みなさま、こんにちは。
ソラコムでは、IoT技術へこれから取り組まれる方と、既に活用している方が相互に学びあう勉強会として「SORACOM IoT Meetup」を開催しています。今回は第4回「LINE通知を使いこなそう!」の開催報告として、当日の学びを振り返っていきたいと思います。
すべてのモノがインターネットにつながる「IoT」の活用シーンは一層の広がりを見せており、製造、建設、運輸、小売、自動車、エネルギー、医療介護、農業、地域防災などなど、多くの業界で利用されています。代表的な活用目的として「現場を見える化し、現場を動かす」というテーマがありますが、ここで欲しくなってくるのが「通知を受けるためのアプリケーション」です。
私は通知というとEmailでの通知をまず最初に思い浮かべる世代ですが、お客様に伺うと、既存の業務アプリケーションへの通知やSMS通知、そしてLINEへの通知、と通知先のニーズは多岐に渡っています。
今回はその中でもニーズの高い、LINEへの通知に絞って勉強会を開催しました。
IoTとLINE連携の事例紹介
まずはソラコムから、IoTの現場で利用されるLINE連携事例を3つご紹介しました。
鳥獣のわな作動通知システムからLINE通知
農林水産省から発表されているデータによると、野生鳥獣による農作物被害は年々減少はしているものの約158億円(令和元年度)と高水準です。また、この被害から営農意欲をなくしてしまう方も少なくないということで、各市町村が中心となり様々な被害防止の取り組みを実施されています。
その取り組みを積極的に情報公開されているのが、農林水産省の地方支分部局の九州農政局です。
害獣を捕えるための罠は山中に設置し、定期的な見回りが必要です。一方で担当される方々の高齢化もあり、見回り等の労力軽減のために、従来よりIoT化が提言されていたのですが、高価で導入が難しいとの意見も多く、普及していませんでした。
「安価、そして便利な見回り」を実現するために、地域で実績のある仕組みを元に「IoTによる “わな通知機” の製作ガイド」を公開したそうです。通知先に普段から利用しているLINEを使うことで操作学習も不要にできた他、その後のコミュニケーションにも役立ち、被害対策の効率化と連帯感の向上につながっているとのことでした。
仕組みの詳細と制作ガイドは九州農政局様のサイト(国立国会図書館の保存ページ)に掲載されています。
利用するデバイスとサービスとしては、IoT向けのセルラー通信機能と3種類のクリックに応じたセンサー情報送付が可能なSORACOM LTE-M Button Plus、そしてクラウドへのデータ転送を支援するSORACOM Beam、クラウドサービス同士のデータ連携を支援するIFTTT、そしてLINE Notifyの機能となります。
外部スイッチ信号を連携させた在宅患者の連絡ツールとしてLINE通知
ほぼ同様の構成で活用されている事例が、総合せき損センター様の事例となります。
脊髄損傷の患者さんと医療従事者の方、ご家族をつなぐための活用。ナースコールが押せない症状の方であっても顔の表情を動かすことでセンサーが検知して適切な連絡が可能です。このケースでも受信者が望む方式としてLINE通知が重宝されています。
SORACOM LTEM Button にはLTE-Mという省電力のLTE通信が内蔵されていることから、ネットワークの準備をせずとも通知の仕組みが使えるという事で、設置の手間も不要にしているのが導入の障壁を下げています。
センサーデータをLINE通知、さらに遠隔からLINEでシステム制御
さらに、LINE通知からもう一歩踏み込んだ事例もあります。
こちらでは通知の受信に加えて、遠隔地にある機器の制御もLINEから実施できるようMessaging APIとリッチメニューによる開発をしているとのことです。
LINEに通知する2つの手法の技術解説
事例に続いては、実際に使うために必要な知識を共有していきます。
LINE株式会社 テクニカルエバンジェリスト 河本さんからは「IoTデバイスからLINEへ通知する方法は、大きく2つある」と解説いただきました。
LINEへの通知方法の1つ目は、個人でも手軽に利用できるLINE Notifyの利用、そして2つ目はLINE公式アカウントとセットで充実した連携機能の開発が可能なMessaging APIの利用です。特にLINE Notifyは無料で利用できるため、多くの方が気軽に試すことができます。Messaging APIはLINE公式アカウントと連携し、カスタマイズされた独自の動きを追加するためのAPIとなります。LINE公式アカウントは、飲食やアパレル、自動車メーカーなどがお客様とコミュニケーションをするために使うアカウントとなります。
皆さまのLINE上でも日常的に目にする機会が多いと思いますが、各メーカーごとに違った画面や機能が提供されているのは、このMessaging APIを利用したカスタマイズによるものだと言うことがわかりました。
LINE API プロダクト
・LINE Notify
・Messaging API (LINE公式アカウントとセット)
・LINE Front-end Framework ( 略称 LIFF : リフ)
最後にLINEチャット上にウェブアプリを表示する機能を開発するためのフレームワークLINE Front-end Frameworkもご紹介いただきました。IoT現場でのLINE連携とは少し文脈が異なるので詳細は割愛しますが、LINE公式アカウントのカスタマイズがさらに柔軟になる便利なAPIプロダクトです。
ゲストによる「IoT×LINE」事例解説
冒頭ではソラコムよりIoTとLINE連携の事例をご紹介しましたが、加えてゲストの方からも事例紹介をいただきました。
地域の浸水情報をLINE通知する防災IoT事例
まずは「自社技術とLINE通知を組み合わせた防災商品の開発」というテーマで、亀岡電子株式会社商品開発部マネージャー 澤田 晃仁さんに事例をお話いただきました。
自社の浸水被害の経験、そして浸水被害が頻繁に発生する地域にて実施したヒアリングによる事前調査。そして、市⺠が求めている「身近な場所の浸水情報」に絞ってLINEが通知する仕組みを構築されました。LINE通知の方式としては「Massaging API」の利用で、LINE公式アカウントを介してユーザーへLINE通知を実施しています。具体的な活用イメージもご説明いただきました。利用者にとっては必要な情報にたどり着くまでLINEだけあれば完結する仕組みになっており非常に利便性が高いと感じます。
資料もPDFで公開していただきましたので詳細はご覧ください。自社の浸水被害の経験、そして浸水被害が頻繁に発生する地域にて実施したヒアリングから、市民が必要とする身近な場所の浸水情報に絞ってLINEが通知をしてくれる仕組みにたどり着いたということです。
最小限で実現するHACCP対策、温湿度をLINEに通知
続いて事例を共有してくれたのはLINE DeveloperコミュニティでLINE API Expertの認定を持ち、数々の取り組みを外部発信されている井上 陽介さんです。
今回はご実家の会社で対応必須となったHACCP(ハサップ)対応の業務効率化を目指した取り組み事例を共有してくれました。運用でかかる継続的な費用についても情報提供されていますので、具体的な取り組みを検討されている方にとって非常に有益です。
IoTデバイスからLINEで通知を受け取るまでをライブデモで紹介
最後に参加者を沸かせたのは、本日のテーマにそってIoTデバイスからLINEで通知を受け取るまでの流れをご覧いただくライブデモ。登壇者はソラコムのテクノロジー・エバンジェリスト 松下さん。
手元のカメラで投影している IoTデバイスの操作、PCブラウザで表示するSORACOMのユーザーコンソール画面、そしてスマホのLINE画面を切り替えながら巧みに映像配信することで、画面で見ているだけでも自分が操作をしているような体験が出来る充実のセッションでした。
IoT技術の活用シーンが一層の広がりを見せる中で重要性を増している、通知アプリケーション。使い手を選ばないLINEへの通知を体系的に学べる内容は非常に有益でした。登壇者の皆さま、参加者の皆さま、改めてありがとうございました。
動画と資料の公開
SORACOM IoT Meetup #4 は動画と資料が公開されています。こちらも併せてご覧ください。
ブログを書いてSORACOMオリジナルグッズを! “Try! SORACOM キャンペーン”
今回ご紹介したLINE通知の仕組みは、企業はもちろん個人の方でも利用可能です。身の回りのちょっとしたことを「LINEで通知」できるようになると、便利になるかと思います。
その時のチャレンジの様子をブログという形でアウトプットすると、より一層の学びになりますが、そのアウトプットを支援するのが「Try! SORACOM キャンペーン」です。
皆さんの「やってみた」をブログで公開いただき、フォームでエントリーいただいた方へもれなくオリジナルグッズをプレゼントいたします。この機会にブログにもチャレンジしてみませんか?
ブログ未経験でも大丈夫です。ソラコムでは「技術ブログの書き方」も無償で公開しています!是非チャレンジしてみてください!
ー ソラコム 伊佐(ニックネーム : martin)