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IoT プロジェクトの課題を解決する、SORACOM サービスの活用事例

この記事では、様々な IoT プロジェクトの場面で役に立つ SORACOM サービスを紹介します。5 つの具体的なシナリオで、どのように SORACOM サービスがその強みを発揮するかを見てみましょう。

SORACOM サービスの特徴

IoT プロジェクトの仮説検証を素早く行う – SORACOM Lagoon

IoTに限らず、新しい事を始める際には最近ではPoC(概念検証)を行うことが増えてきました。これで事業の実現性を検証します。PoC では検証項目を明確に定義しそれらを集中的に確認することが求められるため、不要な作り込みを避けることで、PoC を素早く効果的に実施できます。

例えば三菱電機様の IoT 緑化シェード事業の PoC です。この新事業は「都市のヒートアイランド化の緩和」という課題に対し「都市に集まる人々に涼しくて快適な空間の提供」という成果を期待しています。当事業の実現性を検証する PoC で、同社は IoT 緑化シェードの撮影画像を AI で解析したり、土壌や天気のセンシングを行いました

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AIの解析結果や各種センサーの値を可視化する目的で、SORACOM Lagoon (以下 Lagoon) を採用いただきました。Lagoon はダッシュボードサービスで、データ表示や通知を行えるアプリケーションを作ることができます。可視化ツールをお客様自身で準備・構築する手間を削減してスリムな PoC を実現しました。

Lagoon を使って、作り込みの不要な部分の開発を効率化し、PoC で検証したい項目に集中できます。こうした用途で SORACOM サービスを活用していただくケースがあります。

IoTデバイスの消費電力を抑える – SORACOM Beam

設置場所や携帯性の制約から、データを収集する IoT デバイスが電源を取れない場合があります。内蔵バッテリーで駆動する IoT デバイスをなるべく長期間動作させるには、稼働にかかる消費電力の節約が欠かせません。ハードウェアの作り込みに加えて、SORACOM のサービスを活用することで、消費電力の節約を実現できます。

ここで役に立つのが SORACOM Beam (以下 Beam) です。Beam はデバイスとクラウドの通信を仲介し、プロトコルを変換するサービスです。デバイスは軽量な UDP でデータを送信し、Beam がこれを HTTPS に変換してクラウドに転送します。デバイス自身が直接クラウドと HTTPS 通信するのと比べ、通信量を 94% も削減できます (詳しくはこのブログ)。

通信量の削減は、同時に通信モジュールの動作時間の削減、すなわち省電力化につながります。さらに通信料金を安価に抑える効果も期待できます。お子様の通学などの様子を見守る MIXI の「みてねみまもりGPS」 は Beam を活用し、手のひらサイズの小型端末で最長 2 ヶ月のバッテリー持ちを実現しています

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IoT デバイスの初期設定の手間を減らすなら – SORACOM Funk

IoT の課題の1つにセキュリティ実装があります。例えば IoT 機器のなりすましを防止するために、IoT デバイスに証明書をインストールしてクライアント認証を行う方法があります。しかし生産プロセスにキッティング工程を追加して、量産するデバイスのひとつひとつに異なる証明書を書き込むには膨大な工数が予想されます。もっと簡単で効率的な方法は無いでしょうか?

四国電気保安協会は、この課題に巧みに対処しました。同社は、電気事業法に基づき国家資格 電気主任技術者の保有者を派遣し、電気設備の点検と保守を行います。人手不足や感電等の労災リスクを背景に、より高頻度なデータ取得も射程に入れた DX プロジェクトで、新サービス RemoSOL を開発しました。設備に設置した IoT マルチデータ収集装置で、電流や電圧を安全かつ高頻度に取得できます。

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同社はキッティング工程を SORACOM Funk (以下 Funk) で効率化しました。Funk は AWS Lambda に代表される FaaS (Function as a Service) をデバイスから簡単に呼び出すサービスです。現場に設置されたゲートウェイから Funk を使って FaaS を安全に呼び出し、デバイスのプロビジョニングを実行しています。これにより、デバイス初期設定の効率化に成功しました。

同社のデバイスのプロビジョニング戦略は次のようなものです。初回起動時に SORACOM Funk から AWS Lambda を呼び出します。Lambda は、Funk が Lambda に渡すデバイス情報を使い、AWS IoT Core にモノを登録します。また、そのモノを認証するデバイス証明書と秘密鍵を発行し、デバイスに渡します。これにより、デバイスに個別の認証情報を書き込むキッティング工程を自動化し、デバイス認証を使用した安全な通信を効率的に実現します。

IoT プロジェクトの規模に応じた適正な費用に抑えたい

IoT プロジェクトで期待する ROI (投資対効果) を実現するには、そのコストをしっかり管理することが重要です。初期費用を最低限に抑えながら、IoT の規模の拡大に応じた適正なコストで運用するのが理想的です。仮に IoT システムの規模を拡大する計画があったとしても、プロジェクトの初期段階で大きな投資を判断するのは難しいものです。

協同ファーム様のコスト面の制約にとって、初期費用を抑えられる SORACOM の料金体系は最適でした。年間 5,000 頭を出荷する養豚場を営む同社は、養豚場の様々な設備や機械に IoT センサーを取り付けました。同社はわずか 2 週間でシステムを構築し、設備のメンテナンス効率化やトラブルの遠隔把握を実現しました。この成果を受け、今後の新豚舎の建設に向け IoT 活用の範囲の拡大も計画しました。

[画像] SORACOM Discovery 2021 ONLINE – Day2 データを駆使した次世代畜産業〜協同ファームの進み続けるIoTへの取り組み〜 – YouTube

センサーデータをクラウドに安全に送る際には、TLS といった暗号化が不可欠です。しかし、これによってデータサイズが大きくなり、通信量/料金に影響が出ます。

同社がデータをクラウドと連携するのに利用した SORACOM Funnel (以下、Funnel) は、クラウドサービスに特化した中継(クラウドアダプタ)サービスです。デバイスと Funnel 間は LTE の通信で、Funnel とクラウド間は Funnel が暗号化をそれぞれ担当することで、全体のセキュリティ確保をしつつ LTE 通信区間の費用削減を実現しました。

Funnel は従量課金方式で、日本カバレッジの場合 1 リクエストあたりの料金は ¥ 0.00198 です。データ送信を行わない時には費用が掛からない事も、費用の低減に役立っています。

自社の要件にぴったりな IoT システムを「作らずに創る」

IoT を導入する方法は大きく分けて、既存の SaaS を利用する方法と、要件に合わせて内製する方法があります。既存の SaaS を利用するメリットは導入までのスピードです。システム構築にかかる工数はほぼゼロで、購入すればごく短いリードタイムで IoT の導入を始められるでしょう。他方、内製の利点は何でしょうか?

内製する利点の一つは、システムの柔軟性と拡張性です。 例えば様々なメーカーのセンサーの取り扱いにおけるデータフォーマットの調整や、運用開始後の新たな要件に対するシステム更新 (成長) の速度が挙げられます。

[画像] IoTの最新事例20選 ― 現場とビジネスを変えるヒント【SORACOM Discovery 2024】

JR 東日本情報システムの IoT システムでは、内製のメリットが活かされています。巡回を廃止して人的資源の有効活用を目指す同社は、マシン室の空調・電源異常を遠隔監視する IoT システムを SORACOM で構築しました。システムを内製することで、温湿度の管理と UPS (無停電電源装置) の監視を同システムで一括で行うという同社固有の要件の実現に SORACOM を活用いただいています。

まず、デバイスごとのデータフォーマットの差異を埋めるために SORACOM Orbit を用いています。これでデバイスとクラウドの依存度を低くし、あらゆるデバイスからのデータを一括で集めること、そしてデバイスの追加や別機種への交換時も、クラウド側の修正を最小限にすることが見込めます。

また、データ収集・蓄積に SORACOM Harvest Data を、可視化と通知のシステムに SORACOM Lagoon を利用し、内製にかかるコストを小さく抑えています。

ここでは、複数の SORACOM サービスを組み合わせた IoT システムをご紹介しました。何もかも自前で作るのではなく、すでにあるサービスを利用して素早く価値を創造することを重視する考え方が、内製には不可欠であることが学べる事例としてご紹介しました。

IoT プロジェクトを始めるなら、SORACOM まで!

今回は、IoT プロジェクトの中でもよく聞かれる「PoC の短期化、消費電力の削減、キッティングの効率化、投資対効果の最大化、柔軟な拡張性」といった課題について、それぞれの事例を通じて解決策を SORACOM サービスと共に紹介しました。

IoT の通信だけでなく、IoT の課題全般を解決できるのが SORACOM のサービスです。

IoT プロジェクトをご検討の方は、どうぞお気軽に SORACOM までお問い合わせください。お客様の IoT プロジェクトに固有な要件に合わせて、最適な SORACOM サービスをレゴブロックのように組み合わせてご提案いたします。

当日の展示ブースの様子

ちなみにこの記事は、2024 年 7 月 17 日に開催した SORACOM Discovery 2024 で実際に使用した展示資料のトークスクリプトの例です。当日は「SORACOM って通信だけじゃないの?データ活用で何かしてくれるの?」と疑問をお持ちの多くの来場者に、こうした事例を解説いたしました。

― ソラコム 小林 (tau)