こんにちは。ソリューションアーキテクトの桶谷(ニックネーム: takuya)です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨今、ソラコムにお寄せいただく声の中で多いのが、製造業でよく利用されている「PLC」(Programmable Logic Controller)を遠隔監視・操作したい、というご要望です。このご要望に対して IoT 通信を活用することで、遠隔地の状況を知ったり、機器の操作ができます。
以前に SORACOM IoT レシピ:IoTで、PLCを安全に遠隔メンテナンス というレシピで MELSOFT 接続をサポートする三菱電機製 PLC を対象とした設定方法をご紹介しておりますが、今回は KEYENCE 製 PLC を対象として KV Studio で接続する設定方法をご紹介します。
今回利用する PLC と産業用 LTE ルーター
KEYENCE 製 KV-8000 、産業用 LTE ルーター UD-LT1/EX を使用します。
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こちらの KV-8000 に KV-PU1(AC 電源ユニット) を組み合わせています。
全体の構成は以下の図の形になります。
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以降はレシピに沿って、レシピと異なる部分のみをご紹介していきます。
準備
レシピの準備と基本的には同じですが、KV-8000 の USB ポートは USB Type-B のため USB ケーブルは (USB A or USB C) – USB B をご用意ください。
PLCのEthernetポートにIPアドレスを設定する
パソコンと PLC の CPU ユニットを USB ケーブルで接続し、KV Studio から PLC に通信できる状態にしておきます。
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KV Studio のナビゲーションで [USB] を選択します。
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メニューから[モニタ/シミュレータ] – [PLC読出]を選択し、PLCの設定読み込みを行います。
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読出項目の一覧から[ユニット設定情報] のチェックがオンになっていることを確認し、[実行] ボタンをクリックします。
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KV Studio のメニューの [ツール] から [ユニットエディタ] をクリックし [ユニットエディタ] を開きます。
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[ユニット設定(2)] タブをクリックし、 [基本] – [IPアドレス] に192.168.8.101
を入力します。
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[ルーティング設定] – [ルーティング設定]を「する」に変更し、[宛先IPアドレス1]に 10.128.0.0
、[宛先サブネットマスク1]に 255.128.0.0
、ルータIPアドレス1に 192.168.8.1
を設定します。
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※デバイスサブネットIPアドレスレンジに 10.128.0.0/9
以外を設定する場合は、上記ルーティング設定も合わせて変更してください。
[OK] をクリックしダイアログを閉じます。
メニューから[モニタ/シミュレータ] – [PLC転送]を選択し、PLCへの設定書き込みを行います。
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転送項目の一覧から[ユニット設定情報] のチェックがオンになっていることを確認し、[実行] ボタンをクリックします。
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これで PLC の設定は完了です。
LTE ルーターのセットアップ
[転送設定] までレシピの通りに進めます。
KV Studio 接続を PLC に転送する DNAT を2つ設定します。メニューから [転送設定] をクリックし、 NAT タブの [追加] ボタンをクリックします。
1つ目は以下の通り入力します。
項目名 | 値 | 備考 |
---|---|---|
切り替えタイプ | DNAT | – |
プロトコル | all | – |
初期アドレスタイプ | interface | – |
インターフェース | modem | – |
初期ポート | 8500 | – |
マッピングアドレス | 192.168.8.101 | PLC に設定した IP アドレスを指定します。 |
タイプポート | 8500 | KV STUDIO が PLC と通信する際に利用するポートを指定します。 ※ KV STUDIOの初期値が 8500 です |
2 つ目の項目設定以降はレシピの通りに進めます。WireGuard 接続情報の AllowedIPs
に 10.128.0.0/9
を追加するのを忘れないようにしましょう。
設定用パソコンのセットアップ
WireGuard を設定し、KV Studio から PLC に接続します。メニューから [モニタ/シミュレータ] – [通信設定] – [通信設定] をクリックして通信設定画面を開きます。
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[パソコン側通信ポート] に [イーサネット] を選択し、[イーサネット設定] – [IPアドレス] に SIM の IP アドレスを入力します。
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[接続テスト]をクリックして Ping と Tracert の結果が正しいことを確認します。問題なければ、PLC 読出を実行し、PLC の設定情報が読み込めるか確認します。接続処理中のダイアログが表示された後に、 PLC 読出のダイアログ(経路: イーサネット)が表示されれば接続に成功しています。
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PLC 読出のダイアログで[実行]をクリックすると読出が開始します。セルラー通信を利用しているため、 USB 接続時の読出と比較して少し時間がかかります。
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あとは、これまで通り PLC への任意の操作が遠隔から可能です。
LTE ルーターの DNAT 設定および[イーサネット設定] – [ポート番号]を変更することで、1 台の LTE ルーターに複数の PLC への転送を実現することもできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。PLC に LTE ルーターを組み合わせることで遠隔からの監視/操作が簡単に実現できました。
他の PLC でも以下のポイントを確認することで LTE ルーターを組み合わせて遠隔から操作できる可能性があります。
- イーサネット接続で設定ツールと通信し、操作できる
- PLC からの通信にルーティング or 通信先ルータが設定できる
また、今回使用した 産業用 LTE ルーター UD-LT1/EX はSORACOM IoT ストアでご購入いただけます。是非この機会にご検討ください。
他にも「◯◯のPLCの場合はどうしたらいいの?」というご質問やご要望、あるいは「◯◯のデバイスを LTE ルーターで遠隔制御してみたよ」実績がありましたら Twitter の ハッシュタグ #SORACOM で Tweet いただければと思います。
今後も 色々な PLC やデバイスと LTE ルーターの使い方をご紹介していきます。乞うご期待ください!
※記載されている会社名、製品名等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。