本記事は、ASCII.jp(株式会社角川アスキー総合研究所)に掲載された記事より転載/再編集したものです。
元記事:https://ascii.jp/elem/000/004/136/4136251/ 文:大谷イビサ 写真:曽根田元
関東北部でカーライフ全般をサポートするサービスステーションを提供する両毛丸善は、本社やサービスステーションにソラコムのクラウド型カメラサービスのソラカメを導入した。安価で、設置が楽なソラカメの導入により、今まで難しかったカメラの設置や現場での調整が可能になった。
部門単位でのコミュニケーション基盤を全社導入
栃木県足利市に本社を置く両毛丸善は、栃木県と群馬県にまたがる両毛地域や埼玉県の一部で、60ヶ所を超えるサービスステーションを展開している。給油や洗車にとどまらず、国家資格の整備士によるカーメンテナンスを提供できる「カーライフコンビニ(登録商標)」を謳う。
同社のビジネスはガソリンや軽油を提供するガソリンスタンド事業をメインに、LPガス販売も扱う。一方、人口減少や高齢化といったトレンドのほか、脱炭素化に向けた電気自動車の普及もあるため、ガソリンスタンド単体での成長は難しい。そのため、電力小売り進出などエネルギーの多角化を行なっているほか、介護事業やドローンなどの新規事業にも積極的にチャレンジしている。
今回お話を聞いた管理部 部長の田中敏弘氏はもともとガス事業部出身で、長らく通信やIT環境の整備を行なっていた。店(サービスステーション)を構えて、お客さんに来ていただく形のガソリン事業と異なり、ガス事業は車に乗って営業マンが外で販売する形態だ。「そもそも運転中は電話もできないですし、音声だけだと伝わらないことも多い。なによりスケジュールの管理が大変で、問い合わせを受けても本人の居場所や出社の有無もわかりませんでした」と振り返る。
そのためガス事業部では2000年代の初頭にはすでにサイボウズ Officeを導入し、スケジュールを共同利用していた。2016年にLINE WORKSを導入し、営業マンとのコミュニケーション環境を拡充。その後、現社長の河内覚氏による事業変革や業務改善は急速にスピードアップし、ガス事業部と同じインフラをサービスステーション事業部に導入し、全社内にも展開してきた。そして昨年は、ITを専門とする人員を強化し、グループ全体のシステムの内製化を加速させている。
安価で、設置も簡単 本社の監視カメラとしてまずはスタート
今回導入したソラカメは、安価なATOM Cam2(以下、ATOMカメラ)を用いたカメラサービスで、正式名称は「Soracom Cloud Camera Service」となる。初期費用3480円、月額990円~でクラウドへの常時録画が可能で、設置が容易なのも大きなメリット。店舗状態の把握や倉庫やバックヤードの監視、機器メーターの遠隔目視、無人受付などを安価に、迅速に実現する。
両毛丸善での導入経緯は、本社で用いていた防犯カメラのリプレースに不満があったからだという。「そもそも死角ができてしまっていた上、高価であったため導入をあきらめた」と田中氏は語る。防犯用の監視カメラは以前からあるソリューションだが、カメラや録画データを保存するハードディスク、そしてシステム自体が高価という課題があった。
社長からのリクエストを受けた管理部では、受付業務の改善のために、まず別の会社のAIカメラを導入し、人の出入りの多い受付に設置。導入したAIカメラがいったん人の顔を覚えてくれるので、次回の来訪時には受付に着く前に誰が来たかがすぐわかる、というメリットを得られた。ただ、便利ではあったが、こちらも残念ながら高価で台数を展開するのは難しかった。こうしたことからソラカメの導入に至ったという。
ソラカメの選定については、「うちの社長がすでに知っていた(笑)」というなかなか珍しいパターンだった。安価で、設置も簡単ということで、発売開始とほぼ同時に購入。本社にソラカメを7台設置したという。カメラ自体が高解像度で、広角なこともあり、死角はほぼカバーできた。「朝、駐車場に新聞が散乱していたという事案があったので、調べてみたら、新聞屋さんが落としていたのがわかった」とさっそく効果もあった。
管理部 情報システム課 課長の浅井康晴氏は、「前職でも監視カメラを扱っていましたが、やはり高価でしたし、設置やメンテナンスも大変でした。その点、ソラカメは安価で、設置も簡単。こんな製品があるんだと感激しました」と語る。個人的にも購入し、自宅の玄関に設置しているとのこと。「アカウントがあれば、サイトからポチポチ簡単に買えてしまうので、勢い余って買ってしまうこともありました(笑)」。
ピット室ではメンテナンス作業の様子を確認
ソラカメはサービスステーションのピット室にも設置されている。ピット室は車のメンテナンス業務を行なうスペースで、サービスステーションに設置されている。年始からのほぼ2週間くらいで、60ヶ所以上のサービスステーションへの設置が完了したという。
現状は7日間の契約で録画データを保存しており、スマホから確認できる。「たとえばタイヤのホイールナット締め付け作業や洗車の様子を、お客さまと映像で確認することもできます」と田中氏は語る。各サービスステーションの所長やエリアマネージャーにはビデオを確認できる権限が付与されており、全部を見られるのは本社の一部のみとなっている。
ソラカメは本社やサービスステーションのみならず、LPガスステーション、営業所などにも設置されており、3月末時点での台数は91台に上る。「コンビニエンスストアの店舗を併設しているサービスステーションもあるので、そこではバックヤードの陳列や作業状態をチェックしています」(田中氏)と活用の幅も拡がっている。
現在は、防犯、監視、作業記録などで活用し、必要なデータはほかのメディアに保存。当初は録画が止まってしまうカメラも何台かあったのだが、今は録画をチェックするプログラムが用意されているので、リモートからも監視再開できるという。「これだけの台数をさまざまな場所で利用していますが、メンテナンスを現場任せにせず本社の管理部門に集約できるのも非常に魅力です。保守運用業務の負荷を高めることなく、現場での使い勝手の良さを享受できるので、組織としても導入を促進しやすい体制が組めます」と田中氏は語る。
導入メリットに関して聞くと、「やはりコスト的なデメリットはすべて解消しました。とにかく設置が簡単なのがいいですね」と田中氏は語る。設置場所をあとから変えられるというのもソラカメの大きなメリットだった。既存の防犯カメラの場合は、いったん固定したらなかなか動かせないが、ソラカメの場合は容易に動かせる。「ピット室でも車が2台入ったら、対象の車にソラカメの角度を直せばいいんです」と田中氏は語る。
従来高価だったカメラのソリューションが、クラウドや通信のコモディティ化により、一気に敷居が下がってきたのが感じられる。今後はAI活用やコンピュータービジョンといった技術も使いやすくなり、多くの企業にとって身近なITソリューションになっていくだろう。ソラカメはまさにその代表格となっていきそうだ。
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(提供:ソラコム)