2014年に設立した日本発のスタートアップである「ソラコム」は、IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供しています。そのソラコムが2022年5月に立ち上げたのがクラウドカメラサービス「ソラカメ」です。
IoTプラットフォームSORACOMは、ある程度のIoTやプログラミングに関する知識を必要とする開発者向けサービスである一方、開発者ではない方々においても効率や生産性を向上させるために、業務をデジタル化する必要性が増しています。そのためデバイスを購入して取り付ければ、すぐ使えるようなソリューションを求めるユーザーも増加し、使いやすいソラカメも利用者が増えています。スタートアップ内の新規事業でもあるソラカメチームのメンバーに主に職場の雰囲気や働き方について聞いた前編に続き、後編では実際の業務や環境、仕事に対するやりがいについて聞きました。
話を聞いたメンバーは前編と同じく、セールスで事業開発リードの高見(yuu ※カッコ内はニックネーム)さん、同じくセールスでプロダクトマネージャーも務める鬼木(onicky)、リードエンジニアの五十嵐(ash)、シニアエンジニアの松下(koki)、エンジニアの大沼(shinya)、同じくエンジニアの片瀬(kumico)、エンジニア兼デザイナーの李(feifei)の7人です。
「短期間で出して使ってもらえる体制」はお客さまにもメリット
高見(yuu):僕らは2週間単位で新機能をリリースするという体制を取っています。お客さまのフィードバックに対してすぐ対応できるサイクルの早さが新規事業の面白みでもあります。セールスもエンジニアもデザイナーもいるチームだからこそ、こういうことが実感できる体制になっている、というのがソラカメチームの一番の特徴なのかなと思いますね。
五十嵐(ash):2週間のうち、最初の月曜日は「この2週間でこういうことをしよう」というのをプランニングして、決まった内容をチケットシステムで管理します。また、この日に会議をする、この日にUIのデモンストレーションをするといったスケジュールを、全員が見られるカレンダーに登録して、2週間の流れを全員が把握できるようにしています。
カレンダーに登録したスケジュールはSlackで通知しています。週の初めに1週間分の通知、日ごとのスケジュールも毎日通知するので「今日は何をする日なのか」がチーム全員でしっかり共有できるようになっています。
1週目は木曜にうまくいってないお悩みを相談する時間を取り、金曜には1週間の振り返りをします。2週目の月曜は想定とずれていたところを修正してスケジュールを引き直し、木曜にチェックしてから、金曜にリリースと最後の振り返りをして、その後にハッピーアワー、という流れですね。
——2週間という開発サイクルは大変そうですが……。
大沼(shinya):自分はむしろその速さでやりたいです。セールスにとって売上の数値が成果であるようにエンジニアにとって成果はプロダクトそのもの。なので結果がすばやく目に見えたほうが楽しいですしね。
1回のリリースまでが長いとどうしても丁寧に作り込まないといけないと考えてしまいがちだけど、早く出せば修正の時間もできるし、そもそもお客さまに使ってもらわないとわからないから、まず出して使ってもらえる体制は、お客さまと私達、双方にメリットがあることだと考えています。
ハード未経験でも「学べて視野が広がる」
——ソラカメは、カメラを扱うクラウドサービスですが、ハードウェアビジネスの経験がない人でもソラカメで働けるのでしょうか。
yuu:ハードに詳しくないエンジニアでももちろん働けるんですが、チームの一員としてはハードの知識がゼロのままというわけにはいきません。今は経験豊富なkoki(松下)がハード周りの面倒を見ながらソフト側のエンジニアの質問に回答してくれるインターフェースになってくれています。ハードに興味があるけれど今の時点でハードのスキルがないという人でも大丈夫です。
片瀬(kumico):実際kokiはわからないことがあったら何でも相談できるのでめちゃくちゃ頼りにしています。あと、ソラカメチーム以外のエンジニアにバックエンドのAPIやハードウェアを相談できるのも、すごくいい体制で開発できています。
鬼木(onicky):生々しいこと聞いちゃうけど、ハードの経験を積むことはエンジニアのキャリアとしても得だと思う?
shinya:自分もそれを期待してソラコムに入社したというところはありますね。ソフトは前職でもある程度キャリアを積んできたし、市販の教材もたくさんあるので独学でできるんですが、ハードはゼロからやれる環境がなかなかありません。特にキャリア途中からとなるとすごく難しいけれど、ソラカメチームならソフトウェアのエンジニアとして働きつつ、ハードについても学べるかな、という期待感がありました。そしたらkokiみたいな人がいたので「思い通りだった!」って思いましたね。
多くの人に使ってもらえる、学んできたことを生かせる
——これまでの仕事を通じてどんなときにやりがいを感じましたか?
yuu:ソラカメは私とashの2人で2年半前に立ち上げました。発売初日は「何台売れるかな?」なんてみんなで投票したりして当然すぐ売れると期待していたのですが、ふたを開けたら予想の1割くらいしか売れなかったんです。
最近ではソラカメの認知が広がったのはもちろん、具体的な利用シーンも増えて、パートナーと連携した新しいソリューションも生まれるなど、いろいろ動きが出てきています。結果、売上にも結びつき、新規事業として成長を感じられる一番面白いところですね。
onicky:今までカメラが入り込めなかった業種や現場にもどんどんソラカメを使ってもらっているし、これからも使いたいという声を頂いていて、今まで自分が知らなかった業界の解像度が上がるのがむちゃくちゃ楽しいです。
何十階建てという巨大なオフィスビルの建設現場だったり、一方で農業のような屋外の現場でも使っている人がいたり、それ以外だと、無人のスポーツジムやゴルフ練習場、ペットホテルなどでも導入が始まっています。業界ごとの特殊な使い方が別の業界にもすごいハマったりします。最近の事例だと、ウェザーニューズさんは1000台以上をユーザーに配布しました。お天気カメラとして全国の天気情報をレポートしたり、天気予報の精度向上に役立ったりしています。
feifei:私のポジションはもともとエンジニアでしたが、実際はデザイナーみたいなポジションになりつつあって、Tシャツを作ったり展示用のカメラに取り付ける飾り(写真)を作ったりいろいろなことにチャレンジしています。お客さまから見えるところでは、カメラを登録する時の3Dアニメーションや書類の制作など思ってもいなかったことを担当しているんです。元々専門は工業デザインを学んでいたので、思いがけず今までの経験を仕事に活かせているなと思っています。
お客さまもユースケースも増えたから、実現したいことも増えている
——最後にこれからソラカメチームに入りたいという人にメッセージをいただけますか?
ash:今ソラカメは製品と組織が試行錯誤しながら急速に伸びているプロダクトなので、個人の裁量が大きく、その結果をすぐに確認できるのです。今いる組織に対して多かれ少なかれ違和感を覚えているけれど、人間関係のしがらみや企業の大きさゆえにやりたいことができない人にこそソラカメチームに来てもらって「こういうことをやりたかった」を体現してほしいですね。
shinya:プロダクトの規模が大きくなるとソースコードも複雑になって、何で動作しているのかわからないことも増えがちですが、ソラカメの規模だと今はこれがこういう理由でこうなっている、だからこれをやらなきゃいけないというのが全部見えます。成長していくためにそういうことがはっきり見えるのは本当に楽しいです。
それにソラカメはエンジニアとしてのキャリアパスとしても期待していて、ハードはもちろんクラウドもあるし、カメラだとセキュリティ的に妥協もできません。いろいろな現場で使われているサービスで、これから台数も増えていくので、システムの安定運用においても、先を見据えて取り組んで行く必要があります。でもそれをクリアできたら自分がステップアップできるんじゃないかという期待があって、それは今のチームに魅力を感じて入ってきた理由でもあります。
シニアエンジニアの松下(ニックネームはkoki)。もともとソラコムのエンジニアリング部門でデバイス開発やAIを担当。ソラカメのチームに求められて異動。ストリーミングなどのソフトウェアを実装。この日も地元の九州からリモートワーク
koki:ぼくはそもそもソフトウェアエンジニアだけど、それにこだわらずハードやAIも手掛けています。だからこそ、ソラカメはフルスケールで、ハードからAIまでやれる面白いプロダクトだなと思っています。
yuu:ソラコムの会社全体としては、IoTプラットフォーム事業はグローバルなカバレッジ、日本に関しては垂直統合なIoTのSaaS事業を立ち上げるという2つの大きな中期計画があって、そのうちの1つがまさにソラカメであり、IoT SaaSの第1弾として位置づけている事業でもあります。これからIoT SaaSを極めるのはもちろん、グローバルプラットフォーマーになりたいとも思っているので、ソラカメのグローバル展開は成し遂げたいことのひとつです。
ashが言ったとおりチームとしても成長してきていて、売上も伸びているし、お客さまやユースケースの数とともに、さらに実現したいことがどんどん増えています。一方で新しい人をサポートする体制もありますし、カルチャーとしてもフラットで風通しがいい組織を築きつつあるので、何かにチャレンジしたいけど何に情熱をそそいでいいかわからない、とにかくチャレンジしたいという人に来ていただけたらと思っています。