投稿日

数千名規模のイベントで RFID システムを開発して経験した5つの苦労

 こんにちは、世界遺産登録が決定した百舌鳥・古市古墳群で育ったエンジニアの kaz です。

 先日は、RFID システムの実証実験の結果ブログに対して色々と反響の声を頂きありがとうございました。その後、社内から苦労話に関するリクエストをなぜかたくさん頂いたので、少々蛇足と思いつつここでいくつかお話しさせて頂こうと思います。

blog.soracom.jp

流れはこのようになっております。

1. 検証、検証、また検証。
2. モノの手配はお早めに、筋肉痛には気を付けて!
3. 小物や固定具も「システム」の一部。
4. 法に則った運用を。
5. 報告までが実証実験です。

 まずは、RFID リーダーを設置する高さ・場所・スキャン間隔を調査する実験についてです。ソラコムのオフィスにはセミナー用のスペースがあるのですが、イベントがない日は空いているので、そのスペースを利用して日々研究していました。来場者用のパスケースを着けたあと、設定値を変更しては歩くという作業を何百回(記録も残しているので本当です!)と繰り返して適切な値を見つけ出しました。他にも、電波が反射しないような条件の悪い屋上で、複数人が同時に歩いた時の検知率を調べる実験など、とにかく地道な作業の連続だったのが1つ目の苦労です。

 次に苦労したのは、RFID リーダーと RFID タグの調達です。今回の実験では RFID リーダーを10台使用したのですが、そのうち半分は先日ソラコムのイベント if-up でご登壇頂いた RF ルーカス様からお借りさせて頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

https://rflocus.com/

RFID タグについては、準備を早めに進めてはいたのですが、デザインの作成などいろいろ準備をしていると、結局入手が SORACOM Discovery 2019 開催の1週間前になってしまいました。そこから来場者用のパスケースに貼り付ける作業をする必要があり、日にちの余裕がなかったことから直接 RFID タグのメーカーに取りに行き、その足でソラコムのオフィスまで届けました。大変だったのはその重さで、5千枚もあると重さがなんと 6kg 近くあったのです。当日は雨だったため傘をさしながら持ったのですが、結局合計1時間以上持ち歩くことになり、肩と腕が筋肉痛になってしまいました。ソフトウェアエンジニアの仕事なのにまさかの筋肉痛というのが2つ目の苦労です。

 調達でもう一つ苦労したのは、小物関連です。これには、100円ショップをフル活用しました。まずは前回のブログでもご紹介した内容ですが、RFID タグをそのままパスケースに貼り付けると、身体と接触した時に検知しにくいことから、何かを間に挟む必要がありました。その「何か」を見つけ出す実験の様子がこちらです。

f:id:kazntree:20190727182820p:plain

 実験の結果、有効と判断した素材は発泡ポリエチレンシートとエアキャップでした。当初は見た目の観点から発泡ポリエチレンシートを本線に考えていたのですが、市販されている物の最小の厚さが5mmであり、パスケースに付けるとかなり厚みを感じさせてしまうことから止む無く却下しました。その後の話しについては、前回のブログに記載の通りです。

 また、今回利用した RFID リーダーはハンディタイプなので、据え置くために固定する物も必要です。本当は100円ショップに RFID リーダーを持っていってその場で感触を確かめたかったのですが、見た目が見た目だけに下手したら通報されかねないので(笑)、いくつかサイズの合いそうな物を購入し、持ち帰って確認しました。

f:id:kazntree:20190727182609p:plain

 このうちの2つは全く合わなかったのですが、最後の1つが見事にピッタリ合ってホッとしました。最終的に、トータルで100円ショップに合計10回近く通ったというのが3つ目の苦労です。

 手続き的な話しで言うと、RFID リーダーは無線機器なので、利用するためには事前に総務省に届け出る必要があります。

http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/ru/rfid.html

 このサイトを見ながら「あー、この通りやってけばいいのね、ふんふん」と言えれば良かったのですが、まず最初のページでどのリンクから進めば良いかすら分からないという状態だったため、そこから勉強を始める必要があります。結局、関東総合通信局に電話をして分からないことをいろいろ聞いたのですが、非常に丁寧に教えて頂いて大変助かりました。ついでに無線局登録状を取りに九段南まで行ってきました(これは完全に興味本位でしたけど)。ただシステムを作れば良いというわけではなく、不慣れな事務的作業も必要だったというのが4つ目の苦労です。

 当日もいろいろトラブル続きでした。例えば、開場前の朝7時の時点で、RFID リーダーを制御する iPhone のうちの1台が異常な状態となってしまい、RFID リーダーを制御できなくなってしまいました。そこで前泊していたホテルに戻り、Wi-Fi に接続して iPhone をリセットした後、mac に繋いで iOS アプリを転送したところ、無事動作してギリギリ開場時間に間に合いました。

 また、会場で10台設置する際に最初は電源周りのトラブルが色々あり(この時は正直、やっぱりダメでしたという内容のブログの文面が頭の中をよぎり始めていました)、何度も立ったり座ったりを繰り返すことになりました。その結果、100回近くスクワットをした感じになってしまい、朝の開場の時点ですでに膝に疲弊がたまって午後からのブース対応が大丈夫か、かなり不安になりました。

 そして最後のトラブルは、SORACOM ユーザーグループ向けに実験結果のプレゼンをした時に、笑いを取りに行こうとしてスベったことです。これはまぁ、予期できたトラブルではありましたが、、当日にトラブルが起きるのは割とよくあることだとは思うのですが、一応これらを5つ目の苦労にカウントしたいと思います。

 以上、RFID 実証実験の裏側でしたが、いかがでしたでしょうか。SORACOM を使って RFID システムをサクッと作りましたよ感を出していた裏で、実はこんな泥臭い苦労の連続だったのですが、うまく伝われば幸いです。

 今回、準備する段階では色々リスクも見えており、結構な確率で失敗するのではないかという不安もあったのですが、ソラコムのリーダーシップ・ステートメントに Just Do It というものがあり、これが私を強く後押ししてくれました。チャレンジすることは良い事であるというマインドが社内で本当に浸透しているので、その点で安心してチャレンジすることができました。結果的には無事成功し、たくさんの反響を頂いてとても嬉しく、本当にやって良かったなと思いました。

soracom.jp

 このように失敗を恐れず新しいことにチャレンジしたい!と思われた方は、ぜひこちらから応募してください。お待ちしています!

https://careers.soracom.jp/

careers.soracom.jp

ソラコム kaz 中西