2023年7月5、6日の2日間にわたって開催する日本最大級のIoTカンファレンスSORACOM Discovery。展示ブースには、IoTプロジェクトをサポートする30以上の企業がブース出展します。なかでも、豊富な実績をもつ企業をご紹介していきます。今回フォーカスするのは、株式会社システムゼウスです。
システムゼウスはアプリケーションの受託開発が主軸事業の会社です。電子マネーシステムやWebアプリケーション、AWSクラウド上での開発が得意で、2018年頃からはIoTシステム開発にも注力しています。クラウドのみならずデバイスの組込みアプリも守備範囲で、さらにはデバイスを操作するために必要になるスマホアプリや、運用者がバックオフィスで使用するWebアプリの開発もこなします。
スキルバリエーションに富んだIoTシステム開発実績
システムゼウスが支援したIoTプロジェクトを3つ紹介します。
スマートホーム用クラウド及びスマホアプリの開発
デバイス=サーキュレーターをスマートスピーカーで発話操作するためのクラウド(Amazon Web Services, AWS)に加え、デバイスのセットアップに使用するスマホアプリ(iOS及びAndroid)を自社で開発しました。「運用開始から約3年経過した現在も、安定して運用できています」(システムゼウス取締役COOの飛田直人氏)
IoT通信モジュール向け組込みアプリの開発
家電製品をネットにつなげてIoT化する際に用いる拡張基板、つまりIoT通信モジュールで動作する組込みアプリを開発。RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)搭載の32bitマイコンで動作し、シリアル通信でつながる家電製品本体基板とAWS IoTベースのクラウドとの「上り」「下り」通信を仲介する役割を果たします。
このIoT通信モジュールを動作させるには、クラウド、シリアル通信先のデバイス本体、セットアップ用スマホアプリの3つの要素が必要です。それらを全て自社でモック開発したことでシステム全体に及ぶ網羅的な試験が実施でき、IoT通信モジュールを先行して仕上げることができました。
「クラウドはAWS IoT+Lambda(Node.js)、デバイスはESP32、スマホアプリはAndroidで実装しました。本番の開発を担当した企業は先行して出来上がっていたIoT通信モジュールを対向につなげて試験を実施することができました。実質的には我々が開発したIoT通信モジュールがプロジェクト全体を先導したと言えます。
また、本開発は本格的な組込み開発でありながら適所でPythonを用い、組込みアプリのメモリ使用量の計測やメモリリーク分析を効率良く実施し、量産工場で使用する検査ツールなどを提供しました」(飛田氏)
電力保安デバイス管理用クラウドの開発
電力保安デバイスを監視・遠隔操作するためのクラウドの開発も担当。
「デバイスはSORACOM Airで通信しますが、それにSORACOM Beamと認証情報ストアを組み合わせることでデバイス側でのセキュアエレメントの実装・運用を不要とし、負担の少ない安全な通信を実現しました。
また、キャリア通信網障害を想定し、障害回復後に発生しうるデバイスの一斉通信に備えてクラウド側にAmazon Kinesis Data Streamを軸にしたバッファリングの仕組みを実装し、大量データ受信にも耐えられるようにしました。負荷試験ツールLocustを用いた負荷試験を行い、検出した大量データアクセス時にのみ発生するDBアクセス問題を摘み取り、最終的に正しくバッファリングの仕組みが動作することを証明しました」(飛田氏)
システムゼウスの展示内容
SORACOM Discovery2023の展示ブースでは、スマホアプリでドアの開錠・施錠ができる「スマートロックデモシステム」を紹介いただく予定です。
ドアシリンダーをひねる動力を備えたデバイスをクラウド(AWSベース)とつなげ、アプリで施錠・解錠操作ができるという仕組みだそうです。
アプリはFlutterで開発したネイティブアプリと、Reactで開発したWebアプリの二階層仕立てで本運用を想定したリアリティを追求しています。
IoTソリューションエンジニア育成に注力
システムゼウスの強みは、1人でクラウド・アプリ・組込みまで全方位で担当できるIoTエンジニアたちの存在です。同社では、新卒で採用したエンジニアを対象に、上記3分野のスキルを獲得できるよう集中的な育成プログラムを実施しています。
システムゼウス取締役COOの飛田直人氏は、「実際にお客様の声を聞いていると、IoTに関する開発では複数領域にわたる課題が多い。クラウドシステム開発でのお困りごとは必ずしもクラウドに関することではなく、例えばTLS通信などクラウドと組込みにわたる問題や、証明書の発行とアクティベートなど、クラウドとデバイスを行き来する内容で苦労されていることが分かりました」と、”三種混合”のIoTエンジニア育成に注力するに至った背景を説明してくださいました。
「トライアスロン選手に例えると、マラソン・水泳・自転車のエキスパートはそれぞれいるなかで、満遍なく高いレベルでパフォーマンスを発揮するのがトライアスロン選手。IoTエンジニアも、クラウド・アプリ・組み込みの3分野で必要な要素をバランスよくスキルとして身に着けるのは非現実的なことではない。むしろ、AIの登場などでますます複雑化する開発状況にあって、広く要素をつなぎ合わせて考えられてこそ、IoTエンジニアを名乗れるのではないかと考えています」(飛田氏)
システムゼウス全社ではウォーターフォール開発がまだ多いですが、IoTに関してはアジャイル開発のみ受注するといいます。その理由について、飛田氏は「IoTシステムの開発では、実際に動作しているのを見ていただきながらではないと判断が付けづらいというのが私の持論。開発の最中にも要件の足し引きができるというのが、結局はクライアントにも合意が得られやすいのです」と、語ります。
IoT開発に精通したエンジニアとともに、2週間のスプリントごとに進捗を確認しながら開発を進められるのは、初めてIoT導入を検討している場合にも安心ですね。
システムゼウスのサービスにご興味のある方は、ぜひ、7月6日のSORACOM Discovery2023の会場でお話を聞いてみてはいかがでしょうか。
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― ソラコム北川 (martha)