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ソラコムの2人に聞いた IoT時代のモノづくりとは?

本記事は、ASCII.jp(株式会社角川アスキー総合研究所)に掲載された記事より転載/再編集したものです。
元記事:https://ascii.jp/elem/000/004/114/4114977/ 文:大谷イビサ 写真:曽根田元

IoT(Internet of Things)という用語が登場して久しいが、ではIoTってなに?という問いにきちんと答えられる読者はいるだろうか? そこで本連載では、IoTプラットフォームを展開しているソラコムのtakuyaこと桶谷拓也氏、Maxこと松下享平氏に「IoTとはなんぞ?」というテーマで対談に挑んでみようと思う。今回のテーマはずばり「デバイス」。IoT時代はモノづくり自体が変わるんですよ。(以下、敬称略 モデレーター ASCII編集部 大谷イビサ)

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ソラコムがなぜデバイスを手がけるのか?

大谷:通信プラットフォームに続いて、3回目のテーマはデバイスです。もともとソラコムも、通信やクラウドだけだったのですが、今ではさまざまなデバイスを手がけていますね。これまでの経緯をおさらいしてもらえますか?

松下:僕らが最初に手がけたのはUSB型のドングルです。これは、身近にあるパソコンをIoTデバイス化できるというわかりやすさと、マイコン等に通信機能を搭載するよりも手軽なため、IoTへの取り組みのハードルを下げる目的があります。現在もこのアプローチでIoTを始められている方も多くいらっしゃいます。

ソラコムのデバイスラインナップ

その次はIoTゲートウェイです。これは、現場の機器とデータセンターやクラウドを通信でつなげたり、データの変換を行なう「中継器」の役割があります。ここはパートナーの力をお借りすることで、さまざまなユースケースに対応できるラインナップが揃っています。IoTゲートウェイによって、工場内のPLCといった制御機器や産業用コンピューターをつなげられるようになりました。

大谷:工場とかのIoT化でよく使われていますよね。

松下:お客さまの声に応えていくと、次はデバイスを一から作りたいというニーズに応え、プロトタイプ向けのマイコンや拡張ボードを拡充しています。現場にあるセンサーとクラウドを直接つなげることができます。これが成功すると、量産や外販が見えてきますので、量産支援モジュールや開発環境が必要になります。一方で、プログラミングなしでIoTをやりたいというニーズもありますので、最近ではセンサー入りのIoTデバイスも提供しています。

このように目的や達成したいことに応じて、必要なデバイスも変わってきます。だから、パートナーと協力して、センサー入りからマイコンまで幅広くデバイスを取り揃えているわけです。また「入手のしやすさ」も利用のハードルを下げる事につながると考え、SORACOM IoTストアでデバイスを1つから購入できるようにしています。

大谷:シンプルな質問ですが、なぜソラコムがデバイスを提供するんですか?

松下:ソラコムは、IoT通信を1回線からリーズナブルにご利用いただけるようにしました。しかし、SIMを入手して何に挿して使うのか、デバイスはどこで買えるのか、という問い合わせをいただくこともありました。そこで、気軽に使えるデバイスを提供することで「使える人を増やそう」と考えました。

Maxことソラコムの松下享平氏

桶谷:より多くの現場をつなげるにはバリエーションが必要ですが、お客様が必ずしもデバイスに専門性を持っているわけではありません。ソラコムがデバイス側にもきちんと手を伸ばしていく必要があって、デバイスの種類を増やしてきたんだろうなあと。

takuyaことソラコムの桶谷拓也氏

大谷:なるほど。最近のAWSとかもそうですが、まさにクラウド側からエッジにアプローチしていく進化のベクトルなのかもしれません。

IoT時代のモノづくりがメーカーの競争力に直結する

大谷:IoTってInternet of Thingsなので、モノの話は欠かせません。松下さんの目から見て、IoTによってモノづくりは変わったのでしょうか?

松下:大きく変わっていると思います。具体的には通信の活用で「モノづくりのルールが変わり始めている」という実感です。ソラコムのお客さまと接していると、特にそれを感じます。

スマートフォンもいわばデバイスは入れ物で、アプリをいれて使いますよね。そしてメール、スケジューラー、SNSやゲームも通信があるから使える。通信前提で、デバイスやアプリを作るようになり、考え方はすでに進化しています。

大谷:最近はローカルとクラウドの境目があいまいです。

松下:ローカルとクラウドを一体にして「製品」としているのがスマートフォンのゲームだと感じています。通信が不要なローカル処理と通信が必須なクラウドの処理を分散し、利用者からはシームレスなUXに見せています。こういう時代になって、モノづくりは大きく変化せざるをえない状況になっています。

これまでのモノづくりは小型化・高性能化・低価格化が競争力の源泉でしたし、今もそうです。CPUやマイコン、センサーをうまく配置し、性能を引き出せるようにパッケージ化することですね。

でも、IoTにおけるモノづくりは、通信を活用してクラウドのパワーを活用するところまで含むようになっています。先ほど話したゲームのように、端末やクラウドまで含めてサービスとして展開されるので、モノづくりや製品の定義がずいぶん変わってきたというのが、私が感じている事です。

モノづくりの定義が変わった

大谷:桶谷さんもそんな実感ありますか?

桶谷:僕の中のモノづくりって、各パーツを作ることなんです。センサーだったり、モニターだったり、CPUだったり、部品ですよね。

大谷:なるほど。モジュールというか、ハードウェアの形をしているものですね。

桶谷:でも、今は個別の製品を組み合わせてIoTソリューションを作るという感じです。これまでハコの中の部品の組み合わせで閉じていたモノづくりが、IoTで通信が入ることでどんどん拡大し、クラウドまで拡がった。「モノがソリューション化」してきた感じですかね。

大谷:いろいろな意味で境界線みたいなのが変わったんですね。

松下:境界線が変わると、これまで個別の製品として売っていたものが、桶谷さんみたいにパーツとしても見えてきます。通信を活かしたIoT時代のモノづくりにどう取り組むかは、これからのモノづくりに大きな影響を与えると考えています。

たとえば、歩数計は歩数のカウントが役割でした。そこで競争力の一つが精度です。改良によって高精度の歩数計は数多くありますが、歩数計を欲している消費者のニーズは健康促進であり、歩数のカウントは手段の一つなんです。精度も大切ですが、それよりも昨日の歩数や今週の歩数と比較したり、なんだったら歩いて健康になるサービスが欲しい。そのため、歩数計に対して「データを取りたい」となるわけです。

大谷:体重計とかもそうですね。従来は体重を正確に計測できればよかったのですが、最近は健康管理やダイエットのサービスで用いるパーツという位置づけかもしれません。いずれそうなると思っていたサービス化が思いのほか早く来た感じです。

プラットフォームがあるから、既存資産もよみがえる

大谷:境界があいまいだからこそ、あえて聞きたいのですが、デバイスで担うべき部分、クラウドで担う部分ってどうお考えですか?

松下:SORACOM IoTストアで取り扱っているパートナーのGPSトラッカーの話が一つの方向性になるかと思います。

そのGPSトラッカーは、もともとパートナー自体が販売する際には、特定のクラウド連携の設定が入った状態で販売してます。でも、SORACOM IoTストアで販売しているモデルは、データの送信先が最初からUnified Endpointになっています。送るデータフォーマット自体は同じですが、SORACOM Orbitでデータ形式を変換しています。

具体的にはUnified Endpointに送ってもらったバイナリデータを、SORACOM Orbit上で動作する変換プログラムを使ってJSON形式に変換しています。すでに販売済みのハードウェアにもかかわらず、Unified EndpointとSORACOM Orbitによって多くのクラウドへ対応できるデバイスとして利用できるようになっています。

大谷:なるほど。通常は既存のデバイスをクラウドネイティブ化させようとしたら、たとえばAWSのSDKを入れて、認証とって、個別の型番を用意してみたいな話になりますが、それがクラウド側で実現されるんですよね。

松下:だから、これからIoTのデバイスを作りたいと考えているメーカーはもちろんクラウドネイティブなデバイスを作ると思うんですけど、すでに完成されたハードウェアを持つお客様でも、「より多くのクラウドに対応できる可能性があります!」という話になるんです。これもソラコムを選ぶ理由になるのではないでしょうか?

大谷:それは素晴らしいですね。データ送信のみを行なう単機能なハードウェアであっても、とりあえずSORACOMでデータを送ってくれれば、データ変換なり、転送なり、セキュリティなり、ハードウェア機能の一部をSORACOMプラットフォームで実現しますよという意味ですよね。

松下:はい。前回テーマだったプラットフォームは、お客様がなにかを作りたいと考えたときに使っていただくツールでもあるのですが、今あるリソースでどのようにクラウドに乗り入れるかという選択肢でもあります。プラットフォーマーとしてそういった機能を提供しているので、既存資産を活かすことが可能です。

ハードウェアって文字通りハード(硬い)ので、変化に弱い面があります。でも、IoT時代のモノづくりはハード部分と、ビジネス要件に応じて変化し続けるソフトウェア部分をどのように分担するかというアーキテクトがすごく重要になります。

その点、ソラコムはいろいろな仕組みをクラウド側に寄せています。だから、本当にハードでコーディングしなければならない部分は最低限にして、柔軟な開発ができます。通信を使って進化しやすくして、サービスの実現に近づけていくのが正しい気がしますね。

大谷:クラウドを利用すれば、市場やテクノロジーの変化に柔軟に対応できますよね。

松下:スマホって多機能だけど、いろいろと操作を覚える必要があります。その点、スマホよりも単機能でありながら、つながることを前提としてクラウドのパワーをフル活用しているのがスマートスピーカーだと思っています。機能をあえて削ることで、使える人を増やすことができるわけです。

機能が多いと使いこなせる人が少なくなる

IoTボタンが例に挙げられます。デバイスの機能としては、ボタンを押すと通知するという機能だけです。じゃあ押したときのロジックはどうするのかというと、クラウドに任せるというアーキテクチャなんです。ハードコーディングは最小限にして、ソフトウェアを進化させるという開発ができれば、専用機なのに、ずっと使い続けてもらえるということができます。

デバイスは現実世界や人とクラウド間をつなげるインターフェイスとして、重要性がますます高まっていると感じます。

デバイス寄りの人、クラウド寄りの人にファストパスを

大谷:今までのモノづくりをしてきた人からすれば、チャンスでもあるのですが、チャレンジでもあります。

桶谷:これまでデバイスだけ開発してきたから、クラウドなんてわからないよという人も増えたし、逆もしかり。クラウドだけやってきたから、デバイスがわからないよという人も増えたと思っています。これはIoTにおける最大の課題ですかね。

松下:デバイス寄りの人たちが現時点でクラウドの知見を持っていないというのはしようがない。ただ、クラウドの知見がないと、せっかくクラウドを使っているのにレンタルサーバーの延長線上として、イチからサーバー立ててしまったり、RDBMSをイチからインストールしたりするんです。

これって逆もしかりで、デバイスの知見を持っていないクラウド寄りの人たちも、もっといいデバイスがあるのに、ラズパイでがんばってしまうんです。

大谷:前回のカレーの話だと、スパイスからカレー作り始めちゃうんですね(笑)。

松下:そうなんです。目的に対して手間がかからず、安価で安定的な手段があったりするので、ここはもっと私たちが情報発信すべきなんですよね。「あなたはもっと簡単になれる」みたいな(笑)。

その意味で、(ワンストップで使える)SORACOM HarvestやLagoonはデバイス側の人たちから見たときに、「クラウド側は考えなくていいんだ」という1つの解になっています。

大谷:逆にデバイス側の知見を持っていないクラウド寄りの人たち向けのサービスがありますか?

松下:サービスと言うよりは、デバイス自体を提供しているというのが正解かもしれません。私たちがリファレンスデバイスとして、IoTボタンやGPSトラッカーを提供しているのはそういう背景だったりします。

リファレンスデバイスを購入される方は、やはり今までデバイス開発をやったことない人が多いんです。いきなり基板にハンダ付けしてみろと言われても困ってしまいますからね。

大谷:その点、リファレンスデバイスを買ってくれば、すぐに使えると。

松下:ソラコムは通信だけではなく、クラウドもデバイスもやっているのは、さまざまな方が最近乗り入れてもらっているから。ある人には不要かもしれないけれど、別の人には必要という品揃えになってるんですよね。

大谷:総合格闘技のIoTに立ち向かえるエンジニアのスキルセットって、ソラコム創業当時から話題になっているトピックですね。スキルだけではなく、アイデアや閃きも必要でしょうし。

松下:確かに自分の欲しいデータを得るためにはアイデアが必要なんです。でも、アイデアを得るには、デバイスに触れてみて、どんなデータを得られるのか、どんな変化を見つけられるのかを理解しなければなりません。その上で、自分が欲しかった情報がなにかを改めて考え、両者を照らし合わせることで、使い道につながります。

桶谷:最近、MaxがGPSマルチユニットをドアの開閉センサーとして使うというネタをやっているのですが、それもアイデアが面白いです。

大谷:どういう内容なんですか?

松下:GPSマルチユニットって、4種のセンサーとLTE-Mの通信機能、バッテリーが搭載されたセンサー入りIoTデバイスです。センサーとしては、GPSの位置情報、温度、湿度、加速度の4種類なんですが、加速度を使うことで実は「傾き」がわかります。

大谷:それは目に鱗ですね。

松下:傾きがわかるとなにがわかるか? これは閃きが必要なのですが、例としてはドアの開閉がわかります。「傾きセンサー」というだけでは、ドアの開閉には結びつけられない。得たい情報とセンサーの仕様を結びつけられると、実は欲しい情報をわりと簡単に入手できます。

傾きでドアの開閉という情報を知る

大谷:ただ、確かになかなか至らないですね。

松下:そうなんです。先ほどのGPSマルチユニットも、加速度センサーとして売っているので、ドアの開閉がわかるデバイスという形では提供していません。みなさんが知りたいと思っていることがソリューションであり、そこで使える通信入りデバイスという位置づけなんです。

デバイスに関しても「すぐに試せる」という価値を大事にしたい

大谷:ソラコムって、通信はもちろん、デバイスも手軽に試せるというのが大きいですよね。今までこの手のデバイスを購入しようとしたら、100個オーダーですとか、専門の商社を通してくれという話でした。「Makerムーブメント」で電気工作やハードウェアがコモディティ化してきたとはいえ、やはりSORACOM IoTストアでお手軽に買えるってけっこう革新的だと思います。

桶谷:実際にSIM100枚、納期はいつですか?といった問い合わせもいただきます。保証をするものではないですが、「翌日にはお手元に」くらいのスピード感ではあるんですよね。

僕はデバイスの経歴はあまりなくて、ソフトウェアやクラウド寄りの経歴なので、使いたいときにすぐに使えるのがけっこう当たり前なんですよね。だから、このスピードに違和感はないし、価値だとは意識していませんでしたが、お客さまと話していると納期早いのは助かりますと言われることが多いです。

松下:僕はもともとハードウェア出身だし、EC事業もやっていた経験があります。もう15年以上前ですが、受注したら出荷が翌日になるのは当たり前だった時代に、当日中に出荷をして翌日届くAmazon.comみたいなところは驚きでした(笑)。Webブラウザから数クリックすればサーバーにログインできるというAWSとあわせて、すごいとしか言いようがなかったです。

出荷が早いとなにがうれしいかというと、在庫を持たなくてもいいんですよ。注文が入った段階で、SIMやデバイスをSORACOMへオーダーすればいいので、資金繰り的にも助かると、パートナーに言われたこともあります。

大谷:事例で話を聞くと、SORACOMのメリットで最初に出てくるのって、とにかくモノが来るのが早いという評価ですよ(笑)。

松下:最初に評価されるのが物流なんだ……と(笑)。

桶谷:社内にいると、出荷の仕組み自体は理解しています。でも、出荷が早いのって、昔から目指していたのかなあって思います。僕が聞くのも変ですけど(笑)。

松下:出荷が早いという話って、先ほどお話しした「使える人を増やす」という目的にも合致すると思っています。Webから注文してから、商品到着に半年かかったら、正直やる気が萎えるじゃないですか(笑)。ソフト、サービス、デバイスまで含めて、すぐに使えるというのもソラコムが提供する価値になるんじゃないかなと思います。

そして解約も簡単であることも重要だと思っています。やめやすいということは、ひるがえって「始めやすい」ことにつながります。

電源問題に行き着くお客さまはIoTのトップランナー

大谷:さて、PoCフェーズの多かったIoTプロジェクトも、最近はプロダクションレベルにまで進むこと増えたと思います。でも、デバイスの場合、必ずぶち当たるのは「量産や商用化の壁」だったりします。ここらへん、ソラコムとしてはサポートあるんでしたっけ?

松下:まず支援するプログラム自体は存在しています。具体的にはソリューションアーキテクトやハードウェアに強い事業開発のメンバーが、お客さまのサービスのローンチまで伴走するような仕組みを用意しています。だから、ノウハウがなくても、実現するための支援は提供できます。

大谷:人材的にハードウェアに強い方もいるんですか?

松下:ソラコムのIoTデバイスの検証もしていますので、ハードウェアに強いメンバーもいます。検証を行なうメンバーのスキルやノウハウを、お客さまのために提供するということもあります。

桶谷:入出力の電圧にやたら詳しいメンバーもいます。また、デバイスを開発する場合も、プロトタイピングから量産支援までまるまるサポートするSORACOM エンジニアリングサービスも提供します。利用実績も増えているので、経験もどんどん積んでいる感じです。

大谷:ハードウェア周りで今お客さまが困っているところってどこらへんなんでしょうか?

桶谷:ご時世的に、デバイスや部品の調達はみなさんどこも苦労していますね。この話は出ない会社の方が少ないです。

あと多いのは、やはり電源の問題ですね。IoTを使いたい場所って、けっこう辺鄙なところだったりするので、電源が取れない場合があります。クラウドやソフトウェア側からアーキテクトすると、デバイスに電源はあるのは当たり前という前提になるので、一番ぶつかりやすい壁ですね。

大谷:確かに既存のITを考えても、電源がとれないところはあまり前提にならないですよね。

松下:電源問題に行き着くお客さまは、現在のIoTにおけるトップランナーですね。つまり、ほかの課題は解決して、やりきってる状態。最後にぶち当たる壁です。

桶谷:僕の場合は、この問題は最初からお客さまに出していきますね。いずれぶち当たる問題なので。

大谷:なるほど。電源問題はIoTで最後にやっつけるべきラスボスなんですね。

デバイスからソリューションへ そして次世代のモノづくりへ

大谷:次はどうなるのでしょうか?

松下:デバイスという観点だと、センサー入りのIoTデバイスは今のモノづくりの考え方で作られているという意味では、完成形に近い。一方で、この数年で手がけるようになったのが、デバイスよりもソリューションに近いアプローチです。

たとえば、2022年から提供を始めたSoracom Cloud Camera Services、通称「ソラカメ」は、クラウドに録画データを溜めておけるので、対応カメラを置くだけで使えます。

プロダクトからソリューションへ

桶谷:カメラは汎用的に使えるという点が大きいですね。たとえば、ソラコムが特定のメーカーのPLCからデータを引き抜くデバイスを作る可能性は低いでしょうね。

大谷:ソラコムとしては、どこかに特化しているのではなく、汎用的である、使い方を限定しないというポリシーがあるんですね。

松下:「使いこなせる人をいかに増やすか」という目的に向けて、ボーダーを設けることなく、いろいろチャレンジしていくのは変わりません。

大谷:桶谷さんは今後のデバイスについてどうお考えですか?

桶谷:映画の「ターミネーター」に液体金属でできた「T-1000」というアンドロイドがいるじゃないですか。あれって、先ほどMaxが言っていた「ハードは変化に弱い」「電源がないと動かない」という問題をクリアしているんですよね(笑)。夢物語ですが、T-1000のような液体金属が実現したり、ワイヤレス給電が劇的に進化したら、デバイス側は劇的に変わります。ネットワーク経由で再プログラミング可能なデバイスができるはず。ソラコムも、そこに向けて汎用性を目指していくのは変わらないと思います。

大谷:ありがとうございます。

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(提供:ソラコム)