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「小さなIoT」を積み重ね、将来的に「大きなDX」を目指す

こんにちは、ソラコム松下(ニックネーム: Max)です。

私はIoTのエバンジェリスト(啓蒙活動)として、IoTを「遠くに離れた現場をデジタル化し、ネットワークを通じてクラウド等で情報共有する技術」として紹介しています。

実は、昨今話題となっているDX(デジタルトランスフォーメーション)も「現場と企業をデジタルでつなぐ」と、考え方やあるべき姿が似通っているのをご存じでしょうか。実際、ソラコムのお客様の多くが、IoTによる現場のデジタル化によってDXを実現しています。即ち、DXにはIoT活用が不可欠なのです。

ここでは、DXの定義や目指すところ、そしてIoTとの関連性や取り組み方について、IoTプラットフォーム「SORACOM」を活用いただいている20,000を超えるお客様の実例から抽出したエッセンスをご紹介します。

DXとは?

まず皆さんと共有したいのが、DXの定義です。定義は経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンスに書かれています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンス P1より

これを図解したものが、以下です。

DXの図解

DXの目的は「競争上の優位を確立すること」であり、デジタル化(デジタライゼーション)は、現場と企業をつなげる手段 であり、この手段そのものが「IoT」なのです。では、どのようにデジタル化/IoTに取り組み、DXを実現するのかをご紹介します。

以下、ITmediaに掲載された内容です。
提供:株式会社ソラコム / 記事出典:アイティメディア営業企画/制作:アイティメディア編集局

「小さなIoT」を積み重ね、将来的に「大きなDX」を目指す

離れたところの状況を把握するのに役立つIoTは、対面のサービスを避けたい企業だけでなくDXを推進したい企業にも注目されている。だが、「IoTで何をすればいいか分からない」という企業もある。どうすればいいのか、有識者に話を聞いた。

IoTを本番展開するためには“素振り”が必要

「IoTは2つの視点でPoCをする必要がある」と語るのは、IoT活用を進める企業を支援するソラコムの松下享平氏(テクノロジー・エバンジェリスト)だ。

 「PoCというと『その技術が使えるかどうか』を検証するイメージが強い。もちろん技術の検証は重要だが、現場で利用するためには『現場のモノときちんとつながるかどうか』『その技術で現場の課題を解決できるかどうか』という2つの視点が必要だ」

 松下氏はPoCを野球の素振り練習に例える。

 「『バットがあればボールを打てるらしい』と素振りもせずに試合に臨む人はいない。実際にバットを握り、重さや長さ、振ってみたときの力のかかり具合を知ることで試合でも成果が出せる。PoCもただ技術を試すのではなく、本当に現場で使えるのかどうかを確かめることが大切だ」

 だが、PoCに十分な時間をかけられない企業もある。「短い時間で十分な検証は難しいため、工夫が必要になる」と松下氏は言う。

 「技術選定については、全てを自前で用意する必要はない。既存のIoTソリューションやクラウドサービスを利用することで、短時間で検証環境を整えることができる。現場の課題を一番よく知っているのは顧客自身だ。技術選定には近道があるが、『現場の課題解決』に近道はない。まずは自らの手でIoT活用のための“素振り”をしてほしい」

ソラコムが推奨する「4つのステップ」と「4つのステージ」

ソラコムのコンセプトは「IoTの“つなぐ”を簡単に」だ。IoTに不可欠な“通信”を軸にIoTのデバイスやクラウドサービスを提供し、「現場のデジタル化」を支援する。2021年6月現在、2万を超える顧客に対して300万以上のIoT回線を提供している。ソラコムはそうした実績を基に、DXを成功に導く取り組み方を4つのステップで説明する。

ソラコムが推奨する「IoTを活用したDX推進の4つのステップ」

「『DXで実現したいゴール』は企業によって異なるが、『課題を明確にし、技術やサービスを使って解決する』という基本的な進め方は同じだ。だが、『IoTデバイスの開発が必要だが、自社には開発の経験がない』といったこともあるだろう。その場合はIoTの知見を持つパートナーに頼ることも有効な選択肢になる」

 松下氏は「DXを実現するためには4つの段階(ステージ)がある。ソラコムはそれぞれのステージに応じた支援メニューを提供している」と言う。

DX推進の「4つのステージ」とソラコムのDX支援メニュー

現場のデータをデジタル化する「ステージ1」、記録したデータをリアルタイムに共有する「ステージ2」についてはIoTプラットフォーム「SORACOM」が有効だ。

 SORACOMは日本をはじめとする140を超える国と地域で利用できるIoT用通信回線を提供している。通信回線以外にもIoTのシステム開発に役立つさまざまなサービスを提供しており、デバイス管理やクラウド連携機能、ダッシュボード機能、遠隔アクセスなどが可能だ。

 「顧客はIoTに関する調達や契約などの手間から解放され、セルフサービスでIoTを活用したDXを推進できる」と松下氏は語る。

 ステージ2で得た大量のデータを統合して洞察を得る「ステージ3」、新たな顧客価値を創造する「ステージ4」について松下氏は「機械学習による分析や自動制御システム、他の業務データとの連携など新たな専門技術が必要になってくる」と指摘する。

 ソラコムが提供する「DXプロジェクト立ち上げ支援サービス」は、ソラコムの「IoTプロフェッショナルコンサルタント」が顧客のIoTプロジェクトチームに伴走するサービスだ。技術要素や課題を整理し、具体的なアクション計画の立案を支援する。外部のパートナーが必要な場合は「SORACOMパートナースペース」でパートナーを探すことができる。「各専門技術、各業界に特化したIoTパートナー企業が参画しており、パートナー探しの手間を省ける」と松下氏は言う。

 「DXとは、テクノロジーを使ってビジネスを変革することだ。『ゴールをどう設定すればいいか』『ゴールは見えているが、その実現方法はどうしたらいいか』といった課題についてもソラコムが技術アドバイザーとして伴走し、技術に関する知見を共有する。自社のみで進めるよりも短い時間でチームの経験値を上げることができる」

まずは小さく始めてIoTの成功体験を得て、そこから横展開で大きく広げる

これからIoT活用を進める企業に対し、松下氏は「最初から大規模な課題解決に取り組むのではなく、小さく始めるのがいい」とアドバイスする。ソラコムは企業がIoT活用を進めるときに役立つ「IoT活用のレシピ」を無料で公開している。

 レシピにはIoTの活用方法だけでなく、そのレシピを再現するために必要な材料(ハードウェアなど)も記載されている。そのほとんどがECサイト「SORACOM IoT ストア」でデバイス1個から購入可能だ。

 すぐ手に入るIoTデバイスとレシピを使い、まずは小さい範囲でIoTの素振りをして徐々に利用範囲を拡大する。これがソラコムの考える「企業のIoT活用の最適解」だ。

 「現場のデータを記録していても、通信手段がなければ紙に手書きしたり表計算ソフトに入力したりする必要があるため“後日共有”となってしまう。SORACOM IoT ストアでセンサーと通信回線を組み込んだIoTデバイスを購入すれば、データをリアルタイムに共有する仕組みも簡単に構築できる」

 レシピを参考に、自分たちの手でIoTを導入した経験はさまざまな場面で役立つと松下氏は言う。

 「センサーの設置箇所を増やすことになったときでも、パートナーにどのような情報を渡せばいいのか、どれくらいの手間が掛かるのかが明確になっているはずだ。自らIoTを導入することでパートナーに依存せず、主導権を持ってDXを進めることができる」

なぜトーア紡コーポレーションはPoCから先に進めたのか

IoTの素振りを実践し、PoCの次のステップに取り組んだのがトーア紡コーポレーション(以下、トーア紡)だ。同社は羊毛紡績から始まった100年近い歴史がある素材メーカーで、国内外に工場を展開している。工場では電力使用量が契約した量を超えないように注意しなければならない。もし上限を超えてしまえば違約金を払う必要があるからだ。そこでトーア紡はIoTを使って「従業員がリアルタイムで電力使用量を確認できる仕組み」を構築することにした。

 トーア紡には工場の電力使用量を監視するための施設(監視センター)があり、以前からそこで電力使用量を確認できていた。ソラコムの「IoT活用によるDX推進の4つのステージ」に当てはめると「現場データのデジタル化が完了している状態(ステージ1)」に相当する。ここからステージ2、つまり電力利用量データを誰でも確認できる状態にすることがゴールとなる。

 だが、大きな敷地面積を持つ工場に新たな通信設備を施設すると大規模な工事が必要になる。既存の設備を流用する方法はあるが、設備の管理部門との調整に時間がかかってしまう。そこでトーア紡はモバイル通信を使う方法を採用した。工場の電力使用量のデータをモバイル通信で直接クラウドに保存し、スマートフォンを使ってデータを確認する。

 「トーア紡はソラコムのパートナーであるKYOSOの協力の下、プロジェクトを進めた。KYOSOは現場とクラウドをつなげるノウハウを持っており、2週間で『電力使用量の見える化』を実現。トーア紡は短期間でIoTが役立つことを社内に証明した」と松下氏は語る。

 このようなアプローチを取ることで、IoTに対する信頼感が社内に生まれ、データ監視の自動化などの次のステップに進めたり別の部署や工場に横展開したりするのがスムーズになるという。トーア紡はこの成功をきっかけとして、最終的には電力消費のデータとさまざまな機器を連携させ、電力量を自動制御することも視野に入れている。

 「最初から大規模な自動化を目指してしまうと、なかなか成果にたどり着けずPoCレベルで終わりかねない。小さく始めて素早く成果を出し、その後小さな成功を積み重ねることが『PoCの先』に進む鍵だ」


 松下氏は改めて「IoTを活用したDXの主役は顧客自身だ」と強調する。

 「まずは自分たちで“素振り”をしてほしい。そのための部品やレシピはソラコムにそろっている。素振りで小さな成功を体験し、それを横展開して『DXのステージ』を上げる。それを繰り返して大きな成功を目指してほしい。そのとき、もし足りないものがあればソラコムは全力で支援する。これを機に、自社におけるDX推進の現状とゴールを改めて整理し、IoTの活用でDXをさらに加速させてほしい」


まとめ ~ さらなる取り組みを後押しする資料のご紹介

DXに取り組むにはIoT活用が不可欠であること、そして取り組みに際して「今どの位置にいるのか、どこに向かえばいいのか」を確認できる『DX 4つのステージ』を紹介しました。

さらに一歩、IoTプロジェクトを進めるための資料もご用意しています。

活用いただき、IoTによるDX実現を願っております!

― ソラコム松下 (Max)