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LoRaWAN Conference session3 全文書き起こし(2)

みなさんこんにちは、ソラコムマーケティングの熊崎です。
LoRaWAN Conference 2017のsession3「LoRaWAN活用の展望  〜パネルディスカッション〜」講演書き起こしブログをお届けします。
本セッションは、ウイングアーク1stの武市様、九州通信ネットワークの松崎様、フューチャーの池田様にご登壇いただき、実際のユースケースを元にLoRaWANビジネスについて、今後の展望をお話いただいてます。

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LoRaWANとドローンを利用した橋梁インフラモニタリング

九州通信ネットワーク・松崎:橋梁インフラとLoRaWANで、今日は橋梁インフラモニタリングを中心にお話をします。
我々は九州にある通信会社で、九州電力の子会社です。BBIQサービスをコンシューマー向けに、法人向けにQTプロのブランドでサービスを展開している電気通信サービスの会社です。橋梁は点検やメンテナンスが大変な地域もあります。橋梁インフラは高齢化が進んでいき、今は大体16パーセントですが20年後には65パーセントとなります。5年に一度の近接目視点検が義務となっているので、維持や管理のコストが増える一方、管理する技術職人は減ってきています。今のまま継続していくことは厳しいという感じで、ここを何とかしたいと思い、橋梁インフラのモニタリング実験をしています。この実験の中でSORACOM Airや我々の光ファイバー等様々な通信用途を試しつつ、データを取得し活用方法を研究しています。
この橋梁インフラモニタリングにLoRaWANの利用を、去年の6月頃から考えていました。イメージとしては、橋梁からその先の遠くにある橋梁までLoRaWANでつながり、一つのSIMでアップロードできないかというものです。実際にLoRaWANがどれだけ届くのか知るため、去年宮崎県の郊外と中心部を結ぶ高松橋で実験しました。通信ができた所は、距離にすると最大で4キロでした。
こちらは宮崎県の高千穂町にある下田原大橋で、最終的に最長7キロ程度まで届きました。

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しかしこれは、1000メートル級の眺めのいい山に一生懸命登ってみたら届いたという状況でした。今回は山に登るのではなく、ドローンでの実験をしてみました。
福岡地域戦略推進協議会の中の九州ドローンコンソーシアムという組織で活動に取り組んでおり、今回の実証実験はそのメンバーである株式会社トルビズオンさまにご協力をいただき実施しました。まず一つ目にドローンの飛行移動が、あまり早いとデータが取れません。どれぐらいのスピードだったら取れるか測るため、ドローンに走ってもらいました。結果、データが取れる最大速度は時速14キロでした。
もう一つは上空でのホバリングでの伝送試験です。地上に設置している状態では、見通しの良い海岸沿いで、5.5キロでした。これを上空45メートルぐらいまで持ち上げると、最長9.5キロとなりました。今回、子機側をこういう形でドローンに載せましたが、実施する際には電波法や航空法にも十分ご留意ください。これを先ほどの宮崎市内の橋と高千穂町の橋に当てはめると、どうなるかを想定すると、橋から45~50メートルまで上げればかなり届きます。ドローンだけでもいいかというぐらいでした。とはいえ、日常利用を考えるとアクセスポイントとなる固定型のゲートウェイは設置しておきたいとは思います。

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九州にある橋梁は、まだまだ点検を補助・サポートしてくれるシステムが求められているという状況です。上手に活用し、今後サービスに展開していければと考えています。橋梁は、電源や配線が大変で、お金も掛かります。そのため電池駆動で動くセンシングをうまく使えば、より効率的なモニタリングができます。今回使ったドローンではいろいろと更なる活用・アイデアも湧いてくると思いますのでので、これまでなかったものができてくるできると思います。

玉川:フューチャー・池田様と九州通信ネットワーク・松崎様の両方で出てきたドローンですが、ドローンを上に飛ばすせば飛ぶのでは?というアイデアはどなたが思い付きましたか?

フューチャー・池田:社内のR&Dです。

九州通信ネットワーク・松崎:私が言い出しました。

玉川:40メートルぐらい上げるだけで、あれだけ飛ぶのは面白いです。

九州通信ネットワーク・松崎:航空法的には150メートルまではとなっています。150メートルまで行けばもっと飛距離が伸びると思いましたが、測定者がかなり遠くまで走る必要があるということで今回はこここまでで断念しました。

玉川:ものすごくしっかりと実証実験をやられて、非常に面白いデータをいただきましたが、やってみないと分からないというところがあると思います。やってみて、本当に分かったことをお伺いしたいです。

ウイングアーク1st・武市:まず、人間の感覚は結構正確だと感じました。我々のフロアは大体14~15階が結構混んでいる印象を持っていましたが、データを見てやはり混んでいたと分かりました。またデータを貯めて、再活用できる基盤ができたので、トイレの混雑時間の予測などに使える等様々な所からお声をいただくようになりました。

フューチャー・池田:今回はインフラ構築側視点で実験をしたので、これからいかに効率よくLoRaゲートウェイを配置するか、もう一つ、実際ユーザーは、基地局の場所よりも自分のいる場所でどれくらい受信できるかに関心があると感じました。レイヤー位置情報を取りパケットしてみました。移動している場合は受信の感度が変わるという想定はありましたが、同じ路地で固定していても、時間によっては変わってくるということは一番の気づきでした。天候が変わった場合はどうか、夜と昼大丈夫か、1年通して本当に大丈夫かを、どれだけ正確に情報提供するかが重要になると感じました。

九州通信ネットワーク・松崎:橋梁自体は今はセンサーを電源駆動して、電源工事をしていますが、かなりの工事が必要で金額も掛かります。山間の橋梁を含めてやる場合、ボタン電池駆動で1〜5年持つ形のセンシングをうまく活用すれば、精度としては高価なセンサーには劣りますが、それでも十分な所は結構あると思います。ですので電池で測るような仕組みは、これからも使っていければと思います。

玉川:LoRaWAN自体新しいテクノロジーですが、今回発見した課題や改善点をお聞かせください。

ウイングアーク1st・武市:まず今回プロジェクトを発足するにあたり、自社ビルではないので不動産会社との交渉が最初の関門でした。我々はスムーズに進みましたが今後ソリューションとして提供する場合、LoRaの認知が向上するといいと思いました。LoRaのメリットは、電池駆動で良かったため、共有部での設置に必要になりうる、外部から電源を取る際の工事が不要だったことです。

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フューチャー・池田:農業の関係のため田舎で実験していると、見晴らしはいいが実は高低差がある場所があります。実験をするときは怪しまれるため、地方の町役場の方と交渉しながら進めていきます。低コストで農業を活性化できる可能性を示すと、お話しを聞いてもらえるようになりました。そういう意味でLoRaWANは、交渉の壁を越えられる技術を持つと感じます。

九州通信ネットワーク・松崎:橋梁インフラモニタリングの課題はコストです。センサーのコスト低減と、配線不要で工事費が安くなる点が進まないといけないと感じます。

LoRaWANを利用した次のチャレンジ

玉川:トイレ監視、農業向け、橋梁監視をされていますが、今後LoRaを利用して試してみたいことがあれば教えてください。

ウイングアーク1st・武市:一つは機械学習を使った混雑予測をやってみたいです。またトイレの空き状況が分かるので、空き予約通知などをslackと組み合わせて空いた時に連絡が来ると面白いと思っています。

玉川:今トイレの空き状態はどうやって測っていますか?

ウイングアーク1st・武市:ドアにBluetoothで動くレンジャーシステムズのマグネットセンサーを付けています。これをMotionBoarad上で見える化しています。

フューチャー・池田:今回実験をした与謝野町の市役所から、老人の1人暮らしの方との通信や巡回バスを効率良く回せないかと要望が来ました。コストが安いと新しいアイデアがたくさん出てきます。先ほどのスマートヴィレッジの中の一つとして、都会より地方がより快適だと思える町づくりができれば、若い人も地方で様々な活性化ができると思います。LoRaを使った最先端地区のモデルを作っていきたいと考えています。

九州通信ネットワーク・松崎:上空でドローンを使った計測を深めていきたいです。今回LoRaの子機をドローンに積みましたが、今度はゲートウェイを積みたいです。今はゲートウェイにSIMが挿さっているため、ドローンに積むのは制度的なハードルもあります。またゲートウェイが大きく、汎用ドローンには載りません。さらに電池の重さがペイロードを決めているため、バッテリーの進歩が必要です。これらが実現すれば川の上をドローンの通り道にして、自動飛行で周囲のデータを全て収集することもできますので、町の見回りなどに活用してみたいと思っています。サービスレイヤーは皆さんが参加することで、更に利用の広がりができて、とても楽しいとそんな夢を見ています。

玉川:ドローンにLoRaのゲートウェイ、基地局を入れると、勝手にセンサーからデータを連れていくイメージですね。掃除機みたいな感じでデータを吸っていくと。

九州通信ネットワーク・松崎:ただ、パブリックモードだけですよね。

玉川:そうですね。ただ今のゲートウェイはSIMが入ってセルラー通信のため、基本的には地上局ではないため、飛ばしてはいけない。その辺はクリアしていく必要があります。

松崎:制度的にはもう既にあり、許可を受ければ飛ばすことはできます。

玉川:本日発表したゲートウェイを自社で所有する所有モデルと、共有サービスモデルの二つを出しましたが、このあたりどう見ていますか。ご意見があったら、教えてください。

ウイングアーク1st・武市:現在21階のビルのテナントに入っている他の会社にLoRaの子機をご購入いただき、ゲートウェイを共有するということをビル全体で実施してみると面白いと思います。

フューチャー・池田:地方では所有系を希望される方が多いですが、私自身の見方は所有と共有は両立すると考えます。所有は自分らが持ちトラフィックが混んでいるときは、共有を利用する等、サーバーのトラフィックの分散モデルです。そういう意味で所有と共有はうまく基地局を配置しながらトラフィックをさばくと、両方ともwin-winな関係になれると思います。冗長構成のようなものです。

九州通信ネットワーク・松崎:共有モデルはビジネスをスタートさせるときには、非常に有効ですが、その後自社で保有したいと考えるようになることもあると思います。移行できるということが、非常に良いと思います。

玉川:共有サービスモデルを始め、所有モデルに移行していくこともあり得ますね。

九州通信ネットワーク・松崎:今Wi-Fiのフォンを解放するサービスがありますが、爆発的に普及しているようではないため、何故普及しなかったのかをしっかり理解しLoRaは異なる点をきちんと打ち出すことができれば信用度も上がると思います。

玉川:フォンモデルの場合Wi-Fiをハードごと購入してWi-Fiで共有する形ですが、SORACOMの共有サービスモデルの場合は、SORACOMの持っているサービスモデルで提供しているので、若干違います。確かにゲートウェイが共有されている点では似ています。

九州通信ネットワーク・松崎:ソラコムさんが運営されていることと、アクセスポイントを設置している会社についても提示することができれば大丈夫だと考えています。

玉川:最後にSORACOMへの期待をお伺いします。

ウイングアーク1st・武市:我々は見える化のレイヤーを提供しているため、ぜひSORACOM FunnelをMotionBoard対応してほしいです。

玉川:分かりました、エンジニアのチームに伝えます。SORACOM Funnelは、Amazonのクラウド、MicrosoftのAzureに対応していますが、まだMotionBoardには対応していないので、検討します。

ウイングアーク1st・武市:逆にMotionBoardがSORACOM Harvestにつながる形でウイングアークで開発すれば、お互いのユーザーにメリットになればと考えています。

玉川:ぜひお願いします。

フューチャー・池田:今回ソラコムがLoRaWANに参入したことによって、設計時にレイヤー1等データ受信強度が必要になってくると思います。いわゆるインフラのエンジニアモードのパネルと、L2とかL3のユーザーのパネルは違ってくると思います。マニアックなエンジニアモードのパネルとユーザーのパネルが出てくると面白いと感じます。

玉川:ゲートウェイの管理や、管理する方のための機能と、上でアプリを使うための機能とか、両方進化していくということですね。

九州通信ネットワーク・松崎:LoRaWANのエリアを測定するときは、SIM経由でクラウドに上げて、クラウドでの受信状況を見て確認しますが、場合によっては携帯電話の電波が通じない所では、測定は難しいと思います。コンソールログインすれば分かる等の機能があれば、良いと思います。

玉川:セルラー通信側のヘルスチェック機能のような、つながっているかどうかが分かればいいわけですね。

九州通信ネットワーク・松崎:つながってないか、駄目なのかがLoRaWAN自身の機能として働いて、データ通信ができているのかどうかが、単体で分かるとすごく良いと思います。

玉川:実際にこのゲートウェイの裏側で使っているセルラー回線は、SORACOM Air for セルラーなので、そちらの接続情報は取れるようになっています。うまくゲートウェイに反映できるようにしていきたいです。

九州通信ネットワーク・松崎:LoRaWANが子機と親機だけで通信ができているか否かの状態を知りたいです。もう一つはデータ通信のホップです。SIMを挿すと試験局の許可も要るため、LoRaだけでホップ通信できるといいと思います。アライアンスの標準化の話もあると思いますが、期待としてはそういうことです。

玉川:最後にLoRaのアーリーアダプターの皆様から会場に来ている方に向け、一言ずつお願いします。

ウイングアーク1st・武市:私がこのLoRaを初めて触ったのは1カ月くらい前です。皆さんにお伝えしたいのは、まず触ってみてください。触ってみると、気付きがいろいろと出てきます。SORACOMのサービスによって、利用するハードルが低くなっているので、これからまたさらに活用方法が広がるサービスが生まれてくるのが本当に楽しみです。そしてそれを皆さんと一緒に作っていけたらと思います。

フューチャー・池田:今後苦労をすると想定されるポイントは、実際にゲートウェイを置いてデバイスと通信でき、サービスが始まるまでです。実際に始まるまでをどういうふうに立ち上げるか。その辺りのノウハウも1社だけでは難しい。興味のある方とパートナーを組みながら、データを取り、LoRaWANのネットワークをいかに効率的に広げていくかのコンソーシアムを作りながらやっていきたいと思っています。

九州通信ネットワーク・松崎:今回LoRaWANを対応したことで、ますます使いやすくなり、これから広がると期待しています。共有サービスモデルの地図が出ていましたが、九州には点がありません。九州で共有サービスモデルのアクセスポイントを置いてあったら、やってみたいのになっていう方がいらっしゃったら。 。。
九州も盛り上がっていけるようにやっていきたいと思います。九州から新しいサービスが生まれてくるといいと思いますので、皆様も一緒にご協力いただければと思います。