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IoT SIMの譲渡機能を活用するために知っておきたい通信への影響

こんにちは、ソラコムのテクノロジー・エバンジェリスト 松下(ニックネーム: Max)です。

SORACOM Air for セルラーのIoT SIM譲渡が、2026年8月のアップデートにより SORACOM ユーザーコンソール上で完結できるようになりました。セルフサービスでの譲渡では譲渡手数料も発生しません。しかし、IoT SIMの譲渡にはいくつかの条件と制限事項があります。その中でも、運用中のIoTシステムで特に気になるのが「譲渡処理中にセッションが切断する」という点です。

そこで今回は、オンライン状態のIoT SIMを譲渡したとき、実際に通信がどのタイミングで途切れるのかを確認しました。さらに、譲渡先に同等のSIMグループ設定を用意した場合、その後の通信がどうなるのかも確認します。

本挙動は2026年9月現在のものです。将来変更となる可能性があることをご留意ください。

IoT SIMの譲渡と条件

IoT SIMの譲渡は、SORACOMに登録されているIoT SIMを別のSORACOMアカウント(オペレーター)へ移管する機能です。

たとえば、システム構築時に利用していたオペレーターから実運用を担当するオペレーターへSIMの管理を移したい場合や、運用体制の変更に伴って管理先を変更したい場合に利用できます。

基本的な流れは、譲渡元がリクエストを作成・送信し、譲渡先が内容を確認して承認する、というものです。承認後に譲渡処理が行われ、完了するとIoT SIMの管理と請求が譲渡先へ移ります。

詳しい操作方法は「IoT SIM をほかのオペレーターへ譲渡 (移管) する」をご覧ください。その際、譲渡の条件と制限事項がいくつかありますが、運用中のIoT SIMで特に確認しておきたいのが「譲渡処理時にセッションがオンラインの場合、譲渡処理中にセッションが切断される」というものです。

通信断は譲渡完了タイミング付近で発生する

では譲渡処理中のセッション切断は、実際にはどのような挙動なのでしょうか。今回は、オンライン状態のIoT SIMで1秒間隔のping(pong.soracom.io 宛)とMQTT通信(Connectionを作っておきつつ毎秒Publish)を継続しながら譲渡しました。

譲渡元からの譲渡リクエストの送信後や、譲渡先で譲渡リクエストを受信した時点では、通信は継続していました。通信断が確認できたのは、譲渡先で承認した後の譲渡完了タイミング付近です。

具体的には、以下のように1秒間隔で実行していたpingでは、次のようにシーケンス番号が飛びました。

#<= 数秒前に譲渡承認を実行
icmp_seq=232
icmp_seq=233
:
:  # 応答なしの期間
:  #<= 復旧直前に譲渡完了となっていた
icmp_seq=239
icmp_seq=240

今回の試験では、234〜238の5回分、約5秒間の通信断が発生しました。ただし、約5秒というのは今回の試験結果です。通信断時間が常に5秒ではない事が予想されるため、この点も注意すべきポイントです。また、MQTTのようなステートフルなプロトコルでは、このタイミングで接続が切断されることも確認できました。

今回の確認では、譲渡リクエストの作成や送信そのものではなく、譲渡先で承認した後、実際に譲渡が完了するタイミング付近で通信への影響が現れました。

譲渡先に同じSIMグループ設定がある場合、通信はどうなるのか

SIM譲渡では、譲渡先がリクエストを承認するときに、譲渡後のIoT SIMを譲渡先の既存SIMグループへ所属させることができます。一方、譲渡元のSIMグループ設定そのものは譲渡されません。公式ドキュメントでも、グループ設定自体は引き継がれないとされています。

そこで今回は、譲渡元と譲渡先の双方に同等のSORACOM Beam設定をあらかじめ作っておき、譲渡先で承認するときに、そのSIMグループへIoT SIMを所属させました。ちなみにこのSORACOM Beam設定は、AWS IoT Core へ MQTT 中継する設定です。

結果として、MQTT接続はいったん切断されましたが、クライアントが再接続すると、譲渡先側のSORACOM Beam設定を利用して通信を再開できました。つまり、譲渡先に必要なSIMグループ設定を事前に用意し、承認時にそのグループへ所属させておけば、通信断から復旧した後は譲渡先側の設定に従って通信を継続できます。

IoTでは通信断から戻れる実装を

今回の確認では、IoT SIMの譲渡時に一時的な通信断が発生し、MQTT接続も切断されましたが、再送・再接続にて通信が回復することが確認できました。また、SIMグループ設定も、譲渡先に必要な設定を用意しておけば、再接続後はその設定を使って通信を回復することができます。

ここで重要なのは、この「再送・再接続」考え方はSIM譲渡だけに限らないということです。

あらゆる現場から通信を利用するIoTでは、さまざまな理由で一時的な通信断が発生します。そのため、MQTTなどのステートフルなプロトコルでは切断後に再接続できること、HTTPといったステートレスプロトコルでも失敗した通信を必要に応じて再送できることを、普段から考慮しておく必要があります。

このような実装になっていれば、一時的な通信断を伴うSIM譲渡も、必要以上に特別なものとして扱わずに済み、積極的に回線の整理や請求の最適化をしていくことが可能です。

IoT SIM譲渡は、セルフサービス化によって以前より利用しやすくなりました。通信断への備えと譲渡先の設定を確認したうえで、運用上の選択肢として活用してください。

― ソラコム 松下 (Max)