こんにちは。ソラコムの Automotive/MVNEチームでSAを担当している dai(渡邊)です。
SORACOM Discovery 2026で、新サービス「SORACOM Air RTC Gateway」を発表しました。一言で言えば、「IoTデバイスにSIMが入っていれば、それをそのまま音声通話に使える」というサービスです。この記事では「なぜ必要か」「仕組み」「特長」「活用例」を紹介します。

「音声」はIoTの未開拓領域だった
SORACOMのIoT SIMを使って、センサーデータの収集、カメラ映像のクラウド送信、機器の遠隔制御 ーー これらはすでに多くのお客様が実現しています。しかし「音声通話」については、IoTシステムへの統合が難しい領域として残ってきました。
理由は明快です。音声通話には、通常のデータ通信とは別のプロトコルスタック(IMS/VoLTE)が必要で、デバイス側に専用のSIPソフトウェアを実装するか、別途の音声端末を用意するしかありませんでした。現場の機器にわざわざ音声アプリを入れる開発コスト、あるいは音声専用デバイスの追加コスト ーー これがIoTと音声の間に立ちはだかる壁でした。
でも実は、近年のIoT向けセルラー通信モジュールにはVoLTE対応製品が増えています。その能力を、SORACOMが引き受けることで使えるようにしたのがSORACOM Air RTC Gatewayです。
仕組み:SIMとIMS/VoLTEを理解する
サービスの仕組みを理解するために、VoLTEの根幹技術であるIMS(IP Multimedia Subsystem)を簡単にご紹介します。
VoLTEによる音声通話は、一般的なIPデータ通信とは異なる経路で行われます。デバイスは電源を入れると、IMSコア(P-CSCF)に対してSIP REGISTERを送信し、SIMを使ったAKA(認証・鍵合意)によってセキュアな通信路(IPsec SA)を確立します。この認証が完了して初めて、SIP INVITEによる発着信やSIP MESSAGEによるメッセージングが可能になります。
つまり、VoLTEの安全性はSIMによる認証に支えられています。SORACOM Air RTC Gatewayはこの認証処理をSORACOMのクラウドで行い、その後お客さまが指定するVoIPプロバイダやIP PBXへと転送します。

デバイス側に追加のソフトウェアは不要です。SIMが入っていて、通信モジュールがVoLTEに対応していれば、それだけで音声通話が使えます。
4つの特長
デバイス側に特別なソフトウェアが不要
IMS/VoLTE対応の通信モジュールが標準搭載する音声通話機能をそのまま利用します。専用SIPアプリケーションの実装やファームウェア開発は不要で、既存のVoLTE対応デバイスから音声を利用できます。※ 通話にはマイク・スピーカーを備えたデバイスが必要です。通信モジュール単体では音声の入出力はできません。
SIM認証で担保された安全性
SORACOM Airによる安全な通信路の上で、IMS/VoLTE標準に基づくSIM認証を行います。認証された端末のみが音声の発着信やメッセージングを利用でき、追加のクレデンシャル管理は不要です。
VoIPプロバイダ/IP PBXへ接続
お客さま持ち込みのVoIPプロバイダのアカウントを設定すれば、そのプロバイダから発行される番号で発着信が可能です。VPG(Virtual Private Gateway)による閉域接続を用いれば、企業内のPBXへ安全に接続して内線・コールセンターとの通話や、社内システムと連携したAIエージェントとの音声接続も構築できます。
プログラマブルな設定管理
SIMグループ・SIM IDごとの接続先指定など、設定はすべてSORACOMのAPI/ユーザーコンソールから管理できます。デバイスの用途や状態に応じた、IoTならではの柔軟な音声ルーティングを実現します。
活用シーン
現場のIoTデバイスからオペレーターへ「声」でつなぐ
駐車場の精算機、エレベーターの緊急通話ボタン、建設現場の重機、医療・介護機器 ーー これまでデータだけで管理していた現場の機器から、必要なときにオペレーターと直接音声でやりとりできるようになります。テキスト入力を介さず、現場の状況をリアルタイムに伝えられる点が、特に緊急性の高いシーンで力を発揮します。
AIエージェントによる24時間音声対応
生成AIの急速な進化により、音声による一次受付や異常時の初期対応をAIに任せたいというニーズが急増しています。SORACOM Air RTC Gatewayは、IoTデバイスからの音声をAIエージェントや音声AIサービスへ直接つなぐことができます。AIによる一次対応や、必要に応じてオペレーターへエスカレーションするハイブリッドな構成を構築できます。
eSIM Profile Orderと組み合わせた社用端末の内線化
また、eSIMプロファイルを配布・インストールする仕組みである「eSIM Profile Order」と組み合わせると、応用の幅が広がります。SORACOM Air RTC Gatewayの設定を含んだ通信プロファイルをeSIM対応のスマートフォンや業務用デバイスにインストールするだけで、その端末が内線電話や社内AIエージェントへの音声接続に対応します。IT部門が発行したQRコードを社員がスキャンするだけでeSIMがアクティベートされ、VoLTE機能で内線通話が使えるようになります。
ご注意事項
- 110・118・119等の公共緊急通報への接続には対応していません
- すべての音声セッションは、SORACOMとご契約のお客さまのアカウント範囲内で完結します
本サービスのご利用には事前申請が必要です。ご利用をご希望の方は、お問い合わせフォームより「SORACOM Air RTC Gatewayを利用したい」旨ご連絡ください。ご利用用途(接続先・デバイス・想定通話量など)をお伺いした上で、個別にご案内します。
IoTと音声がシームレスにつながることで、現場の課題解決はさらに次のステージへ進みます。皆さんのアイデアで、音声を使った新しいIoTのユースケースを一緒に形にしていきましょう!まずはお気軽にご相談ください。
― ソラコム 渡邊(dai)


