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モーターやファン等の産業機器を後付けセンサーで予知保全するには? ― 11/8 開催セミナーレポート

こんにちは、ソラコム松下です。

このブログでは11/8に開催した「産業機器の予知保全を Amazon Monitron(モニトロン) と SORACOM で実現セミナー」のレポートをお送りします。当日は多くのご質問をいただきましたので、そちらの回答もまとめてお答えしております。Amazon Monitron の導入検討にお役立てください。

※イベントで紹介した資料は配布ページのよりダウンロードいただけます(要フォーム入力)

【セッション1】Amazon Monitron の特徴とユースケース

最初のセッションは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Machine Learning Solutions Architect 鮫島さんから、Amazon Monitron の概要と具体的なユースケースをご紹介いただきました。

私たちの身の回りは多くのFA (ファクトリー・オートメーション) 等の産業機械が関わっており、現代社会には欠かせません。例えば自動ドアの開閉や、生産ラインの稼働、空調の制御等があります。

セッション冒頭では、これら産業機械に対するメンテナンス戦略の現状とあるべき姿の解説をいただきました。すなわち「事後型」「計画型」「予測型」です。利用者への影響を最小限にしつつ、効果的なメンテナンスをするには「予測型」が最適ではあるものの、高度な技術や費用が発生することから、取り組むことが困難だったのがこれまででした。

Amazon Monitron は、世界最大級の eコマース「Amazon」の物流倉庫(Amazon Customer Fulfillment)でも使用されている産業機械の予知保全ソリューションとして紹介いただきました。具体的には「センサー」「ゲートウェイ」「クラウドとアプリ」が一括で揃います。

まとめとしては

  • Amazon Monitron はセンサーデバイスとクラウドサービスを組み合わせた産業向けソリューション
  • 工場やプラントの設備状態をモニタリングし、予兆を検知することで計画外のダウンタイムを防止する

というセッションでした。

【セッション2】ネットワークの無い環境でも行える「後付けの予知保全」はじめかた

続いてのセッションは私(松下)より、Amazon Monitron 導入における「ネットワークの課題」を解決する「SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron」を紹介しました。

Amazon Monitron の導入には、AWS クラウドとの通信の確保が不可欠です。一般的には工場内の有線 LAN や Wi-Fi を利用することになりますが、構内ネットワークへの接続申請や AWS クラウドと通信するためのファイアウォール設定変更、そして何よりも LAN ケーブルの引き回しや Wi-Fi 電波の到達調査が必要となり、手間や検証が発生します。

SORACOM セルラーパック for Amazon Monitronは、IoT プラットフォームを提供している SORACOM のセルラー通信(IoT SIM)や LTE ルーター等をパッケージしています。既存ネットワークへの影響を最小限にしつつ Amazon Monitron 導入の手間を軽減しているのがこのパックです。

後半では、通信量/料金や SORACOM の通信を利用する利点をご紹介しました。

当日お寄せいただいた質問へのご回答

本セミナーでのご質問に対する回答を掲載しています。時間内にお答えできなかった内容も掲載しています。
資料は配布ページよりダウンロードいただけます。ご活用ください。

また、Amazon Monitron センサーやゲートウェイの仕様については「Amazon Monitron のよくある質問」や「Amazon Monitron の特徴 / 技術仕様」も併せてご覧ください。

SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron へのご質問

Q: すでに SORACOM Air による LTE 通信があるネットワークで、 Amazon Monitron は利用できますか?SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron でなければ利用できませんか?

A: すでにお使いのネットワークがあれば、それを活用いただけます。「SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron」は、LTE ルーターや SORACOM IoT SIM を準備する手間を削減するパッケージであり、同様の機器や IoT SIM がお手元にあれば、それらをご利用いただけます。

SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron は構成内容を商品ページで公開しているため、同様の構成を皆さま自身で調達いただくこともできます。例えば Amazon Monitron センサーやゲートウェイは Amazon.co.jp で購入いただけます(センサー5個ゲートウェイ(イーサーネットタイプ))。センサーの個数売りには対応しておりません。5個単位でご購入ください。

Q: SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron を使うことで、SORACOM のダッシュボードサービス「SORACOM Lagoon」等が使えるようになりますか?

A: SORACOM セルラーパック for Amazon Monitron におけるデータ蓄積先は、すべて Amazon Monitron です。これは、Amazon Monitron ゲートウェイのデータ送信先が AWS クラウド内の Amazon Monitron へ直接送信するようになっているためです。そのため SORACOM Air for セルラー(LTE 通信)のみをご利用いただくことになります。

一方で、SORACOM Air for セルラーやプラットフォームの機能はご利用いただけます。例えば「ご利用料金アラート機能」や「IMEI ロック機能」、「アクセス管理(SORACOM Access Management: SAM)機能」です。安心してご利用いただくためにも是非ご活用ください。

Amazon Monitron へのご質問

Q: 1時間に一回のセンシング以外に、センサー値を読む方法はありますか?

A: スマートフォンの NFC(近距離無線通信) にて、センサーから直接値を読みだす方法があります。具体的な方法は「Amazon Monitron ユーザーガイド / 1 回限りの測定」をご覧ください。この方法はセンサー内の電力を消費するため、電池寿命が短くなる可能性があります。最小限に留めておくことをオススメします。

Q: センサーとゲートウェイ間の通信、およびゲートウェイと Amazon Monitron 間の通信フォーマットは公開されていますか?

A: 非公開です。しかし Amazon Monitron から Amazon Kinesis Data Streams を経由してデータを他の AWS サービスに転送でき、その際のフォーマットは公開されています。フォーマットは「Amazon Monitron ユーザーガイド / v2 データエクスポートスキーマについて」をご覧ください。

Q: Amazon Monitron への蓄積データを他のシステムで利用できますか?

A: Amazon Monitron は標準で Amazon Kinesis Data Streams への連携をサポートしており、リアルタイムでデータがストリーミングされます。後方処理には、 Amazon Simple Storage Service(S3) へ保存したり、AWS Lambda を起動したり、Amazon EventBridge Pipes でノーコード連携が考えられます。

例えば、以下のように Amazon EventBridge Pipes の “強化” (Enritchment)の中で AWS Lambda 等を利用して条件分岐をしつつ、外部のチャットサービス等にメッセージ送信が考えられるでしょう。

Amazon Monitron から Amazon S3 へ RAWデータの直接エクスポート(保存)もサポートされていますが、AWS サポートへの依頼が必要です(2023年11月現在)。Amazon S3 へのエクスポートについては「Amazon Monitron ユーザーガイド / Amazon Monitron データを Amazon S3 にエクスポートする」をご覧ください。

Q: 機械学習による異常検知は、自動的に開始するのですか?

A: Amazon Monitron はセンサー設置直後から学習を開始します。そして学習が済み次第、機械学習による評価を自動的に開始します。機械学習のモデルには、Amazon Monitron センサーから得られたデータの他に、Amazon Monitron アプリから手入力されたアラートフィードバック(障害要因)も加味されます。これにより、設置場所や個体差といった環境に即した評価がされるようになります。

機械学習による評価開始には3〜4週間を要します。この間の評価は機械振動に関する国際規格「ISO 20816」に基づいて行われます。ISO 20816 については「Amazon Monitron で産業機械の予知保全 ― 機械振動の測定と評価規格「ISO 20816」とは ?」をご覧ください。

Q: Amazon Monitron センサーを交換した際、データや機械学習のモデルは引き継がれますか?

A: 交換後のセンサーに、交換前のデータや機械学習のモデルを引き継ぐことはできません。このため、交換後は3-4週間かけてデータの収集とモデルの構築が行われます。

Q: 定期的に運転・停止を行うような機械に適用できますか?

A: Amazon Monitron は常時または数時間以上連続運転し、出力(振動)が一定である機械に最も適しています。短い周期で運転・停止もしくは出力が変動する場合は、停止中や出力低下中にセンシングをしてしまい、適切な評価ができない可能性が考えられます。例えば日中に連続稼働する機械であれば、その間は継続的なデータが取得できることから値の傾向を読み取ったり、機械学習やISO 20816 に基づいた評価が可能です。

Q: Amazon Monitron センサーの取り付けに接着剤以外の方法はありますか?

A: 機械振動をセンサーで確実に測定するため、接着剤の使用を強くオススメします。センサー底面には、機器温度をセンシングするためのアルミ面が露出しており、接着剤がつかないようにご注意ください。具体的な接着剤の塗布は「Amazon Monitron ユーザーガイド / センサーの取り付け」をご覧ください。また、設置位置決めには「Amazon Monitron ユーザーガイド / センサーの配置」をご覧ください。

Q: Amazon Monitron アプリの利用には、AWS アカウントが必要ですか?また、複数人で利用できますか?

A: Amazon Monitron アプリの利用者には AWS アカウントが不要です。Amazon Monitron アプリの利用に使用するサインイン情報には、AWS アカウントではなく AWS IAM Identity Center(旧: AWS SSO) で作成したユーザーアカウントを使用していただきます。このユーザーアカウントの作成等、IAM Identity Center 上での操作を行う管理者のみ AWS アカウントが必要です。IAM Identity Center では複数のユーザーアカウントを作成できるため、Amazon Monitron アプリの使用したい作業者分のユーザーアカウントを割り当てられます。

《詳解》

Amazon Monitron のプロジェクトは、 AWS IAM Idintity Center のアプリケーションとして扱われます。Monitron 上でプロジェクトが作成されると、自動的に IAM Idintity Center のアプリケーションとして登録されます(削除時も同期します)。

Q: Amazon Monitron アプリはパソコン上でも利用できますか?

A: できます。AWS IAM Identity Center で払い出された「AWS アクセスポータルの URL」を開き、IAM Identity Center で作成されたユーザーアカウントでサインインすることで、Monitron アプリをパソコン上で利用できます。

事例や導入に関するご質問

Q: Amazon Monitron の事例を一覧できる場所はありますか?

A:Amazon Monitron のお客様」のページをご覧ください。

Q: Amazon Monitron を導入前に確認する方法はありませんか?

A: ソラコムが展示会などに出展する際には Amazon Monitron のデモ展示を行うことがあり、そこで実機やアプリをご確認いただけます(デモ展示をお約束するものではないため、ご留意ください)。ソラコムが出展する展示会の情報は「ソラコム / セミナー・イベント」でご確認ください。

― ソラコム松下 (Max)