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パソコンだけで参加できる「デバイスを使わない」IoTハンズオンをはじめました!

こんにちは、Customer Reliability Engineer (CRE) の三國です。
先日開催されました SORACOM UG ビギナーズ #1 にて、デバイスを使わない IoT ハンズオンを実施しました。通常、IoT の学習にデバイスは欠かせません。「センサーや通信機器などのデバイスが手元になくても気軽に IoT を学ぶことができるようにしたい」そんな思いを胸に、この度デバイスなしハンズオンを開発しました。当ブログでは、そこで用いたシステムと開発ストーリーを紹介します。

デバイスを使わない」 IoT ハンズオンとは

GPS マルチユニット SORACOM Edition (以後、GPS マルチユニット) をシミュレーションした画面を操作することで、IoT デバイスからのデータをクラウドに格納する・可視化するという体験ができるシステムを開発しました。GPS マルチユニットは位置、温度、湿度、加速度の情報を取得・送信できる、ソラコムの販売する IoT デバイスです。

当システムでは手で温めたり上下をひっくり返したりをブラウザ上でシミュレーションし、データを SORACOM へ送信しています。

手で温めているのをシミュレーションしている様子。
SORACOM Lagoon を用いた可視化。テンプレートを利用してすぐにこのダッシュボードを表示できるようにしている

開発のきっかけ

ソラコムでは COVID-19 の流行以前、時には他の会社様とコラボし、時にはユーザーグループ(SORACOM UG)にデバイスをお貸し出しして多くのハンズオンイベントを実施・支援してきました。このイベントを通して参加者は実際にモノを動かす楽しみを知り、「できる」という達成感を得ることから、多くの IoT プレイヤーが生まれていきました。

2019 年に実施したハンズオンイベントで、実際にデバイスを使って盛り上がっていた様子

しかし、COVID-19 の流行によってこうした物理的に集まって開催するハンズオンイベントはできなくなってしまいました。私個人としてもハンズオンイベントは入社前にソラコムを深く知るきっかけでしたし、スタッフとしてハンズオンイベントをサポートするのが好きでしたので悲しい気持ちでいました。物理的に集まれないという制約はありますが、何かできることはないかと開発してみようと思いました。

プレスリリースコンテストで原型作り

話は少し逸れますが、ソラコム社内では定期的にプレスリリースコンテストを行っています。コンテスト参加者は自分の作りたいサービスについて仮想のプレスリリースを書き、インパクトなどを競うものです。CEO の ken が SORACOM サービスを生み出したのも仮想のプレスリリースであり、SORACOM Orbit というサービスもプレスリリースコンテストから生まれるなど、ソラコムに根付いている文化です。

私はデバイスを使わないハンズオンというテーマでプレスリリースコンテストに参加することにしました。そこで思い浮かんだアイデアがブラウザ上でデバイスをシミュレーションする仕組みです。残念ながらコンテストでの優勝は叶わなかったのですが、プレスリリースを書くことで「どんなものを作りたいか」、「誰に届けたいか」というイメージをはっきりと抱くことができました。

コンテストに出した仮想プレスリリース

マーケティングチームとの二人三脚

一方で、マーケティングチームでも同じ悩みを抱えていました。ソラコムでは四半期ごとに QBR(Quarterly Based Review) というチーム間で成果や課題を共有する場があり、2020 年 3 月にはデバイスを用いないハンズオンを実施したいという悩みが共有されました。その時点ではまだ担当エンジニアがついていないということもあり、是非とも携わりたく手を挙げました。私は普段、お客様の問い合わせ対応やドキュメント整備に重点を置いていますが、こういったちょっと範囲外と見られるようなタスクをやらせてもらえるのはとても嬉しかったです。ソラコムにはリーダーシップステートメントという、15 の行動指針があります。今回の活動も、リーダーシップステートメントのうち「Just Do It」(まずはやってみる)「Think Without Boundaries」(殻を破って考える) を実践していると、評価してもらえました。こうして、マーケティングチームの、主にハンズオンを担当している nao と一緒に開発を進めていきました。

開発の紆余屈折

私は、ソラコム入社前は IT インフラエンジニア => パブリッククラウドの IaaS をサポートエンジニアというキャリアを積んでいました。一方で今回開発しようとしたのはブラウザ上でシミュレートするシステムで、あまり経験がありませんでした。最初のモックは見よう見まねの Javascript と素の HTML で書いたお粗末なもので、実際に使ってもらうには大幅な改善が必要でした。

一番最初のモック。最初は LTE-M Button for Enterprise をシミュレートするつもりだったが、後に Lagoon での見栄えなどから GPS マルチユニットに路線変更。

また、ハンズオンに使うためのアカウントはどうするか、どのようにハンズオンを進めたら参加者はやりやすいか、といったデバイスのシミュレーション部分以外の課題も山積みでした。運用面では nao をはじめとするマーケティングチームに、技術面ではエンジニアチームの中で詳しいメンバーに手厚いアドバイスをもらって進めました。

デバイスをシミュレーションするシステムについては、SORACOM のユーザーコンソールが Angular というフレームワークを使っていることから Angular で書くことにしました。最初は Udemy で勉強して、わからないところはユーザーコンソールの開発者の yuta にたくさん相談しました。また特にデザインに全く自信がなかったのですが、ここについては SORACOM Design System という社内用のデザインシステムがあったおかげでスムーズにできました。

そうしてようやく形になりかけた社内レビューの前日、比較的自信をもって妻にハンズオンシステムを試してもらいました。しかし、ハンズオンを終えた妻は全く楽しそうではありませんでした。

妻からのフィードバックをもとにカイゼン

楽しそうではなかった原因を深掘りしていくと、デバイスを触っている感じが無いことが原因だと思えました。当初は GPS マルチユニットの画像を貼っただけで、特にシミュレーション上の温湿度や位置を変えることでのインタラクティブな変化はありませんでした。

カイゼン前の画像。当初は GPS マルチユニットの画像を貼っただけで、インタラクティブな変化はなかった。

そこで急遽インタラクティブに見せる部分を開発し、手で温める画像や、表・裏をひっくり返している様子を見れるようにしました。結果、この部分でより楽しくハンズオンをしているような体験を得られると社内レビューで大ウケし、使ってもらえることになりました。ソラコムではお客様のフィードバックを聞いてサービスを改善しているのですが、実際にハンズオンに参加するような方の意見を事前に聞いておいたのは良かったと思いました。

手で温め、電車に乗り、裏面にするというのをシミュレーションしている。ラジオボタンを切り替えることでインタラクティブに変わる

使ってみてもらって

ハンズオンシステムはまずパートナー向けのイベントで、そして 11 月 7 日の SORACOM UG ビギナーズ #1 で使っていただけました。SORACOM UG ではユーザーグループ運営の皆様に丁寧に使い方を解説していただき、参加者も皆完走できていました。詳細はSORACOM UG ビギナーズ #1 の参加レポートを参照して下さい。

仮想のデバイスは実物と違うことがいくつもあり、うまくいくかは不安でした。特に SORACOM の良さであるセルラー通信の手軽さやセキュアさなどは仮想デバイスでは伝わらないので、楽しんでもらえるか・魅力が伝わるか心配でした。しかし、仮想デバイスのシミュレーション上の温度や位置情報でも、SORACOM Lagoon のダッシュボードに載せてみることで「IoT ってこんなことできるんだ」「SORACOM を使うと簡単に可視化できるんだ」というのが伝わったようでとても嬉しかったです。また、オンラインでデバイス不要のハンズオンなので、地方の方も準備なしに気軽に参加してもらえました。

おわりに

まだまだ課題はありますが、一人でも多くの IoT プレイヤーが生まれるようこれからも色々な方法でお客様を支援していきたいと思います。たとえば、エンジニアやシステム企画の方に向けた勉強会イベントを 11/17 – 19 にオンラインで開催します。また、デバイスを貸し出すハンズオンを過去に実施し、今後も企画する予定です。


デバイスを用いない IoT ハンズオンは今後も開催する予定です。その際はまた告知がありますので、是非ご参加ください!