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文章校正に便利!ドキュメントの読み上げが無料で使えるMicrosoft Edge

こんにちは、ソラコムのテクノロジー・エバンジェリスト 松下(ニックネーム: Max)です。

エバンジェリストとはセミナーや執筆を通じてIoTの活用方法や最新事例、IoTで使える技術を多くの人に知っていただく役割を担っています。最近はブログ等のオンラインメディアでの情報発信が中心となり、文章を執筆する機会が増えました。

その際、私が執筆の技として使っているのが、ウェブブラウザの一つ「Microsoft Edge」による音声の読み上げ機能による文章校正です。私と同様にブログ等の記事を書く方に向いているTipsとして、ご紹介します。

MaxのTipsとは?
この記事は「MaxのTips」というカテゴリーが割り当てられています。これは、私(Max)がエバンジェリストとしての活動の際に得たTips(ヒントや技)を紹介するカテゴリーです。
IoTのハードウェア開発を便利にするツールや、ラズパイのmicroSDの選び方といったIoTに関連する情報から、PowerPointによる動画の作り方ライブデモの方法を紹介しています。他のMaxのTipsはこちらからご覧ください。

「読み上げ」による校正の効果

文章が良い内容でも誤字・脱字があると読みづらかったり、内容の信頼度が下がってしまうため、修正作業である「校正」が欠かせません。誤字・脱字は執筆者自身では気づきにくいことから、他の方に依頼するのが一般的なのですが、量が多くなってくると校正側も大変となってしまうため、できる限り執筆者自身で校正できるのが望ましいです。

校正は読み上げ文章を聞くことで効率が上がるという研究結果(浅野・横澤 2005)があり、音読できるのが良いのですが周囲の環境によっては難しい場合もあります。そこで、Microsoft Edgeに読み上げさせて校正をするというのが今回のTipsです。

このブログの執筆において「読み上げ機能」を利用したところ、12か所の誤字・脱字を自分自身で発見できました。効果はかなり高いと感じています。

Microsoft Edgeの読み上げ機能: デモ

こちらのデモ(約40秒の動画)をご覧ください。
音が重要ですので、スピーカーの音量に気を付けつつ再生してください。

Microsoft Edgeの音声読み上げ機能のデモ

とても流暢ではないでしょうか。
“SORACOM” や “Raspberry Pi” といった固有名詞の読みや間の取り方、そして日付の “(月) ~” を「月曜日から」と、人間が意図している通りの読み上げをしてくれます。

これは、Microsoft Edgeに標準でついている、音声の読み上げ機能です。あらゆる人がWebを使えるようにする「Webアクセシビリティ」の機能の1つになります。

Microsoft Edgeの読み上げ機能: 使い方

ここからは実際に利用する方法を紹介します。

音声読み上げ機能は、Microsoft EdgeのWindows版、もしくはmacOS版で利用できます。
ご利用のOSに合わせたMicrosoft Edgeをインストールしてください。

読み上げ機能はメニュー内にあります。アドレスバーの右のメニューアイコンの中にある「音声で読み上げる」が、読み上げ機能です。

Microsoft Edgeの「音声で読み上げる」メニュー

試しにYahoo!ニュースを開いてから「音声で読み上げる」を始めてみましょう。 “主要”から読み上げが始まります。

読み上げている様子:読み上げ対象の段落と、読んでいる部分がハイライトで表示される

音声の読み上げが始まると、ブラウザ上部にコントロールバーが表示されます。ここで読み上げの停止/再開や、読み上げ対象の段落を前/後に移動できます。読み上げ機能を停止したいときは、コントロールバーの右の×ボタンです。

読み上げ機能のコントロールバー

場所を指定した読み上げ

読み上げの順序は、HTML内の構造と情報の登場順によります。
希望するところを読み上げさせたい場合は、コントロールバーで読み上げ位置を移動していく方法の他に、読み上げ中に「マウスでクリック」することで、その場所にジャンプできます。

読み上げ中に別の位置をマウスでクリックして指定

また、読み上げたい場所を右クリック(macOSなら2本指でクリック)して表示されるメニューの「音声で読み上げる」で、そこから読み上げを始めることができます。
※ メニュー内に「音声で読み上げる」が表示されない場合は、コントロールバーで読み上げ機能を停止してから、再度右クリックしてみてください。

右クリックのメニューから読み上げ位置を指定

選択したテキストのみを読み上げさせることもできます。
ただし、一部のコンテンツ(例えばWordPressの編集画面)では、選択したテキストに対して読み上げメニューが表示されませんでした。条件は不明ですが、段落近くの右クリックでは読み上げメニューが出たので、多少工夫すれば編集画面でも読み上げをさせることができます。

WordPressの編集画面における読み上げ位置の右クリックメニュー

読み上げ順序とHTML5
HTML5では<main><header>といったタグで文書構造を指定できるようになりました。これらによって、例えば<main>タグ内を最初に読み上げさせたりと、何が「中身」かを明示できるようになっています。このようなタグの使い方は、SEO(検索エンジン最適化)だけでなくアクセシビリティ向上になるため、積極的に使って多くの人に読まれるWebコンテンツを作りたいものです。

読み上げ速度の変更と文字数

コントロールバーの音声オプションでは、読み上げ速度と音声を選択できます。

読み上げ機能の音声オプション

約300文字を読み上げさせた時間は、それぞれ以下の通りでした。

速度読み上げにかかった時間対 “標準” 速度音声ファイル
標準60秒100%
中間 (標準 +2)40秒150%
速い (標準 +4)30秒200%
遅い (標準 -2)120秒50%
約300文字の読み上げ時間

中間(標準から+2した位置)あたりが、自然な読み上げのように聞こえます。慣れてきたら標準+3でもよいでしょう。

テストで読み上げさせた文章 (3段落、297文字)

群馬県の中小製造業10社が、はじめてのIoT活用に挑戦

群馬県は輸送機械、化学、業務用機器などの製造業が活発なエリアです。中小規模の企業も多く、現場では熟練の技術者が若手へ技術指導を行い、ノウハウを受け継いでいます。

昨今の高齢化に伴う労働人口不足の影響もあり、地場の製造業においてもデジタル化による省力化や、1人あたりの生産性を高める効率化の必要性が高まっています。群馬県でIoT活用を支援する、スマーティエ代表の茂原さんによると、製造業とひとくくりに言っても業務も抱えている課題も各社各様で、 顧客が課題感を感じていても、どのようにIoTを活用し業務改善を進めれば良いのか分からない、という声も多いということです。

中⼩製造業による「はじめてのIoT活⽤」着手のポイントと効果を事例で紹介 〜群⾺県IoT講座レポート〜 より

音声の選択

オプションで別の音声も選択できますが、「Microsoft Namami Online (Natural)」が良いでしょう。これは、クラウドを利用して読み上げているため、自然なイントネーションとなるためです。他の音声(例えば Microsoft Ayumi)と比較してみると、イントネーションの違いがすぐにお分かりいただけると思います。

読み上げ機能によるクラウドとの通信
”Online (Natural)” と表示されている音声による読み上げは、Microsoftとの通信が発生するようです。暗号化(TLS)されているため内容は見ることができませんが、そのような通信が発生することは気に留めておく必要があります。詳細はMicrosoft Edgeによる「読み上げ機能」の通信先をご覧ください。

読み上げ可能なのはウェブページとPDF

Microsoft Edgeで読み上げ可能なのはウェブページとPDFです。
ウェブページはHTMLのタグによって順序良く読み上げてくれますが、PDFは読み上げ順序が変になったり、改行位置によって別の単語として認識されることがあります(例えば “一<改行>般的” を “いちぱんてき” と読み上げたりする)。

これは一般的なPDFには文書構造が存在しないため、「どこを読めばいいのか」「どこまでが1単語、1段落なのか」といった判別が難しいためです。最近は構造化PDF(タグ付きPDF)が規格化されているため、今後は改善されるかもしれませんが、現時点でのPDFの読み上げは少し精度が落ちることを留意しておきましょう。

おわりに

パソコンディスプレイは校正に向いていないという研究結果(福田・内山 2015)があります。すなわち、ブログを書いている画面では、誤りを見つけにくいわけです。(また、紙に印刷すると誤字・脱字に気づきやすいという経験の裏付けですね。)

今回はMicrosoft Edgeの「音声読み上げ機能」を紹介しました。このような機能がブラウザの標準機能として、しかも無料ということに驚くばかりですが、より良い文章作りに利用できるのではないでしょうか。

また、ブログの書き方自体も知りたいという方は「技術ブログ」の書き方も併せてご覧ください!

それでは良いツールで、良いブログ、良いアウトプット生活をお送りください!

参考・引用文献

― ソラコム “Max” 松下享平 / Twitterやってます(@ma2shita)、ご感想やご意見をお待ちしております!