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IoTプロジェクトの新潮流「コンテナOS」「内製化」その理由と活用 ― SORACOM Tech Days 2021 レポート

こんにちは、ソリューションアーキテクトの今井(factory)です。
2021年11月16日~17日に開催されたエンジニア向けカンファレンス「SORACOM Tech Days 2021」で、私が担当したセッション「IoTシステム開発の新潮流を探る!組込み向けコンテナOSと内製化支援の新スタイル」について、内容のおさらいと共に、私の所感を共有します。

IoTプロジェクトの初期「作業をせずに、価値を創造する」

セッションの冒頭では、私より「作業をせずに、価値を創造する」ということをご紹介しました。
IoTプロジェクトの初期段階でありがちなのが、全てゼロから作るというものです。それに対し、私たちは「存在するものを組み合わせて実現する」ことをオススメしています。

IoTは、デバイス、ネットワーク、クラウドとカバーすべき技術分野の範囲がとても広く、そのなかで生まれてくる技術トレンドや潮流も多岐に渡り、しかもゴールを模索しながらのプロジェクトとなる事が多いため、作る、即ち “作業” してしまうと、自分たちが作りたいものを作り切る前にビジネスやマーケットの事情が変わってしまい、作り直しもしくはいつまでたっても始まらないプロジェクトになってしまうからです。

「利用する」がスタンダードに

昨今ではRaspberry PiであったりArduino互換のマイコンなど、1個から手に入ってかんたんにプログラム可能なデバイス群であったり、費用面、時間面において初期投資をすることなく高度な処理を簡単に利用できるクラウドサービスがあり、「利用」がスタンダードになりつつあります。

ネットワークにおいても、初期投資をすることなく用途に合わせて様々な無線コネクティビティが1回線から利用可能なSORACOMを、やはり「利用」いただく事で、概念の実証やプロトタイプ開発をいますぐに始め、作業を最小限にしつつ価値を創ることができます。さらにIoTのパートナープログラム「SORACOM パートナースペース」には、テクノロジーやサービスを使って商用の IoT サービスを開発、運用することが得意な企業が数多く存在しており、プロトタイプのその先も相談(ある意味「利用」)できます。

デバイス、クラウド、ネットワーク、そして開発パートナーも充実してきていますので、これらをうまくご活用頂き、みなさまご自身が本当にやりたいことに時間と労力を割いていただけるようになってきている、というのがわたしたちソラコムが感じている(そしてさらにそれを充実させていこうとしている)ひとつの潮流と言えます。

セッションの後半ではIoTデバイスメーカーより、IoTシステム開発のプロフェッショナルとして活躍されているアットマークテクノの大澤さん、AWSを中心にクラウド活用とコンサルティングのトップランナーであるクラスメソッドの阿部さんに、それぞれの分野において「作業をせずに、価値を創造する」ために必要な考え方や、トレンドをお話しいただきました。

なんで今?IoTデバイスメーカーがコンテナOSを作ったわけ

まずはアットマークテクノの大澤さんより、IoTデバイスメーカーが「コンテナOSを作った」という内容です。
アットマークテクノは「Armadillo-IoTゲートウェイ」シリーズというゲートウェイ(中継器)の開発と販売をされており、ソラコムの認定済みデバイスパートナーでもあります。製品の特徴は、インターフェイスやセンサー、ネットワークをモジュールとして追加でき、要件に応じた拡張ができるハードウェアに加えて、そのハードウェアの操作をLinuxにて利用できる汎用性です。私はソフトウェアエンジニアなので「ハードウェアの制御がLinuxで制御&プログラミングできる」と紹介されると、とても親近感を持ちます!

IoTハードウェア向けコンテナ特化 OS 「Armadillo Base OS」

今回はArmadillo-IoTシリーズの最新版、G4のために新たに開発されたArmadillo Base OSについてのお話をして頂きました。Armadillo Base OSは、ユーザーアプリケーションをコンテナに包んで実行することに特化したOSと、コンテナ配信をするシステムを合わせたプラットフォームです。

クラウドの技術「コンテナ」をIoTデバイスに

Armadilloのような拡張性を持つハードウェア、そして柔軟性があるソフトウェアを両立するひとつの方法は、OSをそのままユーザーに触ってもらうという方法があり、現在の一般的な方法でもあります。
この方法は細部までコントロールできる反面、メーカー側が提供している仕組み、例えば死活監視やアップデートシステムまでもユーザーが操作できてしまい、意図せず何かを破壊してしまう可能性があるため、操作に高度な知識が求められてしまいます。

この問題を解決するために同社が選択したのは「コンテナ」でした。
コンテナはOS等のプラットフォーム環境とユーザーアプリケーションを分離でき、クラウドでは一般的になりつつある技術です。この仕組みをIoTデバイスに応用することで、ユーザーは何をやってもメーカー側のシステムが壊れないという安心感に加えて、いつもの開発環境を “利用” して作ったアプリケーションがIoTゲートウェイで動かすことができ、開発速度のメリットもあります。

Armadillo Base OS自体も、様々なソフトウェアを利用

Armadillo Base OS自体の開発背景も、大澤さんから紹介いだきました。
IoTデバイスは時として10年超といった長期間運用が求められ、汎用OSのサポート期間が切れてしまう可能性があります。加えて、ユーザーアプリケーションの頻繁なアップデートが発生したり、現場で電源が突然切られること(いわゆる電プチ)への対処をユーザーが対策しようとすると、非常に大変かつ高度な知識が必要となります。その結果「IoTデバイスメーカーの知見を盛り込んだ OS が必要では」というのが開発の背景でした。

とはいえ、Armadillo Base OS自体も様々なソフトウェアを “利用” して実現しているという解説をいただいています。ここは是非スライドや動画にて、皆さんの目でご確認ください。
アプリケーションのコンテナ利用はクラウドでは当たり前になってきていますが、今後デバイス上のアプリ開発でも当たり前になってくる可能性を見せてくれた、とてもエキサイティングなセッションでした!

クラウドインテグレーターが提供する「内製化支援」

続いてはクラスメソッドの阿部さんより、最近話題となり始めているキーワード「内製化」について解説いただきました。
クラスメソッドはAWSのコンサルティングパートナーとしてクラウド業界でも非常に存在感のある会社で、ソラコムの認定済みインテグレーションパートナーでもあります。コンサルティングもさることながら、Developers.IO というクラウドの知見が満載のブログが有名で「ブログの会社」と親しみを込めて呼ばれることもあります。

自社の課題を、自社で解決「内製化」

みなさんは「内製化」という言葉はご存じでしょうか?
IT導入や運用は難しいということで、社外のIT専門企業に外部委託するのが、この20年の一般的なITの活用スタイルでした。内製化は外部委託の逆、ITによる課題解決を社内で行うことを指します。

「内製化」の潮流が生まれた背景は2つあります。1つ目は「ITが簡単になり始めている」ことです。クラウドを中心にサービスや機能が使いやすくなっており、専門的な知識のハードルが下がってきています。2つ目は「スピード」です。ブログの冒頭でもご紹介した通り、私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、外部委託との調整をしている間に、IT導入の前提自体が変わってしまうこともあります。「自社の課題を、自社で解決」が可能になり始めているのが内製化の背景です。

内製化の外注…?答えは「伴走」

内製化にも課題はあります。それは社内にIT活用の知識を持つメンバーが必要なのです。そこで、内製化をすすめるための支援を外部にお願いする、そのコンサルティングをクラスメソッドでは提供しています。内製化を外注する…一見すると相反する、もしくは今までの外部委託との違いが見えずらいのですが、そこを阿部さんに解説いただきました。

クラスメソッドの内製化支援サービスは、お客様の代わりにものを作る/運用するのではなく、お客様自身のシステム作りや運用を、文字通り “支援” します。スポーツに例えるなら、クラスメソッドは「マラソンの伴走者」として、走り方やペース配分、補給タイミングを教えてくれる役割であり、最終的にはお客様(みなさん)自身が一人で走り続けられることにあります。

クラスメソッドはこれまでに非常にたくさんの(ほんとうにたくさんの)お客様のDXやクラウド上のアプリケーション開発をご支援されてきました。そのなかで多くのお客様の共通課題として見えてきていたのが「マーケットのスピードが上がってくる中で、システムの開発やライフサイクルが足かせにならないようにしたい、しなければならない」という想いを基に、お客様自らがITを理解し、手の内化し、そしてITで価値を模索し創造できるようになっていくことのお手伝いを「内製化支援」というサービス化するに至ったとのことでした。

「利用」でアイデアを形にするスピードを上げる

阿部さんのお話を受け、私なりに気が付いた点を共有すると、実現スピードのお話を多くされていたと感じています。
実際「スピードが大事」というのは大昔から言われていますが、昨今はこのスピードそのものがどんどん加速していってるのではないでしょうか。マーケットのスピードに対して、システム開発の速度が足かせにならないようにするのが、内製化のポイントでもありそうです。

一方で、AWSやGoogleといった大企業によってテクノロジーも加速度的に進化している今、”利用” することでアイデアをシステム化してビジネスチャレンジをするということが、やりやすくなっているのは追い風です。常にカッティングエッジなテクノロジーやサービスを活用してお客様の支援をされてきたクラスメソッドが、お客様のビジネスの加速そのものにフォーカスを当ててサービス化されたというのはそのひとつの現れかと思いますし、クラスメソッドはこの分野において間違いなく頼りになるパートナー様であることは間違いなさそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
IoTデバイスメーカーによるコンテナOSと、クラウドインテグレータによる内製化支援。一見すると関係が無さそうなトピックをまとめたセッションでしたが、私たち利用者側から見ると「利用することで、自分のビジネスのコアの部分にリソースを注ぐことができる」という共通点が見いだせたのではないでしょうか。

ソラコムでは「作らずに、創る」を実現できる製品やサービスを通じて、みなさんのIoTプロジェクト、特に初期段階を軽やかに駆け抜けるお手伝いができればと思っています。

このブログでは、今後もいろいろなお客様やパートナー様の製品やストーリーをご紹介していきたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました!(わたしも早くArmadillo Base OSを積んだG4を触ってみたい!)

動画と資料を公開!

SORACOM Tech Days 2021は動画と資料を公開しています。本ブログで紹介した内容の振り返りや、他のセッションについてもご覧ください!

― ソラコム 今井 (factory)