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オンラインイベントの登壇者や企画担当なら知っておきたい!安価に実現できる高品質な音声・映像ノウハウ

こんにちは、ソラコムのテクノロジー・エバンジェリスト 松下(ニックネーム: Max)です。

このブログではオンラインイベントの登壇者や、登壇依頼や調整をするイベント企画担当の方に向けて、高品質な音声や映像を安価に実現する方法や機材について紹介します。
普段から登壇されている方だけでなく、登壇回数がそれほど多くない方でも費用の負担を抑えて始められる内容を中心としました。

ますます増えるオンラインイベント

エバンジェリストは、セミナーや執筆を通じてIoTの活用方法や最新事例、IoTで使える技術を多くの人に知っていただく役割を担っています。私も多くの機会をいただき、通算で400回を超える登壇をしてきました。近年ではイベントのオンライン化がすすみ、セッション登壇もオンラインで行うことが多くなりました。

何度かオンライン登壇を経験して得られたことが「発表内容を快適に聞いていただくためには、音や映像の品質向上が不可欠」ということです。
登壇がメインの仕事であれば音や映像の品質を上げるための投資もできますが、年に数回の登壇となるとそこまで費用がかけられず、ノートパソコンのカメラとマイク、すなわちオンライン会議の品質で登壇するケースもあるのではないでしょうか。

このブログでは、最終的に以下のように品質を改善できます。私も普段から使用している機材ばかりです。参考になれば幸いです。

パソコンから(Before)と、本ブログで紹介した機材で構成した場合(After)の比較

“オンライン会議感” の課題とゴール

音が途切れたり、周辺の環境音が入ってくるような音質だと、聴講者は集中力が維持できずに疲れます。また、ジェスチャーも表情もない登壇者の映像は、説得力どころか得られる情報が何もないコンテンツとなってしまいます。
オンラインの会議であれば聞き直しや、理解状況に応じて後から補足することもできますが、登壇の場合は満足度の低下や離脱に直結します。ここがオンライン会議との異なる点です。

まとめると、以下2つのポイントをクリアすることでオンライン登壇の品質になると言えます。

  1. 聴講者が聞いてて疲れない音質
  2. 登壇者の “表情” が届けられる映像

ここからは、目的に応じた機材を紹介していきます。

今すぐできる!ノイズ抑制と「登壇者の表情」の向上 (約6,000円)

まず、聴講者が聞いていて疲れない音質づくりですが、一番効果があるのが「ノイズを減らす」ことです。

そこで紹介する構成がこちらです。ノイズ抑制と共に、登壇者の表情を向上できます。

役割機材 / 設備価格備考
マイクパソコンの備え付けマイク
ノイズ抑制Krisp12USD/月
(約1,300円)
年間契約で60USD/年
いつでも無料枠に変更可能
クリッカーコクヨ / ELA-FP1 “黒曜石”約3,900円
ノイズ抑制と「登壇者の表情」を向上 (金額は執筆時の概算 / 送料別)

ノイズへの対策は、ノイズキャンセル機能がついているマイクや、防音設備が考えられます。また、最近はZoomやGoogle Meetといった会議ツール自体にノイズキャンセル機能が付きました。それでも他のツールの利用や、パソコンで動画収録を行う場合にはノイズ抑制をするための機材や設備が必要となり、費用が掛かります。

Krisp「ノイズキャンセル ソフトウェア」

ここで紹介しているKrispは「ノイズキャンセル ソフトウェア」です。パソコンにインストールするだけで、マイクから入ってきた音声のうち、ノイズのみを抑制できます。

その実力は、以下の動画をご覧ください。パソコン内蔵マイクを使っている中でキーボードのタイプ音や、機械の動作音、そして救急車のサイレンといったノイズがある状況で、KrispのON/OFFを比較しています。

実はノートパソコンのマイクは集音性能が高いため、登壇で使っても問題はありません。しかし、その性能の高さから、小さな環境音までノイズとして拾ってしまいます。そこでKrispと組み合わせることで、パソコン内蔵のマイクを登壇で使えるようになるわけです。

一点注意があるとすれば、Krispは人間の音声は通します。よって、自分以外の人の声も拾ってしまうため、人がいない環境で利用する、もしくは後述する「ヘッドセット」の併用を検討してください。

Krispはサブスクリプション型のソフトウェアで、WindowsとmacOSに対応しています。
月次支払いで12USD/月(約1,300円)、年間の一括払いで60USD/年(約6,550円)となっています。120分/週の無料枠もあり、またサブスクリプションはオンラインで即時適用できるので、例えば登壇時だけ月次払いにして、翌月には無料枠に戻すことも可能です。オンライン会議でも役立つため、普段使いとして契約するのも良いでしょう。ちなみに私は年額で払っています。

Krispの設定や動作の仕組みについてはこちらをご覧ください。

マイク付きイヤホンや、ヘッドセットの利用は?
オンライン登壇では、マイク付きイヤホンやヘッドセットの利用が推奨されるケースも多くなりました。これはハウリング防止のためであり、ノイズ抑制とは別の目的です。特にマイク付きイヤホンはマイクとの衣擦れ音がノイズ源となったり、見た目を考慮したケーブルの取り回しが必要となるため、もし利用するならば、ヘッドセットとKrispの組み合わせがおススメとなります。

クリッカーの利用で「登壇者の表情」作り

続いては、登壇者の “表情” が届けられる映像の作り方です。

プレゼンテーションは「登壇者の表情」によって説得力が増します。この表情というのは顔だけでなく、声のトーンやジェスチャーも含まれます。一方で、スライド送りをパソコンで行おうとすると、近すぎるために顔だけが映り、ジェスチャーを見せることが困難となります。

ここで使えるのがクリッカー(スライド送りボタン機器)になります。
スライド送り操作のためにパソコンを手元に置く必要が無くなるため、上半身を映し出せる位置にパソコンを移動できます。その結果、ステージ登壇のようなジェスチャーを見せることができるわけです。

再掲:パソコンから(Before)と、本ブログで紹介した機材で構成した場合(After)の比較

以下の例では、段ボールを利用して若干位置を上にしてから距離を70cm程度離すことで、パソコンのカメラでも上半身が映るようになりました。この位置ではパソコンに手は届きませんが、クリッカーでスライド送りは可能です。

パソコンのカメラで上半身が映るように位置を調整

クリッカーは気に入ったものを利用すれば問題ありません。ちなみに私はリストに挙げた “黒曜石” を5年ほど使っています。クリッカーはステージ登壇でも使えるため、持っていて損は無いでしょう。

一点注意は、パソコンのマイクを利用する場合は距離が離れますので、若干大きめの発声が求められます。リハーサル時の音量チェックは入念に行いましょう。

外付けWebカメラで3つの改善 (+約2万円)

ここまでで紹介した構成でも十分に登壇いただける品質となりますが、外付けWebカメラを追加で導入することで「光量調整の手間」「バーチャル背景の切り抜き」「表情作りの手間」の3つが一度に改善できます。

自宅の部屋等で撮影する場合、時間帯や環境で光量が変化するためライトアップ機材で調整をします。一方で、最近のWebカメラは画質や感度が高く、自動調整もされるためライトアップが無くともキレイな映像となります。そして、画質が高いとグリーンバックのような設備が無くともバーチャル背景の判定が良くなり、人物だけをキレイに切り抜いてくれる効果もあります。

外付けWebカメラが、カメラ業界標準の “1/4インチネジ” に対応していると市販の三脚など取り付け機器を使うことができるため、設置の自由度が格段に上がり、先ほど解説した登壇者の表情作りが簡単になります。

このように、外付けWebカメラはライトアップ機材やグリーンバックといった設備を不要にでき、また、設置に汎用品が利用可能な事を考えると、総合的な費用対効果は高いといえるのでは無いでしょうか。
リストに挙げた外付けWebカメラは、これら3つの条件を満たすものとして紹介しています。

役割機材 / 設備価格備考
外付けWebカメラLogicool / C980約18,500円1/4インチネジによるマウンター付き
※USB Type-Cであるため、パソコン側のUSBポートを
ご確認ください
三脚Ulanzi / SK-04約2,200円1/4インチネジによるマウントが可能な自由雲台
(ボール形状による向きの設定が自由な取り付けパーツ)付き
外付けカメラで設置の自由度を向上 (金額は執筆時の概算 / 送料別)

また、リスト内の三脚は750gと軽量ながら丈夫で折りたたむことができ、持ち運び用ケースもついています。光量と背景はカメラで解決し、この三脚で上半身を映し出す位置決めも簡単にできます。これらは全て持ち運びできるため、あとは電源とネットワークが用意できれば外出先からでも登壇可能です!

私は実際に、この構成で何度か外出先から登壇しました。

ヘッドセットで自分の声を確実に届ける (+約2万円)

オンライン登壇においてノイズ抑制は最重要課題と解説してきました。そして、対策としてのKrispは人間の声は通すため、人がいない環境で利用するという方法を紹介しました。

追加で検討したいのがヘッドセットです。ヘッドセットはハウリング対策にも使えますが、マイク付きイヤホンでありがちな「衣擦れ音」の心配が無く、また、マイク周辺の音のみを集めるためノイズ対策にも有効です。また、Krispと組み合わせることで、確実に自分の音声だけを届けることができます。

リストに挙げたAfterShokz OpenCommのマイクは、単体でノイズキャンセル機能を搭載しており、また、マイクの半径5~7cm程度の人間の音声のみを拾うようになっています。約2万円とヘッドセットとしては高価ですが、普段のオンライン会議でも利用できることを考えれば費用対効果は高く、また、いつも使っている機材で登壇できるのは、心理的な安心感もあります。

役割機材 / 設備価格備考
ヘッドセットAfterShokz / OpenComm約20,000円
ヘッドセットで自分の声を確実に届ける (金額は執筆時の概算 / 送料別)

OpenCommのマイク性能はこちらの動画をご覧ください。

私の家は救急車が良く通る道沿いにあるのですが、KrispとOpenCommの組み合わせを使い始めて以来、サイレンの音といったノイズが入ったというフィードバックを受けたことはありません。

ここで紹介した機材一覧

これまで紹介した機材を、改めて一覧にしました。すべて揃えた場合は約5万円となります。

役割機材 / 設備価格備考
ノイズ抑制Krisp12USD/月
(約1,300円)
年間契約で60USD/年
いつでも無料枠に変更可能
クリッカーコクヨ / ELA-FP1 “黒曜石”約3,900円
外付けWebカメラLogicool / C980約18,500円1/4インチネジによるマウンター付き
※USB Type-Cであるため、パソコン側の
USBポートをご確認ください
三脚Ulanzi / SK-04約2,200円1/4インチネジによるマウントが可能な
自由雲台(ボール形状による向きの設定が
自由な取り付けパーツ)付き
ヘッドセットAfterShokz / OpenComm約20,000円
機材一覧 (金額は執筆時の概算 / 送料別)

おわりに

イベントのオンライン化はニューノーマルの一つです。
新しい生き方、働き方に対して投資は必要ですので、効果の高いものを揃えたいものです。そこで私の経験と実績から、最小限の投資でオンライン会議とは一味違った “登壇” をするための機材を紹介してきました。最初の約6,000円の構成でも十分な成果が得られるでしょう。そして、必要に応じて買い足すことができます。これらは普段の会議でも役立つものばかりですので無駄にはなりません。是非活用ください!

また、オンライン登壇に向けた情報として「オンライン登壇のコツ」や「PowerPointを使った動画の作り方」も紹介しています。併せてご覧ください。

外付けWebカメラの章でも解説しましたが、機材はすべて持ち運び可能で、あとはネットワークと電源の用意です。この件については機会を見て別途紹介します。

このブログが皆さんの良い発表へつながれば幸いです!

― ソラコム “Max” 松下享平 / Twitterやってます(@ma2shita)、ご感想やご意見をお待ちしております!