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IoTの基礎知識から実務を網羅した一冊「IoTの知識地図」 ― 見どころ解説

こんにちは、ソラコムの松下(ニックネーム: max)です。

4/17に技術評論社から発売となった「IoTの知識地図」という本をご存じでしょうか?
本書は、IoTの基礎知識から実務を学べる本として、ソラコムのメンバーで執筆しました(関連プレスリリース)。

私は目次作りや編集といった全体を見る役割で関わることになりました。そこでこのブログでは、そんな私の視点から「IoTの知識地図」の見どころや執筆裏話をご紹介します!

5年使える、IoTの基礎知識を目指して

IoTはハードウェア・通信・クラウド/サーバーの組み合わせで成り立っていますが、活用目的によって構成が異なります。すなわち応用力が求められ、技術的な正解が1つでないところが、IoTが難しそうに見える背景かもしれません(個人的には、この点がIoTの面白さだとも思っていますが)。

組み合わせで出来ているということは、組み合わせの単位があります。そこで本書では、その単位毎に分解・解説をすることで理解のしやすさと、応用の前提となる基礎知識を網羅しました。

そして「この先5年は使える」ことを目指して、普遍的と思われる内容に集中して執筆してもらっています。そのため、生成 AI 等の過渡期にある技術については、関連性を言及する程度にとどめました。初心者の方がIoTの全体像を理解・実践できるようになる教科書として、また、すでに特定分野でスキルをお持ちの方のIoTにおける知識を補う一冊として使っていただきたいと思っています。

見どころや苦労した点

IoT解説と実践を主体

本書はソラコムのソリューション・アーキテクト(以下、SA)のメンバーを中心に執筆しました。ともすると、SORACOM解説本になりそうな雰囲気もあるのですが、そこをググっとこらえてIoTの解説にフォーカスを置いています。ソラコムのSAの面々は普段からお客様の課題解決に目が向いており、その延長線上で執筆をしてもらいました(「ソリューションアーキテクトとは、何をする仕事?」こちらも併せてご覧ください)。

必要時のみSORACOMを引用する方針にしています

もしSORACOM自体にご興味があるなら「公式ガイドブック SORACOMプラットフォーム(日経BP社)」をご覧ください。こちらはまさにSORACOM解説本となっています。

実践に “本当に” 必要な知識、その入り口に

本書の特徴の1つとして「実践向け」も目指しました。すなわち、読者が自ら開発を進められることを目指した情報も盛り込んでいます。

例えば第3章のセンサー活用では、「センサーを用いた開発なら、テスターやオシロスコープは必須」として、これらの特徴やどういった時に使うのかを解説しています。本書は入り口を紹介し、使いこなしはそれぞれの解説本にお任せするといった方針です。

多岐に渡るIoTでは、時には「やらないこと」も求められます。例には、第6章の双方向通信(クラウドからデバイスを制御する通信)において「双方向通信を “使わない” という選択」や、第8章のプロジェクトの進め方ではプロジェクトの軌道修正や、やめる事についても言及しています。
ソラコムのSAが実践している知識を共有しているのが本書です。

執筆はGoogle DocsとGitHubを利用

執筆した環境もご紹介しておきます。

最初は目次作りです。アウトライン機能や編集の方との意見交換・修正提案を手軽かつ密に行うことを目的に、Google Docsを利用しています。議事録もGoogle Docsで共有していきました。

実際に使用した目次案

その後、各担当にはMarkdownで執筆いただき、プライベートのGitHubリポジトリに集めるフローにしています。編集からのフィードバックはissueを使用しました。初校以降はPDF上のコメント機能でやり取りしています。

また執筆中のページ数の見極めに、mkd→docxへのフォーマッティングを都度していました。docx化はPandocを利用しています。

執筆陣より一言

IoTプラットフォーム「SORACOM」のサービス開始から約9年、お客様と共に歩んだIoTのノウハウを詰め込みました。その執筆陣からの一言です!

yaman (片山) 1章担当

IoTの知識地図、事前知識を意識せず読んでいただけると思いますので、ITエンジニア以外の方にもぜひお勧めしていただきたいです。

takao (井出) 2章担当

あぁ今シーズンはゲレンデ無理か〜と思っていたら少雪のためゲレンデに行くことができなかったおかげで本を書きあげることができました。そして執筆のほとぼりが冷めた3月以降に雪山のコンディションが良くなってきて文武両道の良いシーズンでした!

shun (横田) 3章担当

久しぶりにセンサーについて腰を据えて触れる時間が楽しかったです!昔より進歩している部分も多く新たな個人的に新たな知見を得られたとともに、それらを書籍に残せたことはとても良かったなぁと実感しています。個人としても書籍の執筆は初めてだったので、大変だった部分も楽しかった部分も含めて良い経験でした!

dai (渡邊) 4章担当

maxも書いている通り、普段お話しているSORACOMの解説ならスラスラ書けるのですが(?)、そこをググっとこらえて一般的なIoTの解説をするのに苦労しました。ZigBeeとかEnOceanは書籍でしか触れたことが無かったため。ただ、検索したり調べてみると、ソラコムのSPSパートナー様が製品を出せれていたり、事例を公開されていて、書きながら自分自身も学べてとても参考になりました!

taketo (松永) 5章担当

IoTプロジェクトにおいてクラウド利用に関わる全体像をイメージして頂けるように意識しました。その他の章も弊社の長年の経験からベストプラクティスが纏まっています!是非、手に取って読んでみてください!

takuya (桶谷) 6章担当

他のタスクと執筆時期が被ったりして年末年始は久しぶりにバタバタしてしまいました。お客さまからIoTシステムのご相談をいただく際に、必ず確認している双方向通信の有無や要件について、自分の中でも整理ができて良かったです。

masa (服部) 7章担当

センサー・デバイス、通信にクラウドの選定、それに加えてセキュリティまで(そしてコストも!) 同時に考えるのは大変ですよね。それでも大事なセキュリティについて、できるだけ俯瞰しつつも、よくある落とし穴はちゃんと避けて活用頂けるようにまとめたい、それは「その課題を解決するのがSORACOMです!」とはならない普遍的な内容として。お役に立てると嬉しいです!

kei (須田) 8章担当

素敵な一冊に仕上がっているのでぜひお手に取ってご覧ください。

さいごに ― 謝辞

第1章では事例を題材にIoTの全体像を解説していますが、その事例の元の大半がSORACOMのお客様事例を利用させていただいています。これらの事例をご提供いただけたからこそ、この本が成り立ちました。ご協力いただいた皆さまに深くお礼申し上げます!

また、本の企画から編集、そして発売までご尽力いただいた技術評論社の皆さまにも感謝いたします!

そして、執筆という大変な仕事を引き受けてくれた執筆陣の面々、執筆を行えるように業務整備していただいたマネージャーやメンバー、そしてGitHub repoやPandoc環境を整備・運用してくれたエンジニア(ニックネーム: kaoru)、ありがとうございました!

この本が、皆さまのIoTの基礎や活用の入り口として、お役に立てることを願っています。書店やWebで見かけた際には、お手に取っていただけますと大変嬉しいです。ご感想はレビューやSNSで共有いただけると喜んじゃいます!ハッシュタグは #SORACOM を是非お使いください。よろしくお願いします🙏

― 書き終わってホッとしている、ソラコム松下 (max)