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つなぐ、集める。その先にある「真のIoT」を実現する要素とは?

IoTの本質は、デジタル化した現場のデータをクラウドで活かす事にあります。現場とクラウドをつなげ、そしてデータを集めるというのが全体像です。

本ブログでは、今年7月17日に開催したIoTカンファレンス「SORACOM Discovery 2024」のCTOによる基調講演「IoTとAIテクノロジーが織りなすデータ中心の世界へ」の様子を通じて、「真のIoTとは?その実現に不可欠な要素」を皆さんにご紹介します。

プラットフォームの役割、デバイスとコネクティビティ

IoTに限らず、現代におけるITシステム作りに欠かせないのが「プラットフォーム」です。冒頭では改めて、ソラコムが考えるプラットフォームの役割、そしてソラコムが一貫して提供し続けているIoTで不可欠な要素「コネクティビティ (接続性)」について、安川が解説しました。

ソラコム安川(kenta)

プラットフォームとは「イノベーションの芽を大きく育てる土壌」です。IoTではデバイス管理や通信回線の準備や運用、クラウド連携の開発、セキュリティ確保と、規模や用途を問わず共通の課題があります。プラットフォームとは、共通の課題を解消する仕組みを提供するものです。開発や運用の手間を減らしてより価値のある事柄にリソースを割り当て、イノベーションを拡げていくことができるのがプラットフォームを使うべき理由です。

中でも通信回線やデバイスは、現場のデジタル化やクラウドをつなげるIoTにおける生命線とも言えます。SORACOMはIoTプラットフォームとして、これら共通の課題に向き合ってきました。

ここでゲストとしてお呼びしたのが、Bluesのレイ・オジー氏、Skylo Technologiesのパース氏です。

Bluesのレイ・オジー氏(写真中央)、Skylo Technologiesのパース氏(写真右)

オジー氏は、グループウェア「Lotus Notes」の開発を主導、その後Microsoft社ではCTOとしてMicrosoft Azureの立ち上げに関与。現在はBlues社の創設者兼CEOとして、現場からクラウドまで一気通貫でデジタル化できるIoTデバイス「Notecard」を開発されています。

今回、Notecard に SORACOM の IoT SIMが搭載済みの「Blues Notecard for Soracom」を発表いただきました。このようなデバイスによって現場をデジタル化、かつデータをクラウドと連携する手段をパートナーと共に進めています(日本国内での展開は検討中)。

加えて Notecard の衛星通信対応版も紹介いただきました。この通信に使われているのがSkylo Technologiesの技術です。同社のCEOパース氏は昨年のSORACOM Discoveryからの登壇で「今年もアップデートが紹介できて嬉しく思う」とお話しいただきました(参考資料: SORACOM IoT SIMに衛星通信サービスを追加可能に、「planNT1」を提供開始)。

安川からは「デバイス、コネクティビティなどなど、色々なパートナー、そしてツールやサービスを組み合わせることで “シンカ” し続けることができる」と、まとめました。

SORACOM プラットフォームの2つのシンカ、1つ目 “進化”

その “シンカ” には、2つの意味を持たせたのが今年の基調講演です。シンカの1つ目は「進化」、すなわちソラコムの成長の道程です。ここからはソラコムの上級執行役員 Chief Engineering Officer (CEnO) の片山から、様々なソラコムのアップデート “進化” を解説しました。

まず、進化自体の速度や頻度です。IoTプラットフォーム「SORACOM」は、2015年9月のサービススタート以来、新機能や機能改善のリリースを2週間に1回のペースで続けています。この進化は大規模IoTシステムでも安心・便利に使っていただける取り組みとして、通信の安定性や認証取得といった目に見えづらい部分(すなわち、共通の課題)にまで及んでいます。

ここでご紹介したアップデート一覧

片山は「皆さまが実現したいIoTビジネスの可能性を拡げるためにも、IoTプラットフォーム『SORACOM』は、お客様の声を基に進化し続けます」と締めくくりました。

お客様の声を力に、進化し続ける

SORACOMの進化の源泉はお客様の声です。片山から引き継いだ安川は、ソラコムのサービス開始後から使い続けているメッセージ「Working backwards from the customer ― お客様の声から逆算して考える」を紹介しました。

Working backwards from the customer ― お客様の声から逆算して考える

その一例として、2023年のSORACOM Discovery で発表した、メディア転送サービス「SORACOM Relay」を挙げました。SORACOM Relay とは、IPカメラで用いられる伝送プロトコル “RTSP” を、ソフトウェアの追加や改修をせずにクラウドに転送できるサービスです。

今年は SORACOM Relay(以下、Relay) の新たなプラン「リザーブドリソースプラン(専用リソースをあらかじめ確保しておくプラン)」を発表しました。ここでは、このプランを作るきっかけとなったお客様の声として、クラリオンライフサイクルソリューションズ株式会社の鶴巣氏にご登壇いただきました。

同社は日本国内のクラリオン販売子会社8社を統合、その後フランスのフォルシアの傘下となった後に2023年に現商号となり、バスやトラック、タクシー、建機といった「はたらくクルマ」向けのデバイスを開発・販売しています。

ここでご紹介いただいたのが、この秋発売予定の通信内蔵ドライブレコーダー「CF4000」です。通信には SORACOM IoT SIM を用いています。どこでもつながるという環境を活かした機能が、特定の車両やドライバーの状況をリアルタイムに確認できる「ライブ配信」です。例えば事故直後の様子や駐車中の異常時に、現場の様子をカメラ越しに確認できます。

この機能実装に SORACOM Relay を採用いただいています。その際、同社が実現したいビジネス要件をソラコムにご相談いただいたところ、Relay における強化ポイントが明確になったことで先のプランの実現に至りました。

「この要望は他のお客様も課題となりうるだろう。だからこそ、ソラコムがプラットフォーマーとして実装する」という、プラットフォーマーの考え方、そして “お客様の声から逆算して考える” の例として紹介しました。

もう一つの「シンカ “深化”」で、真の IoT の実現へ

「現在のIoTは “イントラネット・オブ・シングス” = 閉じたネットワーク内での活用が主流だが、データから生み出される “知” をネットワークを超えて共有しあう世界 ― 真のIoTの可能性を、AIに見出した」と安川は切り出しました。

ここからはCTO of Japanの松井に引き継ぎ、ソラコムの生成AIに対する取り組みと、新サービス「SORACOM Flux」を解説しました。

松井からは振り返りとして、昨年のSORACOM Discovery から現在までのソラコムにおける生成AIへの取り組みを紹介しました。

特にIoT × GenAI Labでは、IoTと生成AIを応用した空調機器制御の実証実験といった成果も出ています(関連情報: 三菱電機とソラコム・松尾研究所「IoT × GenAI Lab」が、 IoTと生成AIを応用した空調機器制御の実証実験を実施

これらの取り組みで見えてきたことは「デバイスの入出力情報、業務知識と集めたデータにAIをかけ合わせる事が真のIoT ― “知” を共有しあう世界への道筋だ」と、松井は語りました。また一方で、デバイス、各種データソース、そして AI をつなぎ合わせてアプリケーションを作るのは容易ではなく、これは今後の共通の課題となることも見えてきました。

その想いを “深化” してたどり着いたのが、ローコード IoT アプリケーションビルダー「SORACOM Flux(フラックス)」です。以下のように、デバイス(左側)と AI(右側)を結び付けて、AIを用いたアプリケーション作りを実現するサービスです。

基調講演では、2つの動画デモを紹介しました。
1つ目は、映像からヘルメット未着装を生成AIによって判定し、通知と共に現場の警告灯を動作させるものです。

2つ目は、先ほど作ったものに人員の転倒を生成AIによって判定するところと、自動音声による電話連絡を加えるというものです。

このように、IoTデバイスと生成AIを組み合わせたアプリケーション作りができる仕組みを紹介しました。

SORACOM Flux の今後のロードマップとしてはアクションやイベントソース(情報源)の拡充や、外部サービス・SaaS との積極的な連携を挙げ、ステージを安川に引き継ぎました。

真の IoT へ向けて、お客様と共に

安川は「AIを追い風に、真のIoTの実現に向けてソラコムの “2つのシンカ” はこれからも続く。その源はお客様の声なので、ぜひフィードバックをいただきたい」と、基調講演を締めくくる挨拶をしました。

本基調講演の資料はSpeaker Deck で公開中です。他のセッションの資料も公開しています。是非ご覧ください。

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― ソラコム松下 (Max)