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防災・減災、暮らしを守るIoT

毎年、台風や大雨、地震など様々な自然災害が発生しています。いつ発生するか分からないこの事象に対し、国、地方公共団体、民間企業、あらゆる場所で対策が講じられています。

離れた場所のモノやコトの状況をセンサーなどを用いてデータ化し、人の手を介さずに自動的にデータを収集、リアルタイムにデータを分析できるようにする「IoTの技術」は、防災・減災の現場でも利用されています。

この10年程で、センサーや通信機器等のデバイス、通信環境、現在状況をパソコンやスマホで誰もが閲覧できるようにするアプリなどの技術は、よりリーズナブルかつ手軽に使えるようになりました。このような背景から、地方公共団体で住民に新たな方法で現在状況を知らせる仕組みを提供するケースや、民間企業でエリア別の詳細な状況をいち早く把握し業務継続に活かすケースなど、新しい取り組みが始まっています。

防災への取り組みにIoTを活用している事例を3つご紹介します。

水位の危険度に応じた色で橋をライトアップ:熊本県人吉市

熊本県南部に位置する人吉市は、2020年の豪雨の被害が大きかったエリアです。

この時の豪雨災害では、以前から市が災害情報の伝達手段としていた「エリアメール」や「防災無線」の限界が明らかになりました。災害後、市民にヒアリングを行うと、特に防災無線は雨音のせいで音声がよく聞こえず、避難を促すアラートの役割を十分に果たせていない場合も多いことが発覚したのです。

そこで、同市では民間団体から提案もとりいれ、市内を流れる球磨川にかかる橋の照明を、河川の水位を基に氾濫の危険度に応じて変化させ、市民へ視覚的に災害の危険を伝える「人吉市ライティング防災アラートシステム」を、2022年4月より運用開始しました。

局所の浸水を検知し住民に通知:京都府福知山市

京都府の北部に位置する福知山市は、2013年からの5年間で4回もの水害に見舞われています。

同市は様々な防災対策を講じてきましたが、なかなか手がつけられなかったのが、盆地という特性から発生する内水被害です。市内を流れる由良川沿岸地域において、河川の水が増えた際に市街地への逆流を防ぐ目的で水門を閉めることで、河川に水が排水できなくなり堤防の内側に雨水が溜まってしまう現象です。堤防などにはすでに水位計は取り付けられていますが、内水被害は冠水可能性のある地点が多く、すべてに水位計を取り付けると初期コストがかさんでしまうことが課題でした。

そこで、同じく京都府のセンサー開発企業である亀岡電子と協力し、簡易に取り付けられるIoT水位センサーを設置。水位に異常があった際は、地域住民にLINEで通知する仕組みを導入しています。

震災時も物流サービスを継続するために:トラスコ中山

防災への備えは民間企業でも進んでいます。トラスコ中山は、機械工具などの工場用副資材を中心としたプロツールを、機械工具商やネット通販企業、ホームセンターなどを通じて、製造業や建設関連業、一般消費者まで幅広く販売する専門商社です。

災害時に必要性が高まる商品も取り扱っていることから、2011年の東日本大震災の経験をきっかけに、物流を止めない、災害時のサプライチェーン維持のための施策に取り組んできました。

ひとたび地震が発生し倉庫や交通網に影響が及ぶと、当該地域の企業からの仕入れや倉庫からの出荷が止まるなど影響は甚大です。その場合は、仕入れや出荷、配送オペレーションを早急に切り替え、物流サービスを継続する必要があります。

そこで、同社は2021年より全国17か所の物流拠点に、IoTを活用した地震観測サービスを導入し、倉庫における地震の影響を迅速かつ詳細に把握し、物流業務継続のためのBCPに役立てています。

普段からの備えが大事

防災・減災の分野は、これまでも様々な対策が講じられてきた分野です。国主導の大きな取り組みも多いですが、今回ご紹介したような「リアルタイムデータ取得」と「情報伝達」については、地方自治体や民間企業単位でも導入しやすい対策が増えています。

IoTの技術を使うことで、「必要な場所のデータをピンポイントで」、「リモートからデータを自動取得し一括管理」、「リアルタイムでデータを見える化、分析」、「知らせるべき人に知らせて、次のアクションを取る」ということが可能になります。

また、万が一の備えとして、災害から身を守るためには、一人一人の防災減災への心構えや準備も重要です。改めて、普段お住まいの地域、職場などの避難場所や避難経路、非常用持ち出し物品や備蓄、家族や関係者への連絡手段など、折を見て確認してみてはいかがでしょうか。

― ソラコム 田渕