週末は省電力な生活を送っているソラコム 松下(max)です。
今年 7/4 に開催された SORACOM Conference “Discovery” 2018で発表させていただいた「LTE-M」が、ついに本日よりご利用いただけるようになりました!
発表のサマリー
今回は多くの事を発表したので、まずサマリーをご案内します。
- SORACOM Air に省電力LPWA通信 “LTE-M” が追加。サブスクリプション名 (プラン名) は “plan-KM1”
- plan-KM1 で利用可能なデバイス2種の販売開始
- plan-KM1 を含めた「すべての SORACOM Air for セルラー」でバイナリパーサー機能が利用可能に!
SORACOM Air に省電力LPWA通信 “LTE-M” が追加!
サブスクリプション名 (プラン名) は “plan-KM1”
LTE-M とは携帯キャリアの運営するセルラーネットワークを用いた LPWA 規格の1つで、既存の LTE 基地局をベースに全国エリアをカバーしているため、広域で省電力なセルラー通信を実現可能な通信です。
ソラコムでは、この LTE-M を plan-KM1 というサブスクリプション名(プラン名)で SORACOM Air のラインナップに加えることで、省電力・小容量通信である LPWA の拡充を行いました。
料金体系は下記の通りです。
- 初期費用: 1,500 円/回線
- 基本料金: 月額 100 円/回線(101 回線から月額 90 円)
- データ通信料: 0.5円/KiB
- SIM サイズ: nano SIM
特徴は以下の2点になります。
- 回線を 「利用開始待ち」ステータスにすることで基本料金が無料 となります。製品に plan-KM1 を組み込んだ際の在庫期間中における保管費用の低減などに役立ちます。
- 他の SORACOM Air 同様に 1回線からオンラインでご注文いただくことができ、また、 SORACOM Beam や SORACOM Harvest といった すでにある SORACOM サービスが利用可能 です。
IoT における省電力の必要性
ところで、なぜ IoT デバイスでは省電力が必要なのでしょうか? IoT の目的は「遠くに離れたモノや、現場で起こっているコトをデジタル化する」ことにあります。これを実現するためには、あらゆる場所にデバイスを配置しセンシングする必要がありますが、課題の1つが電力です。
当然、電力が確保しづらい環境というのも存在します。(むしろ、電力が確保できるケースの方が少ないのかも) バッテリーで稼働させるということが要件となるケースが出てきますが、高効率・大容量なバッテリーの採用はコストがかかり、「あらゆる場所」での利用が難しくなります。
一方、デバイスを省電力化することで、例えば 乾電池のような安価なバッテリーで稼働ができるようになれば、あらゆる場所にでの利用が可能になる のです。
省電力のカギは eDRX と PSM
LTE-M における省電力性を実現するには eDRX と PSM の活用が不可欠です。
平たく紹介すると eDRX (extended Discontinuous Reception) は、待ち受け時における着信電波の確認間隔を減らすことで省電力化を実現する手法です。 また PSM (Power Saving Mode) は、モデムを電源 OFF に近い状態にすることで省電力を実現します。
IoT においては、データ収集における「送信時以外はモデムは OFF でもいい」というケースが多いため、 eDRX よりも PSM の活用が有効な場面が多くなると考えています。
アプリケーションの例
7/4 の Discovery で発表させいただきました LTE-M 内蔵ボタンデバイス「SORACOM LTE-M Button Powered by AWS」 は、今回の LTE-M を活用したアプリケーション例の一つです。
【11/1 更新】 出荷を開始しました!
SORACOM Harvest へのデータ送信も、先日リリースされた「SORACOM Harvest Publish API」を通じて可能となります。
デバイス全体の省電力性を実現するためには
デバイス全体の省電力化はを実現するためには、 LTE-M といった通信部分だけでなく、マイコンにおけるディープスリープモードや、センサーのセンシング頻度の低減といった複数の技術や手法を用いて、全体バランスよく実装することで達成できます。
局所最適よりも全体最適を心掛けて、省電力な IoT デバイスを目指しましょう!
plan-KM1 で利用可能なデバイス2種の販売開始
plan-KM1 が利用可能なデバイスを、2種類お使いいただけるようにいたしました。
ここで紹介しているデバイスは SORACOM Web コンソールから、そして1台からご注文いただくことができます!
Wio LTE M1/NB1(BG96)
Wio LTE JP Version や Wio 3G SORACOM Edition といった Wio シリーズの兄弟分として Wio LTE M1/NB1(BG96) が登場しました!
見た目だけでなく、基本スペックも Wio 3G SORACOM Edition と同じです。搭載しているモデムが 3G か LTE-M といった点や、カード型 SIM のスロットの有無というのが違いになります。
他の Wio シリーズ同様に Arduino IDE を用いた開発が可能です。
価格は 9,800 円 (税別・送料別)です。 (plan-KM1 の SIM は別売りです)
ちなみに、商品名である Wio LTE M1/NB1(BG96) というのは、最後の (BG96) まで含めて正式な商品名だそうです。豆知識です。
BG96-TE-A および開発ボードキット
Wio LTE M1/NB1 はどちらかというと単体でお使いいただくワンボードマイコンですが、ここでご紹介する [BG96-TE-A および開発ボードキット] は、 plan-KM1 を製品に組み込んでいく事をゴールとした、本格開発ボードとBG96(モデム)のセットです。
PC と UART で接続し、 LTE-M モデムである BG96 を AT コマンドなどで操作して開発を進めていきます。
SIM スロットを装備している他、BG96 が持っている I/F の操作もこのボード上で開発可能です。
価格は 34,800 円 (税別・送料別)です。(plan-KM1 の SIM は別売りです)
plan-KM1 を含めた「すべての SORACOM Air for セルラー」でバイナリパーサー機能が利用可能に
1年前の7月に LoRaWAN や Sigfox といった LPWA 向けの機能として「バイナリパーサー機能」をリリースしました。この機能は「これを待っていた!」というお声を 一部の熱い方々より いただいておりました。(個人的な観測範囲)
セルラーLPWA としての plan-KM1 の提供開始に伴い、バイナリパーサー機能をセルラー通信全体に広げ、 全ての SORACOM Air でバイナリパーサー機能が利用可能となりました!
バイナリによるデータフォーマットの重要性
通信量を削減することは、通信料金を下げるだけでなく 消費電力を下げる事にも寄与します。
これは、通信している時間=モデムが起動している時間となるためです。1秒でも早く通信が終了すれば、その分モデムへの電力供給をいち早くカットできるため、バッテリーによる稼働時間を長くすることができます。
バイナリデータにすることで、人間には読みづらくなりますが※絶対的なデータ量削減が可能となります。
(※一部には「バイナリアン」もしくは「邪眼持ち」と呼ばれる方々もいらっしゃるそうです)
SORACOM Air のオプションであるバイナリパーサー機能を ON にしてデータを送信すると、 SORACOM プラットフォームに予め設定されたフォーマットに従ってデータパース(解釈)と処理が行われる仕組みです。
上記の例では9バイトのバイナリデータの中に unsigned int のデータ1つ と float のデータ2つを格納しているところを、バイナリパーサーで展開した結果です。
出力された JSON はスペースなどを削除して約 60 バイトになります。一方入力側のデータは 9 バイトです。この例では、おおよそ 85% のデータサイズ削減に成功しています。
フォーマットに使用できる文字列など、詳しい情報はブログやドキュメントをご覧ください。
あとがき
自分自身で「読みやすいブログは “1つの記事には1つの物事や結論になるようにスコープを小さくする”」と言っておきながら、今回は3つの事柄をご紹介するという事態になりましたが、どれもこれも LTE-M を活用するにあたって不可分ということで一気にご紹介することになりました。
個人的にはバイナリパーサーの SORACOM Air for セルラー対応にグッときたのですが、みなさんはどのあたりにグッと来たでしょうか?
全国で行われているユーザーグループ “SORACOM UG” などで語り合えるとうれしいです!
ソラコム “MAX” 松下