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コネクテッドカーの通信課題、SORACOMはどう解くか——SORACOM Automotive Suite のご紹介

こんにちは。ソラコムのAutomotive/MVNEチームでSAを担当しているdai(渡邊)です。
先日開催された SORACOM Discovery 2026 で、自動車業界向けの新しいソリューション「SORACOM Automotive Suite」を発表しました。本ブログでは、コネクテッドカーが抱える通信の課題を整理しながら、今回提供を開始した機能 -マルチPDNサポートと SORACOM ダウンストリーム課金プラットフォーム -について詳しくご紹介します。

コネクテッドカーは「複数の通信ニーズ」を1台で抱えている

コネクテッドカーに求められる通信は、スマートフォンとは根本的に異なります。1台の車両の中に、まったく性質の異なる複数の通信シナリオが同時に存在するからです。

  • アプリからのコントロールや状態管理 —— ドアのロック・アンロック、バッテリー残量確認など、OEM(自動車メーカー)のバックエンドと車両をつなぐ通信
  • インフォテイメントやIn-Car Wi-Fi —— 車内でドライバーや同乗者がコンテンツを楽しむ、データ消費量の多い通信
  • ファームウェアやAIモデルの更新 —— OTAによる大容量ファイルの配信
  • オペレータとの通話や緊急通報 —— 音声・ビデオ通話、緊急時の eCall

これら4つのシナリオは、要求するネットワーク品質もデータ量もコスト構造も、まったく異なります。車両制御システムは信頼性と秘匿性が最優先、In-Car Wi-Fiはエンドユーザーが使った分だけ課金したい、ファームウェア更新は大容量を効率よく —— という具合です。

そしてさらにやっかいなのが、「これらを世界各国で10年以上に渡る車両のライフサイクルを通じて提供し続けなければならない」という点です。これら全てを一つのSIM・一つの通信モジュールで実現し、国ごとに異なる規制・ネットワーク・コスト環境に対応しながら継続運用することは、自動車メーカーやサービス事業者にとって大きな負担となっています。

SORACOM Automotive Suiteは、この課題に正面から向き合うために設計されました。

新機能1:マルチAPN – 1枚のSIMで複数の通信セッションを独立管理

従来のIoT SIMは、1枚のSIMに対して1つのAPN(Access Point Name) を使って1つの PDN(Packet Data Network)接続を利用するのが基本でした。しかしコネクテッドカーでは、「自動車制御システム」「音声・ビデオ通話機能」「In-Car Wi-Fiインフォテインメント」が同時に、かつ独立して通信する必要があります。

マルチAPN は、1枚のSIMで複数の通信セッションを同時に確立できる機能です。それぞれのセッションは独立したPDN接続を持つため、以下のような運用が可能になります。

  • 自動車制御システムのトラフィックはVirtual Private Gateway(VPG)経由で閉域網に接続し、OEMバックエンドと直結。外部インターネットとは完全に分離したセキュアな通信路を確保
  • In-Car Wi-Fiのトラフィックはインターネットへ直接抜け、エンドユーザーの利用量を個別に計測
  • 音声・ビデオ通話は独立したPDN接続で処理

これまで「複数SIMを搭載したり、用途ごとに別の通信デバイスを用意したりする」ケースもありましたが、1枚のSIMで解決できます。

また、通信宛先ごとの通信量を個別に集計する Detailed Stats(詳細な通信量集計) 機能 と組み合わせることで、「自動車メーカーが車両にアクセスするための通信」と「エンドユーザーによるインフォテインメント等の通信」の利用量を明確に分けて扱えます。これが後述するダウンストリーム課金プラットフォームの基盤になります。

新機能2:SORACOM ダウンストリーム課金プラットフォーム – エンドユーザーへの通信課金を、OEMが自由に設計できる

コネクテッドカーの通信ビジネスにおいて、OEMが本当に難しいと感じるのは「通信の課金をどう設計するか」という問題です。

  • In-Car Wi-Fiを乗客が使った分だけ課金したい
  • 月額プランと従量プランを使い分けられるようにしたい
  • 通信量の上限に達したら追加データを購入できるようにしたい
  • 請求書発行や決済はOEM自身のブランドで行いたい

これらをゼロから自社で構築しようとすると、料金計算エンジン・請求書発行・決済基盤・通信制限ロジックを個別に開発・運用することになります。

SORACOM ダウンストリーム課金プラットフォームは、これらの課題を解決します。

通信宛先別の利用量計測と自由な料金モデル設計

Detailed Statsと連携し、通信宛先やユースケースごとに利用量を個別計測します。OEMは、例えば「In-Car Wi-FiはGB単位の従量課金」「音声通話は月額固定」といった、用途別の料金モデルを自由に設計できます。また、それ以外にも特定のアプリケーションに対する課金をキャンペーン等で割引したり、プレミアムオプション等でIn-Car Wi-Fiサービスを基本サービスと分けるといったサービス設計が可能となります。

エンドユーザーへの請求・決済

エンドユーザーへの請求書発行と、OEM独自のペイメントゲートウェイを通じた料金徴収をサポートします。エンドユーザーが目にするのはあくまでOEMのアプリ・ポータルであり、SORACOMはその裏側で課金の仕組みを担います。

利用量に応じた通信制限と追加データ購入

設定した利用量の上限に達した際の通信制限や、エンドユーザーが自分でデータを追加購入できる仕組みも標準で備えています。「無料枠を超えたら速度制限、追加購入で回復」といった体験を、In-Car Wi-Fiサービスでも実現できます。

番外編:長期稼働を支えるeSIM管理 – SORACOM Connectivity Hypervisor(SGP.32)

マルチPDNサポートとダウンストリーム課金プラットフォームが「車両が走り続ける間の通信」を支えるとすれば、どのキャリアのProfileで通信するかという問題は別の層にあります。

製造時に書き込んだSIMのProfileが、10年後の法規制変更や事業環境の変化に対応できるか——これはコネクテッドカーにとって避けられない課題です。SORACOMは SORACOM Connectivity Hypervisor を提供しています。GSMAのeSIM新規格SGP.32に準拠し、1枚のSIMに載せるProfileをOTA(Over-The-Air)で遠隔から追加・切替・削除できます。

  • 出荷時はSORACOM回線でそのまま接続
  • 現地規制の変更時には現地キャリアのProfileに切り替え
  • 廃車・転売時には不要なProfileを削除

これにより、製造から廃車まで車両のライフサイクル全体を通じた通信管理が実現します。

SORACOM Automotive Suite として、ひとつのソリューションに

今回ご紹介した機能は、SORACOMが提供してきた既存の機能と組み合わせることで、コネクテッドカーに必要な通信基盤を一元的に提供するSORACOM Automotive Suiteを構成します。

機能役割
SORACOM Air: Global Connectivity + マルチPDNサポート + Detailed Stats世界各国でのマルチセッション通信基盤と用途別利用量集計
SORACOM Connectivity Hypervisor(SGP.32対応)eSIM/iSIMによる長期ライフサイクル管理
Virtual Private Gateway自動車制御システムの閉域網接続と柔軟なアクセス制御
SORACOM ダウンストリーム課金プラットフォームエンドユーザーへの料金設計・請求・決済
SORACOM Enterprise Support(24時間365日障害対応)車両稼働を止めないサポート体制

そして全体を通じて、OEM自身のブランドで統合されたユーザーエクスペリエンスを提供できることが、このスイートの設計思想の根幹にあります。


本サービスの料金は、対象車両数・展開地域・想定される通信ユースケースに応じた個別見積りとなります。ご利用をご希望の方は、お問い合わせフォームより「SORACOM Automotive Suiteを利用したい」旨ご連絡ください。

― ソラコム 渡邊(dai)