こんにちは。ソリューションアーキテクトの渡邊です。
スペイン・バルセロナで開催された MWC Barcelona 2026 に参加してきました。MWC はモバイル業界のイベントとして知られていますが、近年は AI、ロボティクス、モビリティなど、さまざまな産業の技術が交差する場へと変化しています。
本記事では、ソラコムが参加した GSMA Fusion / AECC の展示内容と、会場を見て回って感じたトレンドについてレポートします。
MWC Barcelona 2026 概要
MWC(Mobile World Congress)は、スペイン・バルセロナの Fira Gran Via で開催される、世界最大規模のモバイル・通信関連イベントです。世界中の通信キャリア、ネットワークベンダー、クラウド企業、スタートアップなどが集まり、最新の通信技術や IoT ソリューションが展示されます。
なお、ソラコムは前年のMWC2025でもAECCの展示に参加しており、その際の展示内容については以下の記事でも紹介しています。
ここ数年でMWCの展示内容は大きく変化しており、かつてはスマートフォンの新機種発表が中心でしたが、現在は
- AI
- IoT
- 自動車
- ロボティクス
- Edge Computing
など、より広い産業領域へと広がっています。
今回のMWCでもその傾向はさらに強まり、特に AI と Physical AI(AIとロボティクスを組み合わせた実世界システム) の展示が多かったことが印象的でした。
GSMA Fusion / AECC 展示
今回ソラコムは AECC (Automotive Edge Computing Consortium) の一員として、GSMA Fusion のデモエリアで展示を行いました。
展示されたのは、AECC のご紹介と QoD (Quality on Demand) をテーマとする 3つの PoC です。
- AECC Automotive Edge Computing (AECC のご紹介)
- Adaptive Communication (SGP.32を使った通信プロファイルの切り替え)
- Remote Driving Using Multiple Connectivity (本展示)
- Premium Communication (ユースケース / 状況に合わせた QoS の適用)
デモに関する資料は、こちらからご覧いただけます。
このうちソラコムは 3. Remote Driving Using Multiple Connectivity のデモに参加しました。

Remote Driving Using Multiple Connectivity
今回のデモでは、コネクテッドカーにおける複数通信回線を活用した Remote Driving(遠隔運転)の通信基盤を紹介しました。遠隔運転を支える通信基盤では、特に次の3つの要素が重要になります。
- 低遅延
- 安定した帯域
- 高い信頼性
しかし、モバイル通信は場所や電波状況によって品質が変動するため、単一回線では安定した通信品質を維持することが難しいケースがあります。そこで今回のデモでは、車両側に IRIGATE Device を配置し、
- Wi-Fi (運転者のスマートフォンによるテザリングを想定)
- Ethernet (メーカーやディーラーの通信機器を想定)
- USB 接続 (メーカーやディーラーの通信機器を想定)
など複数の通信経路を同時に利用しながら、最適な通信経路を選択する仕組みを紹介しました。

IRIGATE アーキテクチャ
IRIGATE は、車両とクラウドを接続するための通信基盤です。以下のコンポーネントによって構成されています。
- 車両側 IRIGATE Device
- クラウド側 IRIGATE Core
SORACOM の提供する IRIGATE Core では、IRIGATE Device 上の Link Selector と連携しながら、
- 認証
- ルーティング
- 通信制御
などを実行します。
これにより、通信状況に応じて
- 複数キャリアの回線を切り替える
- 複数回線を束ねて帯域を確保する
といった柔軟な通信制御が可能になります。
展示の様子
今回の展示はスペースの関係もあり、実車ではなく動画デモ形式で紹介しました。展示には、自動車メーカー、通信事業者、車載ソフトウェア企業など、コネクテッドカーに関わるさまざまな分野の来場者が立ち寄りました。技術的な観点からディープな議論ができたことが印象的でした。
今回のデモで来場者の関心を集めたポイントの一つが、
「同じデモ環境を別の国・都市でもそのまま再現できる」
という点でした。例えば、東京で遠隔運転の通信構成を検証して成功した場合、その構成をそのまま別の都市でも再現できる、という点です。
IRIGATE のアーキテクチャでは、車両側に IRIGATE Device を搭載し、現地のネットワークに接続するだけで、クラウド側の IRIGATE Core と連携した通信制御を利用できます。そのため、東京で成功した通信構成を、デバイスを持ってくるだけでバルセロナでもその他の都市であっても同じ形で再現することができます。
この点をご説明すると、「なるほど、現地の通信キャリアにも依存しないのか」という反応を示す来場者が多く、通信環境の違いを吸収しながら同じシステムを展開できるアーキテクチャのメリットを、直感的に理解していただけたように感じました。
また特に多かったのが、
「この仕組みはすでに商用で使えるものですか?」
という質問です。今回のデモは遠隔運転をテーマにしていたこともあり、実際のサービスとしていつ頃利用できるのかという点に関心を持つ来場者が多かったように感じました。
遠隔運転そのものは、安全性や法整備などの観点から、すぐに広く商用サービスとして展開されるものではありません。一方で、IRIGATEのように複数の通信回線を柔軟に活用する仕組み自体は、コネクテッドカーにおけるさまざまなユースケースで活用できる可能性があります。そのため、展示では遠隔運転のデモをきっかけに、車両通信のアーキテクチャや通信の信頼性をどのように確保するかといったテーマについて議論が広がる場面が多くありました。
展示を通じて、コネクテッドカー分野において「通信の信頼性」をどのように確保するかが、実装レベルで求められているテーマであることを強く感じました。
会場で感じたトレンド
MWC会場を見て回って感じたトレンドとして、特に印象的だったのは次の2つです。
1. Physical AI / ロボティクス
今年のMWCでは、人型ロボットや四足歩行ロボットの展示が会場の複数ホールで多く見られました。会場のあちこちでロボットが実際に歩いたり作業を行ったりするデモが行われており、AIとロボティクスを組み合わせた「Physical AI」というテーマが強く打ち出されている印象を受けました。
多くの展示では
- AI
- センサー
- 通信
- Edge Computing
といった技術を組み合わせ、工場、物流、スマートシティなど実世界での活用を意識したアプリケーションが紹介されていました。
通信イベントというよりも、ロボティクスやAIの展示会のように感じる瞬間もあり、MWCのテーマがここ数年で大きく広がっていることを実感しました。



2. Automotive / Mobility
コネクテッドカー、V2X (Vehicle-to-Everything:車両と周囲の車両・インフラ・ネットワークなどが通信する仕組み)、Edge Computing など、通信技術と自動車産業を組み合わせた展示が多く見られました。自動車メーカーだけでなく、通信事業者やクラウド企業もこの分野のソリューションを積極的に紹介しており、モビリティ分野がMWCにおける重要なテーマの一つになっていることを感じました。
MWCはもともとモバイル業界のイベントですが、現在では自動車産業やロボティクスなど、さまざまな産業との接点が広がっていることを実感しました。


まとめ
今回のMWCでは、AI、ロボティクス、モビリティといった分野が急速に融合していることが明確に示されていました。その中で、通信は単なるネットワークではなく、これらのシステムを支える「産業インフラ」として重要な役割を担っています。
AECC や GSMA Fusion の取り組みは、こうした産業横断のエコシステムを実現するための一つの方向性を示していると言えるでしょう。MWCは毎年さまざまな発見があるイベントですが、今回も通信技術が多くの産業と結びつきながら進化していることを実感する機会となりました。
– ソラコム渡邊 (dai)


