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LTE Cat.1 対応モデム「EC21-J Mini PCIe」の GNSS 搭載モデルを販売開始

ソラコム “Max” 松下です。

2017年から販売している LTE Cat.1 通信モジュール「EC21-J Mini PCIe」に GNSS(全球測位衛星システム)を搭載したモデルを新たに販売開始いたします!

EC21-J Mini PCIe (GNSS あり) 外観

EC21-J Mini PCIe (GNSS あり) の特徴

EC21-J Mini PCIe は LTE Cat.1 通信モジュールです。ソラコムでは 2017年 4月から販売を開始していますが、「1つから購入できる」「Mini PCIe 型(フォームファクタ)で開発しやすい」ということで、非常に多くのお客様にご利用いただいております。

今回、新たにラインナップされた GNSS 搭載版は大きく2つの特徴が追加されました。

  • GNSS (全球測位衛星システム)搭載
  • SORACOM 特定地域向け IoT SIM / plan-K にも追加対応

それぞれをご紹介します。

GNSS 搭載

GNSS は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)の頭文字をとった単語であり、いわゆる GPS(Global Positioning System) を含めた「衛星による位置測位システム」の総称です。スマートフォンやカーナビなどから利用されており、生活に身近なシステムの一つかもしれません。

EC21-J Mini PCIe (GNSS あり)は、その名の通りモデムモジュールに GNSS 機能を内蔵したモデルです。
GPS アンテナを接続すれば、後述する AT コマンドで測位情報を得ることができるようになります。

SORACOM 特定地域向け IoT SIM / plan-K 対応

EC21-J mini PCIe (GNSS あり)では 特定地域向け IoT SIM / plan-K がご利用いただけるようになります。

plan-K とは KDDI 回線を利用したセルラー通信用 SIM で、 その他の IoT SIM と同様に1回線/1日当たりのご契約からお使いいただくことができます。詳細は SORACOM / 特定地域向け IoT SIM (plan-K) はご覧ください。

後述いたしますが、EC21-J Mini PCIe の GNSS なしモデルも併売いたします。
そのため、現状ソラコムで販売しているどのモデルで何が使えるのかを表にしたのでご確認ください。

特定地域向け IoT SIMGNSS なしGNSS あり(NEW)
plan-D対応対応
plan-K非対応対応

GNSS なしモデルも併売

EC21-J Mini PCIe には GNSS なしモデルもございます。そちらも継続して併売いたします。異なる点は「販売価格」となりますので、機能面と価格をご確認の上でご購入ください。

アンテナは別途ご調達ください

本製品にはアンテナが付属していないため、別途ご購入ください。

セルラー通信用アンテナは HW-MULTI-GA-RSMA となります。
※ アンテナは 1 本でも利用できますが Rx-diversity 機能による受信感度向上のためにはアンテナが 2 本必要(2セットのご購入)となります。

GNSS 用アンテナは市販品の U.FL コネクタの GPS アンテナがご利用いただけます。ソラコムとしての推奨品はございませんが、パッシブ式 GPS アンテナでの受信は確認できています。用途や必要な感度に応じてご調達ください。

開発は「開発ボードキット」をご利用ください

EC21-J Mini PCIe (GNSS あり/なし双方) は、同じくソラコムから販売している「3G/LTE Cat.1 モジュール開発ボードキット Mini PCIe EVBKIT」の Mini PCIe スロットに取り付けて開発が可能です。

開発ボードキットに EC21-J Mini PCIe を載せている様子

PC とは microUSB もしくは RS-232C (9ピン) のケーブルで接続します。するとシリアルポートが割り当てられるので、このポートに接続して EC21-J に対して AT コマンド等のやり取りができます。 microUSB で接続した場合のドライバは FTDI (usbseial) となり、「AT Port」「DM Port」「NMEA Port」の3つのシリアルポートが作られます。

Windows におけるポートの認識状態

※ macOS の場合は /dev/tty.usbserial** 、 Linux の場合は /dev/ttyUSB** が割り当てられます。

AT コマンドから GNSS を利用してみる

EC21-J の操作は他のモデム同様に AT コマンドで操作します。 AT コマンドリファレンスは Quectel 社のホームページ(要ユーザー登録) で確認いただけます。ここでは新たに搭載された目玉機能 GNSS で位置測位の方法をご紹介します。

EC21-J Mini PCIe (GNSS あり)を開発ボードキット(以下、EVBKIT)に取り付けたのち、GNSS アンテナを EC21-J Mini PCIe (GNSS あり)本体に取り付けます。GNSS アンテナは、3つある U.FL コネクタの内の真ん中です。

microUSB で PC と接続したあと、シリアルポートが認識できるようになったら AT Port にボーレート 115200 としたターミナルで接続し、以下のように AT コマンドを実行します。
(この時入力文字が表示されない(エコーバックされない)ことがあります。その場合は ATE1 としてエコーバックされるようにするとわかりやすいでしょう)

ATE1
AT+QGPS=1

この AT コマンド実行後から、GNSS による位置測位を開始します。この時、 NMEA Port にボーレート 4800 としたターミナルで接続すると、以下のように GNSS の生データが確認できます。この NMEA Port は、gpsd (GPS service daemon) で利用することができます。

NMEA Port の様子

測位できた位置情報を取り出すのは AT+QGPSLOC? です。
この時、まだ衛星が捕捉できていない等の理由で位置情報が得られない場合はエラーコード 516 が返ってきます。
無事、位置測位ができれば +QGPSLOC: から始まる文字列が得られます。

以下は AT+QGPS=1 からの一連の AT コマンドの実行例です。

AT+QGPS=1
OK
AT+QGPSLOC?
+CME ERROR: 516
AT+QGPSLOC?
+QGPSLOC: 074116.0,3540.2930N,13944.6768E,1.9,2.0,2,130.01,0.0,0.0,270819,03

+QGPSLOC: の詳しい読み方は AT コマンドリファレンスをご覧いただきたいところですが、基本的には CSV(カンマ区切りテキスト)です。
2列目と3列目が、緯度/経度を表しています。この値を実際私たちが利用可能な値にするには算出する必要がありますが、例えば CASIO さんの “keisan” といったサイトでもお手軽に確認することができます。(ありがたい!!)
試しに上の値を入れてみると、ソラコム赤坂オフィスをポイントする値が得られます。

最後ですが、GNSS での測位を止めるには AT+QGPSEND となります。

組み合わせると便利な SORACOM サービス

得られた位置情報は、せっかくですからクラウドと連携したいものです。 SORACOM では EC21-J のようなモデムが持っている AT コマンドベースからでもクラウド連携が可能なサービスをご提供しております。

IoT データ収集・蓄積向けのサービス SORACOM Harvest Data は UDP 送信に対応しているので、AT コマンドからでも利用しやすいのではないでしょうか。

AT コマンドでの利用方法は Arduino で SORACOM SIM を使ってなるべく安く通信する方法 に掲載されていますので AT コマンドリファレンスを確認いただきつつ試していただければと思います。 (AT+QIOPEN といったキーワードで探してもらえればすぐ見つかります。

購入方法

EC21-J Mini PCIe (GNSS あり/なし双方とも) は SORACOM ユーザーコンソール で、1個からお求めいただけます。

あとがき

位置測位は IoT でも人気のアプリケーションです。モデム単体で完結するというのはシステム構成においても自由度が増えると思いますので、是非ともご活用ください!


ソラコム “Max” 松下