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「PLCの遠隔監視がしたい」はこの3通り!構成ガイドのご紹介

ソラコムでソリューションアーキテクト(お客様への技術支援担当、SAと呼びます)を担当している服部です。ソラコムでは、製造現場や自社製品の制御にPLCをご利用されているお客様から「PLCの遠隔監視がしたいのですが…」とご相談を頂くことがよくあります。今回、SORACOM を利用した PLC の 遠隔監視 システムの代表的な構成パターンについて解説したガイドを公開しました!!

このブログでは簡単にその概要とガイドには記載しきれなかった筆者のおすすめの SPS (Soracom Partner Space) パートナーのソリューションや IoT DIY レシピをまとめてお伝えします!

お客様からよくご相談頂く「PLCの遠隔保守がしたい」とは?

さて、ソラコムにお寄せ頂く「PLCの遠隔監視がしたい」というご相談ですが、その多くは以下のような背景と目的があるようです。

  • 保守担当者が、全国各地に納品している自社製品や、複数拠点に点在する自社工場などの設備保守を担当しており、各拠点の製品 (PLC) のメンテナンスの都度、状況を確認するためだけに現地を訪問する人手や費用、時間や工数に悩んでいる。
  • トラブル発生時のリードタイムを削減したり、トラブルを未然に防止するために、できる限りタイムリーに対応したい。
  • 顧客に自社製品に対するリモートメンテナンス (遠隔保守) サービスを提供して、新たな付加価値を提供したい。
  • 生産ラインをデジタル化して可視化し、監視することで無駄を把握して生産性を向上したい。
  • 顧客に納品している自社製品の稼働データを分析し、新たな価値提供につなげたい。

このようなご相談でスタートするお打ち合わせでは、ソラコムの営業や SA がお客様のご相談の背景やお持ちの課題についてさらに掘り下げてヒアリングしていきます。

そこでは、お客様で共通する課題として、

  • 製品の設備点検や制御が現場でなければ実施できない。遠隔から素早く安全に (セキュアに) 設備点検や制御が実施できない。
  • 社内のポリシーで、簡単には社外 (インターネット) に接続できない。
  • 現在実施している製品 (PLC) の運用保守の仕組みに問題がある。
  • データ活用のための費用や人員を捻出するのが難しい。

というものがあります。さらに、お客様ごとに異なる課題として、

コストや人手に関しては:

  • 自社の持ち出しなので費用は抑えたい ←→ 収益化を狙ってコスト設計したい
  • 人手不足なので新たな仕組みを自社で構築するのではなく他社サービスを利用したい ←→ これを DX人材を育成する機会にしたい

既存の保守運用の仕組みに関しては:

  • 既存の運用は変えられない ←→ 新たな運用 (運用保守、遠隔からの PLC の制御や常時監視など) を導入したい
  • 素早く手軽にパッケージを導入したい ←→ 自社の分析基盤を構築しさまざまなデータを統合したい

このような共通点と個別に異なる課題があるようです。

「既存の保守運用をどう変えたい?(または変えられない?)」の観点で実装パターンを 3つに分類

お客様の課題やねらいにおいては、経営環境や事業戦略で変動しやすい「コストや人手をどのように捻出するか?」の観点と比べると、「既存の保守運用をどう変えられるのか?」の観点は、動かしにくい条件となる傾向があります。たとえば、既存の組織体制、これまでの設備投資、あるいは顧客との関係性などで、短期的には変更が難しい場合が考えられます。

そこでこの、案件ごとに動かしにくい前提条件になりがちな「既存の保守運用をどう変える?(または変えない?)」という観点をもとに、当てはまる構成パターンを探索しましょう。以下のフローチャートでは、PLCの遠隔監視の代表的な 3 つの構成パターンについて、2つの質問に答えれば、適した構成パターンが明確になります。

以下、各パターンの基本的なシステム構成イメージをご紹介します。なおユーザーガイド本文では、より詳しくシステム構成の内容や応用例についても解説しています。

① そのままリモート接続パターン
現場の LAN を事業所まで延伸し、現在実施しているラダーモニタなどの運用保守をそのまま遠隔で実現する方式です。

このパターンについては、基本的な構成例を以下の SORACOM IoT DIY レシピとして準備物や手順を紹介しており「このレシピのようなことに取り組みたい」というご相談に日々対応しております!

② パッケージサービス利用パターン
デバイスからクラウドまでオールインワンなパッケージサービスを利用し、遠隔から PLC の常時監視や可視化、あるいは遠隔制御を実現する方式です。

このパターンでは、SPS 認定済ソリューションパートナー 株式会社 GUGEN の Pushlog や Falconnect といったオールインワンのパッケージサービスをよくご提案しています。他のパターンのようにネットワーク機器の設定やクラウド側の設計・構築に人手や工数を割くこと無くスピーディーにPLCの遠隔監視が実現できるのでおすすめです!特に、Falconnect については ①そのままリモート接続パターン にも対応できる機能があるので、可視化もラダーモニタも両方実現されたいお客様におすすめです!

③ 特化型 IoT ゲートウェイ – 自社システムパターン
「PLC や産業機器のデータを収集し任意のサーバーに転送できる特化型の IoT ゲートウェイデバイス」を利用し、自社クラウドなどで構築した分析基盤に接続する方式です。PoCの時点では、素早く可視化するために SORACOM Harvest Dataや SORACOM Lagoon 、あるいは可視化のための SaaS サービスを組み合わせることもできます。

このパターンでは、SPS 認定済デバイスパートナー 株式会社たけびしの デバイスゲートウェイや、SPS 認定済 ソリューションパートナー 株式会社金沢エンジニアリングシステムズの KES IoT Logic といったPLC からのデータ収集に特化した IoT ゲートウェイデバイスをよくご案内しています。
たけびしさんのデバイスゲートウェイは PLC だけでなく様々な計測機器やセンサーなど豊富な接続性で多様なお客様のご要望にも安心してご紹介できますし、金沢エンジニアリングシステムズさんの KES IoT Logic はクラウドとの接続だけでなくラダーモニタが可能な機能をもち、端末の海外対応でも頼れます。また、どちらもプログラミング不要でPLCの読み取りやクラウドへの転送設定ができる設定画面があるので、どなたにもお勧めしやすいと思っております!

もちろん、ここで紹介したフローチャートのように、2 つのシンプルな問いだけですべての検討課題を上手く分類できるわけではありません。しかし多くのケースでは「既存の運用を変えずに維持するか?変える場合は、どのような仕組みで変えるか?」についてお客様とディスカッションを重ねることで、進むべき遠隔監視 (遠隔保守・可視化・制御) の方向性を形にしやすくなります。

自社とベンダー、運用の責任範囲でみる各パターン

さて次に、パターンごとに IoT システム自体の運用保守に自社がどれだけ関わるか、つまり自社でどこまで運用保守の稼働を割いていく必要があるかも見てみましょう。

IoT システムは、現場側の「デバイス」と、クラウドやデータセンターにある「サーバー」、そしてその間をつなぐ「ネットワーク」が主な要素です。ここでは、それらの要素の初期設定や構築を誰が行い、初期設定後の運用や保守を誰が担うか、という点で整理します。

[1]そのままリモート接続パターン

  • デバイス (4G LTE ルーターなどの通信機器) の設置と運用保守は自社で実施します。
  • ネットワークは自社で契約し、必要な設定は SORACOM で行います。
  • SORACOM でよく相談を受けるケースに限定すると、デバイス (IoT SIM) 間通信の要件はありますが、クラウドやデータセンターは使用しません。(使用する構成とすることもできます)

[2]パッケージサービス利用パターン

  • デバイス、ネットワーク、クラウドのすべての要素が、ベンダー側でパッケージされています。そのため、デバイスの設置以外の工数は発生しません。3つのパターンの中では運用保守が少なく、素早い IoT システムの立ち上げが期待されるパターンです。

[3]特化型IoTゲートウェイ-自社システムパターン

  • パターン 2 とは逆に、デバイスからクラウドまで自社で管理するパターンです。つまり、デバイスの運用保守はもちろん、デバイスとクラウドの接続設定や、クラウドで必要なサーバー設計と構築・運用なども自社で実施します。
  • このパターンの派生パターンとして、クラウドの部分で、データ保存と可視化のための SaaS サービスを利用することもあります。自社システムのみの場合と比べるとシステム構成の自由度は下がりますが、より工数をかけずに IoT システムを完成させる 1 つの選択肢となるでしょう。

このように、それぞれのパターンで初期設定・設置からその後の運用保守を担うのがベンダーなのか、自社なのかを事前に把握しておくことは、導入初期や運用後の人手やサポート体制の検討のために重要な要素であることがわかります。

ネットワークやクラウドの運用保守を、ソラコムを含むベンダーが実施するケースであっても、それらを利用するための設定や運用については自社となることがあります。その場合は、サービスを利用するためのコスト (学習時間、人員の配置) も事前に検討できると良いでしょう。

なお SORACOM では、お客様ができる限りセルフサービスで通信やネットワークなどのサービスを利用できるよう、サービスの改善やユーザードキュメントの整備に継続的に取り組んでいます。たとえば、すべてのお客様が利用できる SORACOM ユーザーコンソール (管理画面) では、生成 AI が素早く回答する SORACOM Support Bot の機能が提供されています。詳しくは、SORACOM Support Bot に問い合わせる (Public beta) を参照してください。

悩まれたらぜひご相談を!

いかがでしたでしょうか?本編のユーザーガイド (本ブログ記事冒頭にリンクがございます) には、より詳しいパターンや応用例のパターンなども解説しております。既存の PLC の運用保守にお悩みの際はぜひご相談頂けますと幸いです。

– ソラコム服部 (masa)