を、エッジやクラウドでAIアルゴリズムによって処理することで、利用用途が莫大に拡がる可能性があります。AIを活用するIoTカメラの数は今後も爆発的に増えていき、地球上、宇宙上には人口の数十倍、数百倍のカメラが存在することになるかもしれません。
カメラ導入における課題
現状でも、高性能なカメラが警備・防犯用途を中心に普及しています。しかし、DX/IoTの取り組みにおいては「離れた現場の見える化」をしたい、カメラを使って「遠隔監視」したい、カメラ導入のハードルはまだまだ高いと感じています。
主要な課題として次のものが挙げられます。
- 初期投資が高額(機器/設置工事)
- セキュアなデータ保存環境の整備が必要
- 初期設定や操作方法が煩雑
イノベーションを起こすにはFail Fast(早くやってみて、早く失敗する)が必要ですが、費用や技術の面で導入が大変だと、はじめることすら難しくなってしまいます。
ソラカメ (Soracom Cloud Camera Services)とは?
そこで、ソラコムは上記の課題を解決し、お客様がIoTカメラを活用して、さまざまなイノベーションやカイゼンを行っていただくために「ソラカメ」を開発しました。ソラカメは、「あらゆるビジネス現場を身近につなぐ」をテーマとして設計した、カメラの映像をクラウドに常時録画できるクラウドカメラサービスです。
- 1台から導入できる初期費用2980円の設置が容易なカメラを提供し、お客様はスマホを用いてクラウドカメラを数分で迅速に導入できます。
- スマホアプリに管理機能を備えており、複数台のカメラ端末を管理してクラウドに映像を常時録画するので、カメラのリアルタイム映像のモニタリングのみならず、過去録画の任意の時点の閲覧ができます。
ソラカメは、顧客の要望に基づいて常に機能をアップデートしていく、IoT時代のクラウドカメラサービスです。
想定利用シーンとしては、たとえば、小売業では店舗内の監視や、混雑度チェック、バックヤードの入退室管理に使えます。製造業では、工場の設備に複数のカメラを取り付け、メーター目視チェックの代替やライン稼働状況モニタなどにもご利用いただけます。また、オフィスや倉庫では、受付での来訪者データの録画も想定できます。
ソラカメ対応カメラ:防水、防塵+暗視 Wi-Fiカメラ「ATOM Cam 2」
本サービスに欠かせないのがカメラハードウェアです。
ご用意したのがアトムテック社の「ATOM Cam 2」です。ソラカメのカメラとしてご利用頂けます。こちらのリリースで発表させていただきましたが、ソラコムはアトムテック社に出資させていただき、今回のソラカメをアトムテック社と共同開発しました。
ATOM Cam 2は、初期費用2,980円で、Wi-Fiと電源があれば設置できるカメラです。フルHDの高解像度、IP67準拠の防水・防塵、夜間でもカラー映像でみられるカラーナイトビジョン、赤外線LEDによる白黒撮影、カメラを通じた双方向同時通話にも対応しています。
ATOM Cam 2は一辺約5cmの小型カメラで、画角を調整する機構がついており、Wi-Fiと電源があればどこでも簡単に始められます。土台部分には磁石が入っています。本体が軽量であるため、金属の棚にパチッとくっつけるだけで設置できます。
他にも、同梱物の両面テープや、もしくは固定用ネジ(1/4インチ対応)も利用可能で、設置の選択肢も幅広い小型カメラです。
基本機能:使い始めから複数台の閲覧まで
ここからは、実際のセットアップの様子をご紹介します。
アトムテック社から提供されているアプリ(Android、iOSそれぞれ対応)をスマートフォンやタブレットにインストールすると、SORACOMアカウントでログインできます。その後アプリの上でカメラを追加、Wi-Fi接続情報の設定を入力するとQRコードが表示されます。このQRコードをATOM Cam 2のカメラにかざす、すなわちカメラにQRコードを読ませることで、カメラを初期設定が完了です。
そうすると、ソラカメにカメラが登録されることになります。パソコンやWi-Fi設定の一時的な変更も不要で、簡単ですね!
一点忘れていました!後述しますが、まずにソラカメ対応のカメラ「ATOM Cam 2」をSORACOM IoT ストアからお求めいただき、お手元にご用意ください😊
Wi-Fi設定の初期値は、スマートフォンが今つながっているWi-Fi設定が表示されます。スマートフォンと同じネットワークを利用するならば、タップのみで開始可能です。
セットアップが完了したカメラは、アプリ上で管理できます。もちろん複数台のカメラ管理も可能です。
登録したカメラを選択すると、フルHDのリアルタイム映像を閲覧でき、必要に応じて、カメラを通じて音声双方向通話することもできます。カメラ設定もアプリから行え、さまざまな詳細設定を遠隔からセットできます。
例えば、カラーナイトビジョンの設定を見てみましょう。
カラーナイトビジョンを使うと、暗いところでも、カラー映像で見ることができます。また、赤外線LEDを搭載しているので、夜間の非常に暗い部屋でも近距離であれば白黒映像で撮影することができます。
また、スマホから、同時に4台のリアルタイム映像をマルチスクリーン表示することができます。複数台のモニタリングも、基本機能として使えるようになっています。
クラウド・エッジ連携機能:クラウド常時録画、モーション検知録画
ソラカメの大きな特徴が「カメラ映像のクラウド常時録画」です。
保存期間は7日間、14日間、30日間のライセンスを用意しています。アプリのアカウント管理の「カメラのライセンス管理」にて、適切なライセンスを特定のカメラに紐付けることで、クラウド常時録画を利用することができます。
例えば、14日間のライセンスを割り当てると、現在取得している映像は14日間クラウドに保存されることになり、この期間分はいつでも過去の映像として遡って見ることができます。夜間もナイトビジョンで記録されているので、夜間のオフィスや店舗の状況をあとから見ることができます。クラウド上にデータがあるので、万が一、カメラが壊れたり盗まれたりしても、クラウド上の映像を確認することができます。
具体的には下図のように、アプリ上の日付と、映像の下のタイムラインバーを操作することで、特定の日時を閲覧できます。タイムラインバーの薄い赤は録画データが存在していることを示しており、濃い赤は映像の中で何らかの動きがあったことを示しています。
今後、ご要望に応じて、90日や120日、1年といったさらに長期間のクラウド録画にも対応予定ですので、必要な場合は弊社のお問合せフォームにご連絡ください。
モーション検知録画は、物体(ヒトやモノ)の動き/音を検知し、イベント(短時間の動画)として保存しておく機能です。
クラウド常時録画を利用しているときは、このモーション検知の機能を使うことができます。実際にイベントが発生したときのみを把握できるので、例えば、オフィスの入口においてあると来客があった様子をひとまとめに見ることができます。
料金体系
ソラカメは料金面でも、皆さんのイノベーションを後押しいたします。
初期費用はカメラ本体のみの2,980円で、お手頃な価格でクラウドカメラサービスを利用開始することができます。
ソラカメをはじめるには、ソラカメ対応カメラ本体と、付属するクラウド常時録画ライセンスを保存期間を7日間、14日間、30日間の中から選んで購入いただきます。ちなみに、期間が長くなるほど1日あたりの費用単価はリーズナブルになります。また、月額費用はいつでも解約、また再開もオンラインで可能です。
サービスを利用開始する際、利用開始月は月額費用は無料になります。次の月から課金がはじまります。
(もし初月に解約した場合は1ヶ月分の月額費用は請求されるのでご注意ください)
ソラカメをご試用いただいたお客様の声
ソラカメは発売の数週間ほど前からプライベートβプログラム(お試しプログラム)を通じて、多くのお客様に試用いただきフィードバックをいただきました。ありがとうございます!
多くのポジティブなご意見をいただいており、特に以下の項目で高い評価をいただいていることがわかりました。導入検討時の参考情報をとしてご覧ください。
- カメラのセットアップ、初期設定が簡単であること
- カメラ本体の初期投資が低く、サブスクで利用でき、費用対効果が高い
- スマホで簡単に遠隔監視ができること
- クラウド常時録画、モーション検知録画による用途の拡がり
- カメラの画質
そういう意味では、冒頭で触れた「カメラ導入を阻む課題」の解決において、高い評価が得られたことは、チーム一同、非常に嬉しく思っております。
また、AGC株式会社様、寺田倉庫株式会社様、長崎空港ビルディング株式会社様には、プレスリリースにおいてお客様エンドースメントを頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。ご期待にお応えできるようチーム一同、頑張っていきます!
今後のロードマップ ~ エッジAIとクラウドAIの融合
お客様からは、ソラカメに対して高い評価をいただけました。一方でフィードバックの中には、試用いただいたソラカメへの改善点や、さらなるご要望をいただきました。これも具体的なユースケースが見えた証左だと感じています。
具体的には、任意のAIアルゴリズムの適用、Web UI、API連携、クラウド/SaaS連携(Amazon S3への連携)など、すでに多数のご要望をいただいております。カメラそのものに関しても、セルラー対応のカメラ(ソラコムですから!)、首振り機能のカメラなどご要望が多いエリアです。
まだ具体的にどの機能をいつ提供するかは未定なところが多いですが、できるだけ多くの方にとって価値あるサービスになるように、正しい方向で機能追加していきたいと考えています。ソラカメのサーバーサイドやカメラのファームウェアは随時アップデートしていきますので、すでにご購入されたお客様のカメラやソラカメサービスも、新しい機能をどんどん使えるようになっていきます。(もちろん、ハードウェア的に新しいものが必要になる場合はその限りではありませんが。)
現状のソラカメはポンっと置いてすぐに使えるにフォーカスしているソリューションですが、今後、ソラコムのパートナー様にも、ソラカメに付加価値をつけてソリューションの一部として組み込んでいただきやすくなるように、プラットフォーム機能の充実も並行して進めていきます。
ソラカメはまだ発売されたばかりのサービスで現状は非常にシンプルなクラウドカメラサービスですが、今後継続して進化していくサービスですので、是非沢山のフィードバックをお待ちしております!
エッジAIとクラウドAI、AIマーケットの融合
特に、AIアルゴリズム、AIマーケットといった「AI活用」は、多くのお客様からご要望をいただいています。
2019年以降、ソラコムはエッジAIカメラソリューションとして、S+ Camera (サープラスカメラ)シリーズに取り組んできました。これは、セルラー内蔵のエッジAIカメラで、任意のAIアルゴリズムをS+ Camera内蔵のエッジコンピューターで動かすことができます。
S+ Cameraで培ってきたAIアルゴリズムとAIマーケットを、ソラカメにも活用できるようにしていきます。S+ Cameraがエッジ処理にフォーカスしたものであるのに対して、ソラカメは主にクラウド側で処理をする設計です。エッジ処理でも、クラウド処理でもAIアルゴリズムを適用できるようにアーキテクチャ設計をし、その価値を高めていきたいと考えています。
例えば、ソラカメで以下のようなAI活用のデモ環境を構築してみました。
ソラコムの倉庫内にカメラをおいて、段ボールの箱が減っていく様をモーション検知で捕捉します。その画像をクラウドAIで処理します。S+ Cameraですでに連携しているAI Dynamics Japan様の「Package20TM」の段ボール検知アルゴリズムを今回利用させていただきました。それにより、個数の変化があったときのみ、メールにてイベントの発生を伝える、というデモになります。例えば、倉庫の中の在庫の状況を自動的に捕捉したい、といった要望に答えられるようになるでしょう。
こちらの機能についてもまだ一般公開しておりませんが、今年度内の発表を予定しており、まずはプライベートβプログラムから開始する予定です。是非ご期待ください。
ご購入方法
ソラカメのご購入方法は、ソラカメのページをご覧ください。オンラインで1台からご購入可能です。
ソラカメ発売記念キャンペーンは5/25をもって終了いたしました。多くの反響をいただき、ありがとうございました!
おわりに ~ IoT時代のカメラは「インターネットの眼」となる
数億年ほど前、生物が眼を持ったことで多様化の可能性を獲得し、種類が爆発的に増加したといわれる、いわゆるカンブリア爆発が発生したと言われています。
IoT時代のカメラは、まさにインターネットの眼にあたるものだと考えています。
ソラカメにより、初期費用3000円を切る形でクラウドカメラをはじめることができるようになります。(個人的には、SORACOMが2015年に少し前のSIMの初期費用に近く、SIMを世界中にばらまいていくのと近いイメージを持っており、熱い思いがあふれ出ております。)
手頃に買えてすぐに使え、いろいろなところに設置できるようになると、Fail Fastによるイノベーションの可能性がひらけます。
「今までできなかったこういうことが実現できる」「あれやってみたかったけどコスト感があわなかった」「これくらい手軽にはじめられるならやってみようかな」と色々な方が想像力を膨らませてくれると思います。何より、新しいものは触ってみて楽しいものです😊👍
我々が想像していなかった使い方をされるお客様、パートナー様が出てくると信じており、いまからワクワクとしています。もちろん、まだまだソラカメは発売初期のもので、現在はすぐに使い始められることにフォーカスしていますので、AIアルゴリズム連携、API連携など拡張性はこれからですが、今後徐々に拡張していきたいと考えています。
ソラコムはこれからも「IoTのつなぐを簡単に」、IoTテクノロジーの民主化に取り組んでいきます。
みなさま、是非ソラカメを触ってみてフィードバックください!
【セミナーのお知らせ】 5/26 オンラインセミナー「AI Camera NOW」
また5月26日に(木)13:30より、ソラカメも登場する無料のオンラインセミナー「AI Camera NOW」を開催します。
今回のセミナーはソラカメについて、いち早く皆さんにご紹介する場となりました。その他、AIカメラ S+ Cameraの設置ノウハウやインストールするだけで使える各種AIアルゴリズムを活用事例と共に解説します。奮ってご参加ください。
Still Day One
― ソラコム玉川 (Ken)
参考情報
- ソラカメのプレスリリース
- ソラコムとアトムテックが資本業務提携:https://soracom.com/ja-jp/news/20220518-1/
- 「ソラカメ」を提供開始:
https://soracom.com/ja-jp/news/20220518-2/
- ユーザーガイド
- SORACOM IoT ストア / Soracom Cloud Camera Services ソラカメ