みなさんこんにちは、ソラコムマーケティングの熊崎です。
先日行われた LoRaWAN Conference 2017のキーノートの講演を書き起こしブログをお届けします。当日来られなかった方、ご都合の合わなかった方に是非、新発表の詳細、ソラコムの思いを感じて頂ければと思います。
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LPWA のシェアリングエコノミー LoRaWAN共有サービスモデルの開始
玉川:所有モデルは便利ですが、無線資源は有限です。特にLoRaWANの無線のテクノロジーは、非常に距離が飛ぶので、将来的に闇雲に沢山のゲートウェイが立っていくことが、必ずしも良いことではないと思っています。最近の世界的な動向を見ても持続可能な社会に向けて、取り組んでいくことは、非常に重要な考え方です。ソラコムも設立当初からリーダーシップステートメントとしてこのような行動様式を大切にしようとしています。15個ある内の一つが、Avoid Mudaというものです。無駄なことは避けるという考え方です。
LoRaWANのゲートウェイは、例えプライベートモードであってもパブリックモードであっても、無線としてはデータを拾っています。考え方によっては、プライベートモードを使っていただくのも良いですが、パブリックモードにしていただければ、ゲートウェイを経由して、皆が自分に暗号化されたデータを届けることができます。
このことからLPWAのシェアリングエコノミーを考えました。所有するのではなくて、利用する。共有し、皆でWinWinを作っていく仕組みも考えられる、ということで今回、所有モデルと共に、共有サービスモデルを発表します。
所有モデルはお客様にゲートウェイを買っていただきお客様の所有物としてお客様の敷地内に置き自営のネットワークを張るという考え方です。それに対し共有サービスモデルは、SORACOMが持っているゲートウェイをお客様と契約し、サービスモデルとして提供します。ゲートウェイはSORACOMの所有物ですが、お客様の指定した敷地内に置き、それを使いお客様はデータを送ることができます。ただしゲートウェイはSORACOM所有物なので、パブリックモードになります。契約いただいたお客様が使えるだけでなく周りのお客様も、そのゲートウェイを使い実際にデータを送ることができるという考え方です。お客様自身には場所と電源を提供いただき、SORACOMの所有物であるゲートウェイ自身をサービスとして利用いただく形です。
所有モデルと共有サービスモデルを下図で説明します。
所有モデルの場合、A社のお客様に買っていただくとA社が所有し、A社所有のデバイスでデータを送ります。恐らく通常はプライベートモードに設定されていると思いますので、他のお客様はこのゲートウェイを経由してデータを送ることはできません。
共有サービスモデルの場合はB社が契約しSORACOMのゲートウェイをサービスで提供し、設置します。この場合B社のみならずC社もD社も個人も、そこを経由してデータが転送できます。
電電波としては所有・共有モデルいずれの場合でも、ゲートウェイまでは届いています。ただ所有モデルの場合、SORACOMがA社以外のデータは落としています。共有サービスモデルの場合は、B社以外のC社のデータや、開発者D氏のデータも通して、それぞれのお客様の元に届けます。
SORACOM LoRa Space にて共有サービスモデルゲートウェイの情報を公開
この共有サービスモデルのゲートウェイに関しては、SORACOM LoRa Spaceというウェブサイト上で、設置場所の情報を公開します。地図上で公開されているため、ゲートウェイを持っていないお客様でもLoRaデバイスを買っていただければ、公開されているゲートウェイの圏内ではデータ送信ができる仕組みです。シェアリングエコノミーです。
既にパートナー様と協業し、検証スポットとして北海道から沖縄まで共有ゲートウェイを置いています。SORACOMのオフィスやcloudpack様やウフル様等のオフィスに置いています。赤坂辺りにも三つ置いており、この圏内ではLoRaデバイスを使ってデータが送れます。今日時点で既に日本全国十数箇所でパートナー様と協業し、この共有ゲートウェイを配置しいます。
これから多くのお客様が、共有サービスモデルを契約し共有ゲートウェイが増えてくると、SORACOM LoRa Spaceの地図上に共有ゲートウェイの設置場所が見え、ここにあるのであれば別に立てなくても使えるんだなということがわかります。
共有サービスモデルを契約すると自分が契約したゲートウェイなのに、他の人に帯域を使われるのではと心配される方がいると思いますが、後ろのセルラー通信部分はSORACOMが提供しており、お客様側にコストが掛かることがありません。またゲートウェイ自身の処理能力が心配だという声もあるかと思いますが、LoRaのデータは、11バイトを数秒間に1回送る程度なのでゲートウェイをフルに使い切るというのは、逆に難しいことです。むしろ多くのゲートウェイやデバイスが乱立し、無線のリソースを取り合うより、共有ゲートウェイを公開しそれを皆で使う方が、特に開発・検証、個人のスキルアップを含めたエンジニアの環境としては非常に良いと思います。
共有サービスモデルのゲートウェイの利用料金は、こちらは購入いただく形ではないので、価格も安価です。まず初期費用は、登録費用として2万4,800円。月額利用料金は、所有モデルは3万9,800円でしたが、共有サービスモデルは9,980円です。この料金の中に、先ほどと同様にLoRaWANの利用料金もゲートウェイが通信するためのセルラーの利用料金も、SORACOMのアプリケーションサービス、Beam、Funnel、Harvestの利用料金も込みになっています。9,980円分はBeam、Funnel、Harvestも使えるというようなモデルです。
共有サービスモデルの場合のユースケースは、先ほどの所有モデルと同じです。水道メーターの場合で比べると、ゲートウェイ10個置いて3万個なので、一つのゲートウェイ当たり3,000個ぶら下がるので、大体月当たりのコストが1デバイス当たり3.3円です。ゲートウェイのコストがぐっと下がるので、デバイスの単価もぐっと下がります。ただし気を付けなければいけないのが、通信頻度が上がると値段も上がります。
例えば一番上の電灯監視は、ゲートウェイ1台当たり200台がぶら下がり、通信頻度1分に1回と頻繁に打ち込んでいます。1分に1回ということは、1日当たり60分×24時間、一ヶ月にすると10万回弱ぐらい打つことになり、BeamやFunnelの利用料金が9,980円を上回ります。その分使用が上がるので、月当たりの単価も80円ぐらいになります。ゲートウェイ当たり、どれぐらいのデバイスがぶら下がるのか、データを打つ頻度によって値段が違ってきます。
所有モデルと共有サービスモデルをかなり細かく比較したものが上図です。簡単に説明します。所有モデルはお客様がゲートウェイを持っています。共有サービスモデルはSORACOMが持っています。契約期間、所有モデルは任意です。共有サービスモデルの場合SORACOMが事業者として運営する形になりますので、こちらは、最短1年間契約期間とします。設置場所、所有モデルは任意でどこでも動かせます。自営の、自分のためのネットワークです。
共有サービスモデルは、申請していただき場所を変えるときにはお知らせいただきます。設置場所の公開は所有モデルは不要ですが、共有サービスモデルは必要です。共有利用も、所有モデルの場合は通常プライベートモードになっているので、共有する必要はないですが、共有しようと思えばできます。共有サービスモデルの場合、共有利用が必要です。利用可能時間ですが、所有モデルの場合は自分で電源を入れたり消したりできますが、共有サービスモデルの場合は基本的には常に電源を入れていただくことになります。
共有サービスモデルは制約が大きいですが、その分初期費用や月額費用には安価です。所有モデルのメリットは、プライベートで使えることです。好きな期間だけ共有もできますし、どこで使うか・どの時間帯で使うか、電源入り・切り、全て自由に決めていただけます。
共有サービスモデルの場合は、費用が安い分だけ公開しなければいけないという制約がかかります。このような形で共有サービスモデルの共有ゲートウェイが増え、もしくは所有モデルでも、共有してみようというお客様が増えていきます。共有されたゲートウェイの範囲内であれば、ゲートウェイを所有しなくてもSORACOMのLoRa Spaceのウェブサイト上に設置を確認できた場合は、デバイスだけ購入し既設のゲートウェイを経由してデータを送り届けることができます。
LoRaのデバイス、水位計のメーターなど、いろいろなデバイスが展示会場に展示してあります。昨日の夜、既に東京近郊に設置しているゲートウェイを経由して、データはSORACOMのほうに上がってきておりました。このような形でシェアリングエコノミーが広がってくると、いろいろ面白いと考えています。
LoRaデバイスだけを使うときの利用料金ですがデバイスを買っていただけば、実際に使うときには、SORACOM Air for LoRaWAN利用料金自体は無料です。SORACOMに登録しデバイスはコンソールの上に見え管理できても、無料です。データを送ると、SORACOM Beamなどの料金に1回毎に0.0018円掛かりますが様々な用途で使っていただけると考えています。今回、このLoRaのデバイスの最初の第1弾目であるArduino 開発シールド、通常価格7,980円ですが、期間限定先着順で4,980円に設定していますので、ぜひ使い始めてください。
どちらも2月7日15時から、SORACOMのウェブコンソールの発注ボタンから購入可能です。
新発表まとめ
本日の新発表のまとめですが、SORACOMのプラットフォームをLoRaWAN対応しました。
SORACOM Airというのは、IoT向けのモバイル通信サービスでしたが今日から位置付けが変わりました。SORACOM Airの中には、SORACOM Air for セルラーと、SORACOM Air for LoRaWANが存在しています。
そして2月7日15時より、LoRaゲートウェイ、デバイスの個別販売を開始します。また、これまでSORACOMで提供されているアプリケーションサービス、データ転送支援のSORACOM Beam、クラウド連携のFunnel、データ収集・蓄積のHarvestは、LoRaWANに対応します。これにより、LoRaデバイスから簡単にデータ収集、システム連携できます。
またLPWAのシェアリングエコノミーを目指して、ゲートウェイの共有サービスモデルを発表しました。所有モデルを好んで使われるお客様もたくさんいると思います。自営のネットワークを作りビジネスをし、自社の効率化を図ることもとても良いと思います。
一方で、共有サービスモデルのような新しい考え方を取っていただくお客様もいらっしゃると思います。共有サービスモデルの場合は、値段を下げて使いやすい形を提供させていただきます。また今後、共有されたゲートウェイがどこにあるのかという情報が公開されていく、SORACOM LoRa Spaceも本日から公開します。こちらは、どんどん機能を拡張していきます。LoRaデバイスのArduino開発シールドは、今日から初回キャンペーンとし2月いっぱいのキャンペーン価格での販売を予定しています。お早めにご購入ください。
今回、LoRaゲートウェイのインドアゲートウェイとLoRaデバイスのArduino開発シールド、この2種類を発売します。今後は屋外用のゲートウェイや、センサーが付いたLoRaデバイス等の販売も計画しており、パートナー様と一緒に利用できるLoRaデバイス、ゲートウェイは拡充していきます。
最後になりましたが、ソラコムのビジョンは、「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会」へということで、できるだけIoT向けの通信を使いやすい形で、できるだけ安く提供し、日本だけでなく世界から、たくさんのイノベーションが起こってほしいと思います。それをソラコムが少しでもお手伝いできれば、非常に光栄です。ご清聴ありがとうございました。
玉川 憲