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IoTデバイス作りの裏側 ― LTE-Mの活用と製品開発の苦労と成功ポイント

IoTにおいて、現場のデジタル化を担う IoT デバイス・ハードウェアは不可欠な存在ですが、開発にはノウハウが必要な分野です。

今年7月17日に開催したIoTカンファレンス「SORACOM Discovery 2024」でのパネルディスカッション「IoTハードウェアの民主化で新規事業を成功に導く」では株式会社MIXIの佐藤氏、株式会社ONDの近藤氏、JENESIS株式会社の藤岡氏をお招きして、IoTデバイスの開発におけるリアルな体験談と成功への秘訣が語られました。

特に、LTE-Mの活用、デバイス作りの苦労、そして製品開発に役立った情報について多くの知見が共有されたので、ご紹介します。

オープニング ~ 自己紹介

セッションの冒頭では、モデレーターを務めるソラコムの滑川より「IoTハードウェアの民主化がいかに新規事業を支えているか、そのヒントを実践者から学ぶことにある」と、本セッションのゴールを解説しました。

その上で、ソラコムが2015年のサービス開始以来「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ」というビジョンを掲げ、数多くの大企業やスタートアップのビジネスを支えている背景を紹介しました。

左より:ソラコム 滑川、MIXI 佐藤氏、OND 近藤氏、JENESIS 藤岡氏

今回お招きしたゲストの皆さまは、以下のようなビジネスを展開されており、それぞれの立場からの意見交換をしました。

  • 株式会社MIXI 佐藤氏:「みてねみまもりGPS」は、親が子どもの現在地をリアルタイムで確認できることにより、子どもの安全を守るサービス。専用のGPSデバイスからアプリまでを一気通貫で提供している。
  • 株式会社OND 近藤氏:位置追跡ができる「IBUKI GPS」の開発・提供を行う。この情報を基に、トレイルランニング競技を安全かつ楽しめる様々なサービスを提供している。
  • JENESIS株式会社 藤岡氏:設計から製造、保守までをワンストップ対応できる、IoTデバイスの受託開発の事業(ODM)を展開している。MIXI社のみてねみまもりGPSも同社が手がけている

IoTデバイスがビジネスに与える影響

MIXI 佐藤氏は、親の「子どもの現在地をリアルタイムで知りたい」というニーズに応えることで、販売と顧客満足度を大幅に向上させたと述べています。また、OND近藤氏は、トレイルラン用GPS追跡サービス「IBUKI」で選手のリアルタイム位置追跡を可能にすることで、安全性の向上と運営の効率化、そして選手自身だけでなく観客等を巻き込むことができるエンターテイメント性の表現を実現し、ビジネスに大きく貢献したと述べています。

双方の共通点としては、Webでのサービス展開を得意としつつ、そのサービスやビジネスをさらに拡大する為にIoTデバイスを用いた点にあると言えるでしょう。

LTE-Mの活用で実現するリアルタイム追跡

セッションの中で特に印象的だったのは、LTE-M(省電力向け LTE)の活用に関する議論でした。MIXI 佐藤氏は「みてねみまりGPS」で、LTE-Mを活用していることを強調しました。この技術によりネットワーク環境に左右されることなく、スマートフォンと同じ感覚で子どもがどこにいるかをリアルタイムで把握することが可能になり、親にとっての安心感を大幅に向上させています。

MIXI 佐藤氏

OND 近藤氏も、「IBUKI GPS」で LTE-Mを活用していることを説明しました。過酷な環境下でも安定して位置情報を送信できるため、選手の安全を確保し、運営側がリアルタイムで位置を把握することが可能になります。これにより、トレイルランの運営は大きく変わり、選手の安全性が飛躍的に向上しました。

OND 近藤氏

ハードウェア開発の苦労と課題:バッテリー寿命と引き算のデザイン

ハードウェア開発における苦労も多く語られました。特に、「バッテリー寿命の確保」が大きな課題となることが浮き彫りになりました。MIXI 佐藤氏は「みてね見守りGPS」の開発において、バッテリーの持続時間と測位精度の両立が最大のチャレンジだったと述べています。ユーザーからは、頻繁な充電が煩わしいという声があり、その期待に応えるために、JENESISとの協業でLTE-Mの省電力性やバッテリー性能を最適化する努力が続けられました。

JENESIS 藤岡氏は「引き算のデザイン」の重要性を強調しました。IoTデバイスの開発では、多くの機能を詰め込むとバッテリー消費が増え、デバイスの寿命が短くなります。そのため、必要な機能を絞り込み、バッテリー消費を抑えることが鍵となります。ミクシィとの協力では、不要な機能を削減し、バッテリー消費を最小限に抑えることで、長時間使用が可能なデバイスを実現しました。

JENESIS 藤岡氏

製品作りに役立った情報と成功の秘訣

製品作りの過程では、情報収集と技術的な工夫が成功の鍵を握っていました。MIXI 佐藤氏は、顧客調査を通じて得たユーザーニーズを的確に把握し、それを製品開発に反映させることで、ユーザーに愛される製品を生み出すことができたと語りました。特に、親が求める「子どもの現在地をリアルタイムで知りたい」というニーズに応えることで、圧倒的な支持を得ることができました。

JENESIS 藤岡氏は、ハードウェア開発の際に重要なのは「単に高機能を追求するのではなく、実際の使用シーンに合わせた設計を行うことだ」と述べました。例えば、防水性能や耐衝撃性など、実際の環境に即した仕様をしっかりと設計に組み込むことが、製品の成功に大きく寄与したといいます。

OND 近藤氏の「IBUKI」の開発では、実際のレースでのフィードバックを基に、トレイルランナーのリアルなニーズに応える製品作りが行われました。選手の現在地をリアルタイムで把握するだけでなく、バッテリー消費を抑えるための設定変更や、山間部での通信問題に対応する技術的な工夫が重ねられました。

まとめ ~ IoTデバイスの民主化がもたらす未来

今回のセッションを通じて、IoTデバイス開発が決して簡単なものではないものの、民主化が進むことでスタートアップや中小企業にとっても、低コストで高機能な製品を開発するチャンスが広がっていることが見えたかと思います。

今回ご登壇いただいたJENESIS社をはじめ、ソラコムにはIoTのプロが集うパートナープログラム「SORACOM パートナースペース(SPS)」を通じて、皆さまのIoTデバイスのお悩みを解消していきます。お気軽にご相談ください

本基調講演の資料はSpeaker Deck で公開中です。他のセッションの資料も公開しています。是非ご覧ください。

― ソラコム松下 (Max)