はじめに
2024年10月、ベルリンで開催された Automotive Edge Computing Consortium (AECC) に参加してきました。本イベントは、次世代の自動車エッジコンピューティングに関する最新技術と業界の連携を推進する重要な場です。今回、ソラコムは、このコンソーシアムの一員として貢献し、自社のIoTソリューションを発信する機会を得ました。この記事では、イベントの概要、注目トピック、そしてソラコムの取り組みについてご紹介します。
AECCとは?
AECCは、自動車業界におけるエッジコンピューティング技術の活用を促進するために2018年に設立され、トヨタをはじめとする大手企業が参加しています。本コンソーシアムの目的は、コネクテッドカーを支えるクラウドインフラやデータの効率的な処理を実現するための標準化と協調を図ることです。
ソラコムは2024年5月にAECCへ参加し、MNO(携帯通信事業者)、自動車メーカー、通信やクラウドの事業者、その他関連技術標準団体および技術コミュニティと協力し、将来のコネクテッドカーのニーズを満たす新技術や標準を確立していくことを目指しています。
こうした業界の連携を背景に、今回のイベントでは参加企業による最新技術の展示や実証実験が行われました。以下では、そのハイライトをご紹介します。
イベントのハイライト
イベントは2日間にわたって行われ、最新の技術動向についてのディスカッションや実証実験の発表が行われました。ソラコムは、トヨタ自動車株式会社、伊藤忠伊藤忠テクノソリューションズ株式会社とこれまで取り組んできたコネクテッドカーのPoC (Proof of Concept) を展示し、他の参加者からも高い関心を集めました。
- コネクティッドカー向けの柔軟で安全なクラウド接続の実現
https://soracom.com/ja/news/20241021-poc-for-connected-car
PoCでは、コネクテッドカーのクラウド接続をシンプルかつ柔軟に行うためのIoTソリューションを紹介しました。自動車は一般的に20年以上 にわたり使用されるため、長期的にコネクティビティを維持することが課題となります。そのため、特定のアクセス回線に依存しない接続の確保が求められます。このPoCでは、ソラコムのSIM技術 を活用し、コネクテッドカーの接続を認証する仕組みを導入しました。これにより、セルラー回線、Wi-Fi、さらにはユーザーのスマートフォンなど、多様なアクセス回線 を利用した接続であっても、SIMの 強固な認証基盤 を通じて安全にデータセンターに接続することが可能となります。
- 未来のモビリティを支える多彩なPoC展示
その他にも、多数のPoCが展示されていました。たとえば、コネクテッドカーの通信状況に応じて CAMARA Telco API を活用し、ダイナミックにネットワークスライスやエッジデータセンターの割り当てを行うデモが紹介されました。また、V2X技術を使って、コネクテッドカーが周囲の自動車や歩行者(スマートフォンを含む)を認識し、安全に走行するデモも展示されました。さらに、リモート運転を可能にするための リアルタイム通信 をオンデマンドで確保し、モビリティ向けの拡張現実(Augmented Reality)を実現するデモもありました。
これらの展示はPoCでありながらも、多くが実際のユースケースを深掘りした構想に基づいており、未来のモビリティがこれらの技術の結集によって実現する ことを実感させてくれる、ワクワクする内容でした。
DEMO CONTRIBUTOR AWARD 受賞!
そしてなんと、今回のイベントで展示した私たちのPoCが、来場者アンケートの結果を受けて DEMO CONTRIBUTOR AWARD に選ばれるという嬉しいニュースもありました!数多くの優れた展示が並ぶ中での受賞ということで、チーム一同、大きな喜びを感じています。こうした評価を励みに、これからも革新的なソリューションの提供に向けて取り組んでいきます。
5GAAでのライブデモ体験
今回のAECCでは、同時期にベルリンで開催されていた 5GAA (5G Automotive Association) のライブデモへの招待もありました。5GAAは、自動車業界と通信業界が協力し、5GやC-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything)技術を活用した次世代モビリティの促進を目指す団体です。詳しくはこちらをご覧ください。
午前中には、5GAAとAECCによる MoU(覚書)の締結も行われ、今後のモビリティ分野における協力体制の一層の強化が発表されました(詳細:5GAA公式X)。AECCと5GAAの活動は、相互に補完し合うものであり、今後のモビリティ分野において新たな価値を創出するための強力なパートナーシップとなることが期待されます。
午後には、C-V2X技術を使ったライブデモに参加し、駐車場の空き状況をリアルタイムで取得しながら、ドライバーのナビゲーションをサポートするシステムを体験しました。実際の車に同乗し、リアルタイムのデータで空き駐車場を探しながらドライブすることで、5Gの 超低遅延通信 がもたらす利便性を肌で感じることができました。こうした技術が普及することで、日常の運転体験が大きく変わる可能性を強く感じました。
イベント参加の意義
ソラコムにとってAECCへの参加は、自社技術をグローバルな視点で発信する重要な機会です。PoCの展示や異業種とのネットワーキングを通じて、コネクティビティ技術やエッジコンピューティングが自動車産業にもたらす可能性について再確認することができました。また、異業種とのネットワーキングが新たな連携の可能性を広げる大きなきっかけとなりました。
今後もこの分野での技術革新と連携を推進していく予定です。次回のイベントでも、ソラコムの新たな取り組みを紹介できることを楽しみにしています。
この記事を通じて、私たちの活動やAECCでの取り組みに興味を持っていただけたら幸いです。
― ソラコム渡邊 (dai)