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SORACOM AirにKDDI 5G対応のplanX2が追加されました

はじめまして。ソラコムのソフトウェアエンジニアの小川です。コアネットワークの開発を担当しています。

本日紹介するのは、SORACOMの5G対応のサブスクリプション(プラン)であるplanX2です。今回は、5Gに対応したplanX2の狙いから、対応デバイスや料金などの基本情報、具体的なplanX2のはじめかたなどを書いていきたいと思います。

5G対応の狙い

2020年7月に開催したソラコムの年次イベントSORACOM Discovery 2020では、KDDI 代表取締役社長の髙橋誠氏をお招きした特別対談「New Normal 加速する DX」の中で、ソラコムは2020年度中に5Gに対応する計画を発表し、5Gの特徴である高速大容量/低遅延/多接続による「現場とクラウドの距離を密接にできるIoTシステムの実現」が狙いであると紹介いたしました。
本日からご利用いただける planX2 は、SORACOMにおいて5Gに対応した初めてのプランです。
5GとSORACOMプラットフォームのサービスや機能の組み合わせによって、新たなユースケースを皆さまと創り出していきたいと考えています。

基本スペック

利用ネットワーク

planX2ではKDDIネットワークの4Gと5Gが利用できます。5G提供エリアはまだ限定的で、auのサービスエリアマップで確認することができます。auの5Gエリアマップは、周波数(sub6/ミリ波/sub6・ミリ波以外の転用周波数)毎に色分けされ、提供予定時期まで確認することができます。

なお、現時点(2021年3月30日)ではLTE-Mには対応していません。LTE-Mの利用をご希望のお客様はplan-KM1(KDDIネットワーク)またはplan-D(NTTドコモネットワーク)の利用をご検討ください。

5Gの提供方式

5GにはNSA(Non Stand Alone)とSA(Stand Alone)の2つのデプロイメントオプションが存在します。KDDIは2020年3月からNSA方式でau 5Gの提供を開始しており、planX2はau 5GのMVNOのためNSA方式での5G提供になります。5G NSAとSAについては別のブログでじっくりと解説したいと思います。

デバイス

planX2が利用するサブスクリプションコンテナはOTA対応製品でご利用いただけます。動作確認済みOTA対応モジュールは以下のとおりです。

今後も5G対応モジュールなど動作確認を行っていく予定です。最新の動作確認結果はこちらからご確認ください。また、auのIOT認定デバイスはこちらから確認できます。

料金

  • 初期費用
    • SORACOM IoT SIM:カード型5USD、チップ型6USD
    • サブスクリプション追加費用:3 USD /1サブスクリプションあたり
  • 基本料金
    • 0.06USD/ 日
  • サブスクリプション利用料金
    • 1.8USD/月 (planX2)
  • データ通信料金
    • 0.01USD/1MBあたり
  • SMS利用料金
    • IoT デバイスへの SMS 送信: 0.005USD/通
    • IoT デバイスからの SMS 送信: 0.4USD/通

対応サービス

planX2ではSORACOM Air以降の全てのサービスとSMSに対応しています。なお、USSD(Unstructured Supplementary Service Data)は非対応です。

planX2のはじめかた

ここからは実際にplanX2をはじめるにはどうすればいいか解説していきます。

サブスクリプションコンテナにplanX2を追加する

SORACOM IoT SIM – plan01sはサブスクリプションコンテナに対応しています。1枚のplan01sのSIMに複数のサブスクリプションを格納することができます。これまで追加できるサブスクリプションはplanX1とplanP1でしたが、そこに今回のplanX2が加わりました。

サブスクリプションの追加は、ユーザコンソールから行います。ユーザコンソールにログインし、先ずカバレッジタイプを[グローバル]に切り替えます。

planX2は日本国内でのみ利用できますがグローバルカバレッジです

余談ですが、プラン名を見ることでカバレッジタイプを見分けることができます。plan-Dやplan-Kのようにplanの後にハイフン記号が入っているプランは日本カバレッジで、plan01sやplanX2のようにハイフン記号が入っていないプランはグローバルカバレッジになります。コンソール上でSIMが見つからないときはカバレッジを確認してみてください。

グローバルカバレッジのコンソールにはサブスクリプションコンテナに対応した新しいコンソールと従来のバージョンのコンソールがあります。従来のコンソールを使っている場合は下のように表示されるので、[切り替える]を押して新しいコンソールに切り替えます。

プライマリIMSIであるplan01sのSIMを選択し、[操作]から[サブスクリプション追加]を実行します。

追加するサブスクリプションを選択する画面から、planX2を選択し[追加する]ボタンを押します。サブスクリプションの追加はこれだけです!サブスクリプションの追加はOTA(Over The Air)により行われますのでデバイス側の操作は不要です。

SIM詳細で、planX2が追加されていることが確認できます。

planX2で5Gを使う利点

一般に5Gの特徴は、高速大容量・低遅延・多接続にあると言われていますが、planX2ではどうなのか、技術的な視点で見ていきたいと思います。

無線区間の低遅延化が期待できる

planX2ではこれまでの他のプランを比較して5Gを使うことにより無線区間の低遅延化が期待できます。ただし、5G NSA方式ではRAN(Radio Access Network – 無線アクセス網)以降のトランスポートネットワークやパケットコアネットワークの構成は4Gと5Gで大きく変わらないため、end-to-endで見たときの遅延は限定的になると予想されます。

さらに遅延を下げるには例えばAWS Wavelengthなどの利用を検討する必要があるでしょう。また、将来的には5G SA方式のMEC (Multi-access Edge Computing)により利用者に物理的に近い場所にあるサーバをより柔軟に選択させることが可能になり更に遅延を低下させることができる可能性があります。

通信速度の上限は従来と変わらず

一方で、高速大容量の観点では、従来のプランと変化はありません。ソラコムには速度クラスという仕組みがあり、スループットに制限を設けています。現時点(2021年3月30日)での最速の速度クラスであるs1.4xfastでもスループット(上り・下り)は8 Mbpsです。この速度はIoTの主要なユースケースにおける数十バイトのセンサーデータや、比較的広帯域を要するカメラ画像の送受信でも必要十分であり、数百Mbpsといった5Gの性能をあえて抑制しているのが現状です。しかしながら、5Gの高速大容量を用いたユースケースがあれば対応していくべきと考えておりますので、是非ともご相談ください!

データ通信料金はplanX1の半分

plan01sには基本料金が、planP1、planX1、planX2には利用料金が設定されています。SORACOM IoT SIM 1枚に対してそのSIMのすべてのサブスクリプションの基本料金および利用料金が毎月発生します。月にかかる費用はそれにデータ通信料金を加えた料金になります。

planX2と同じくKDDIネットワークを利用するplanX1と比較をすると、planX1のデータ通信料金は0.02USD/1MBに対し、planX2は0.01USD/1MBと半分で利用することができます。また、5G利用にあたり追加の費用や申請、設定等は不要です。これをグラフにしてみると以下のようになります。

サブスクリプションコンテナの制約に注意

現状、追加のサブスクリプションであるplanP1、planX1またはplanX2を追加したらそれを削除することができません。例えば、plan01sにplanX1を追加したIoT SIMがあるとして、そこにplanX2を追加した場合、planX1を削除できないため、planX1を利用しないにも関わらず毎月のサブスクリプション利用料金が余分にかかってしまいます。これを回避するには、一度そのSIMを解約していただき、plan01sのSIMを新たに入手してplanX2のみを追加する必要があります。planX1からplanX2に切り替えたいお客様はご注意ください。

あとがき

このplanX2は5G対応の第一歩です。モバイルの通信規格は10年毎に世代交代されると言われており、5Gもこれから10年かけて発展、普及していくと予想されます。3GPPでもIoT向けの5Gの拡張などわくわくするような標準化が進んでいます。今後は5G NSAのplanX2をさらに魅力的なプランにしつつ、中長期を見据えた5G SAの研究開発も進めていきますのでご期待下さい!

― ソラコム 小川