本日は、先日公開したばかりのAIとIoTの活用事例、バルブの予兆検知によるメンテナンスのIoT活用事例をご紹介します。
バルブは、配管内の水・空気・石油・ガスなどの液体や気体、粉体を流したり、止めたり、流量をコントロールする機能を持つ流体制御装置で、製造業の工場をはじめ、ガスや水道などのインフラなど様々な場所で使われています。
安全に継続して使い続けるためには、定期点検やメンテナンスなどの保全業務が欠かせません。保守員の人手不足も課題となり、人手に頼る従来の方法からIoTを活用したスマート保全への移行が進んでいます。
バルブのトップメーカーのキッツの新規事業、AIとIoTを活用したバルブトラブルの未然防止ソリューション「KISMOS(Kitz Smart Monitoring System)」をご紹介します。
バルブ事業統括本部 ビジネスプロモーションセンター ES開発部 メンテナンスソリューショングループ長の西澤 勲氏に、製造業における新規事業推進、IoT・AI活用について経験談を伺いましたのでご紹介します。新規事業をご検討の方は、ぜひ参考にして下さい。
IoT活用事例の詳細は以下をご覧ください。
新規事業アイディアのきっかけ、最初の顧客との出会い
IoTとAIを活用した新サービスは、どのような経緯で誕生したんですか?
もともとは、会社の研修で受講したデザインシンキングのワークショップがきっかけでした。その際、顧客視点で新しいサービスを企画するという課題があり、そのときのアイディアが評価され、新しいチームが発足しました。
最初のメンバーは2名というスモールスタートです。最初は、Raspberry Piのようなデバイスを使ってシンプルなプロトタイプを開発しました。展示会で参考展示としてご紹介したところ、関心をお持ちいただけるお客さまと巡りあうことができ、実際に現場で使ってフィードバックをいただきながら、機能追加や改善を繰り返しました。
その結果、当初の仮説通り、バルブの故障の予兆をデータから得ることができ、お客さまのニーズも見えてきたため、正式に新規サービスとして提供することになりました。
製造業で新規事業を始める際のハードルは?
新規事業を進めるにあたって、ハードルなどはありましたか?
まず、商流を作ることでした。当社ではバルブは販売商社や代理店を通じて提供しています。このメンテナンスサービスでは、キッツが直接ユーザーと契約して、センサーなどを設置し、定期的な解析レポートを提供しますので、これまでの商流とは異なります。そこで、各所に説明して理解を得るところからスタートしました。ユーザーにはトラブルの未然防止による効果、商社や代理店にはバルブ販売後も継続してユーザーとの接点を得られるメリットなどをご説明することで理解いただき、協力体制を作ることができました。
また、製造業では品質や安全に対して高い基準があります。新規事業のような新しい取り組みは、仮説を立てて、実際に動くモノを作り、現場で試していただいてそのフィードバックを得て改善していくというPDCAサイクル、スモールスタートや、アジャイルなアプローチが求められます。そこで、このプロジェクトで求められる品質を関係者と事前に議論し、スピーディにプロジェクトを進められるように整理しました。
パートナー企業との協力、IoT・AI技術の習得方法
IoTやAIを活用するのに必要な技術・知識をどのように習得したのか教えてください。
もともと私はメカ設計・FAのエンジニアでしたので、IoTやクラウドはプロトタイプを開発しながら勉強しました。サービス提供のためのシステム開発には、さらなる専門知識を要するため、センサーや通信機器などのデバイス、機械学習、クラウドなどに知見をもつ複数のビジネスパートナーにプロジェクトに参画していただきました。私のチームでは、どのようにしたいかリクエストをお伝えして、パートナー企業に説明していただくことで必要な技術や要件を学んでいきました。リクエストや改善リストを考えていく時に、私達も仕様を読み解いて理解していくことで、パートナー企業と詳細な話もできるようになってきたように思います。
今後を考えると、社内にも技術が分かる人を増やしていく必要があります。社内で興味がある人にプロジェクトに参加してもらったり、パートナー企業にも依頼して、部分的にアップデート要件から社員でも対応できるように教えていただくなどして、内製化できる範囲を徐々に増やしています。
取り組みの詳細については、以下の記事をご覧下さい。
― ソラコム田渕 (kyon)