こんにちは、ソラコム松下(ニックネーム: Max)です。
2023年頃から一気に身近になったAIは、意思決定のやり方も現場の動かし方も変えつつあります。本記事では、2025年7月16日のIoTカンファレンス「SORACOM Discovery 2025」において、大企業でIT/デジタルを担うCIO/CDOの皆さまと語り合ったセッションの内容を振り返ります。
セッションと登壇者紹介
「デジタル変革の羅針盤 ~CIO/CDOが描くIoTとAIの未来~」というセッションタイトル、そして以下の面々とお話ししていきました。
- 小山 徹氏(エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社) 阪神百貨店やスーパーマーケットを展開する関西の流通グループで、全社IT/デジタルを横断
- 友岡 賢二氏(フジテック株式会社) エレベーター/エスカレーターの開発・製造・保守を展開。海外機器のコネクテッド化を推進
- 奥山 博史氏(ヤンマーホールディングス株式会社) 農業機械・産業用エンジンなど社会インフラを支える製造業で、IT/デジタルとセキュリティを統括
- モデレーター:松下(Max)(ソラコム)

CIO/CDOの役割と組織設計
まずは、CIOとCDOをどう分け、どう連携させるのが良いかについて話し合われました。運用・統制の「守り」をCIO、新価値創出の「攻め」をCDOとする考え方は周囲からのわかりやすさという点、そして特に大企業では予算を分けることで投資を進めやすくなるという声が上がりました。特に友岡氏は「CIO・CDOで分ける最大の理由は “別予算” の確保」と強調し、スピードと挑戦の観点を示しました。

一方で、データ基盤から意思決定、そしてアクションまでを一気通貫で回すなら、CIOやCDOという役割名はあまり重要ではなく、同一責任のもとで統合するやり方も有効です。奥山氏は、現状はひとつの責任で見渡すことで整合性とスピードを確保していると紹介。企業のステージによって「分ける/まとめる」を切り替える柔軟さが大事だという結論に至りました。
可視化で終えない「巡る意思決定のループ」
続いて、デジタル化のゴールはどこかを確認しました。単なる見える化ではなく、「情報 → 意思決定 → アクション」を高速かつ半自動で回すことが狙いです。特に奥山氏は、商品別採算を半年ごとから毎月、さらに毎週へと高頻度化した実例を示し、意思決定のリズムが成果につながると語りました。

このループを加速する鍵が、IoTで“見えていなかった現実”を捉えること、そして将来的にはAIエージェントで在庫や発注などの実行まで踏み込むことです。進め方については登壇者の認識が一致。最初から“自動化100%”を目指すより、手動と自動の混在で回し始めるのが現実解という考えが共有されました。
現場データ×AIの実装(小売と製造)
小売では、POSの「買った」だけでなく、手に取って買わなかった事実が重要だという視点が共有されました。小山氏は、ネットワーク帯域制約を踏まえた「1秒1枚の静止画+AI」で顧客動線や陳列の課題を見つける現場での実装を紹介。同じデジタルでも、再加工が困難で特殊なフォーマットではなく、機械可読とAPI等による組織を超えた連携が可能なデータを取り扱っていく事が重要だと指摘しました。

製造では、生産・販売はIT化が進む一方、マーケや保守といった高付加価値領域はこれからが本番です。友岡氏は、IoTや画像解析でファクト収集を外部化し、現場を「測る・記録する」から解放して「考える・決める」に集中できる体制づくりが鍵だと述べました。
生成AIの普及と期待値
最後は、生成AIを「使える」状態にするための普及策です。生成AIは“知の下駄”になる一方、使う/使わないの二極化が起きがちです。特に小山氏は、トップがまずハンズオンで触り、社内テンプレやケース集で“最初の一歩”を軽くすることが効くと紹介しました。
期待値は「使いながら精度を上げる」が基本線。友岡氏は、コミュニティや社内学習の場の重要性を挙げつつ、APIで基幹システムとつなぎ、在庫・発注・予約などをAIエージェントが実行する段階へ進むべきと語りました。 “魔法” を期待しすぎず、段階的に “行動” へ寄せていく考え方です。
まとめ
AI/IoTの価値は“見える化”の先にある、意思決定と実行の高速・自動化だと確認できました。現場では計測と記録を機械に任せ、人は改善に集中します。センサーやカメラを確実につなぎ遠隔管理できる基盤として、SORACOMなら小さく早く始めやすい。機械可読データとAPI連携を前提に、ダッシュボード止まりにせず現場アクションまでつなげます。
立ち上げは現場並走の「SORACOMはじめてサポート」をご活用ください。ユースケース整理から最小構成、そして「結果を出す」ところまでを月額11,000円(税込)で支援します。また「学びを深める」なら、セッションでもご紹介があったコミュニティがあります。開発者個人をつなぐ「SORACOM UG」や企業内での活用ノウハウを共有する「E-SIM」まで、これらを組み合わせ、現場で小さく始めて素早く学び、すぐに現場で試せるアクションにつながる“回る仕組み”を一緒に形にしていきましょう!
― ソラコム松下 (Max)