こんにちは、ソラコムのプロジェクトマネージャーの岡本(kiyo)です。
ソラコムのIoT向けデータ通信サービス「SORACOM Air」は、3GやLTEといったセルラー通信の他にも、LPWA(省電力長距離通信)の1つであるSigfoxを「SORACOM Air for Sigfox」(以下、Air for Sigfox)として、ご利用いただけます。
Air for Sigfoxでは、2017年12月よりクラウド側からデバイスに対してのデータ送信「ダウンリンクメッセージ」をサポートしており、データ収集だけでなくクラウド側からデバイスへの設定指示などにも、Sigfoxを使うことができます。
この度、Air for Sigfoxのダウンリンクメッセージに対して「再送」の設定ができるようになりました。この設定をONにすると、デバイス側からのダウンリンクメッセージ取得要求に対して、常に同じメッセージを返却します。これにより、デバイス自身までのメッセージ到達の確率を上げることができます。
Sigfoxのダウンリンクメッセージの仕組みと、「再送」の効果
本アップデートは、「Sigfoxのダウンリンクメッセージの仕組み」と「Sigfoxのメッセージ到達保証」の2つを知ることで理解が深まるので、解説します。
Sigfoxのダウンリンクメッセージの仕組み
Air for Sigfoxを含むSigfox通信において、ダウンリンクメッセージは「ポーリング型」で実現されています。
まず、SORACOMプラットフォーム上に、ダウンリンクメッセージを登録します。次に、デバイスから「ダウンリンクメッセージ要求フラグが付いたデータ送信」を行うと、データ送信完了後にダウンリンクメッセージが得られる仕組みです。
エンジニアの方であれば、HTTPのレスポンスにダウンリンクメッセージが入っているという表現が合っているかと思います。
Sigfoxのメッセージ到達保証と、「再送」の効果
Sigfoxはメッセージの到達保証がされていません。無線通信の中で失われてしまう可能性があります。例えば、ダウンリンクメッセージ要求フラグ付きのデータ送信は無事SORACOMプラットフォームに着信したが、帰りのダウンリンクメッセージが失われるという事が少なからず存在するわけです。
Sigfoxにおいて到達確認が必要な場合は、デバイス上のアプリケーション(ファームウェア)で実装いただくことになりますが、今回のアップデートは、この到達確認の実装を支援します。「再送」を設定する事で、デバイスは常に同じメッセージが取得できるため、デバイス自身までのメッセージ到達の確率を上げることができます。
ちなみに再送をOFFにした場合においては、ダウンリンクメッセージを送信した後は、SORACOMプラットフォーム上のダウンリンクメッセージが削除されます。これは、Sigfoxデバイスの通信環境が良好だったり、ダウンリンクメッセージの到達の確実性が低くても構わない場合においては、不要なデータが流れないことから有用な挙動です。
利用に際しての考慮事項
デバイス自身までのメッセージ到達の確率を上げることができる本機能ですが、考慮する点が2つあります。
ダウンリンクメッセージの取得可能な回数制限
Sigfoxのダウンリンクメッセージの取得可能回数は、デバイスあたり1日4回までという制限があります。
そのため、デバイスからのデータ送信時に常にダウンリンクメッセージ要求フラグを付けてしまうと、この回数制限を超えてしまい、最悪はデータ送信自体も失敗する可能性があります。
回避方法としては、例えば30分に1回のセンサーデータ送信をする(=1日あたり47回の送信)とした時、12回目、24回目…と節目のデータ送信時にのみ、ダウンリンクメッセージ要求フラグを付けるといった実装が考えられるでしょう。
同じメッセージを受け取っても重複しない実装
「再送」を設定した場合、デバイスでは何度も同じダウンリンクメッセージを取得する事になります。
そのため、例えば機器の設定をダウンリンクメッセージで変更するとしたときに、適用済みの設定が重複します。デバイス側での実装においては、重複しても問題が無いような実装が求められます。
実装例としては、今の動作設定を全て破棄して、新たに得られた設定を全適用するといった方法が考えられるでしょう。
設定方法
設定方法は以下の通りです。
- ユーザーコンソール左上のメニューから「Sigfoxグループ」をクリックします。
- グループ一覧から変更したいグループを選択します。
- 以下のように基本設定の「SORACOM Air for Sigfox 設定」を開きます。
- Sigfoxの設定画面で、Sigfoxダウンリンクメッセージを再送するを「ON」にします。
これを「ON」に変更すると、新しいダウンリンクメッセージが SORACOM プラットフォームに登録されるまで、同じダウンリンクメッセージを返すようになります。「OFF」にすると、ダウンリンクメッセージ要求を受けたら、ダウンリンクメッセージをSORACOMプラットフォームから削除します。
- 最後に「保存」ボタンをクリックして設定完了です。
Sigfoxのデバイス管理やSigfoxのグループの詳細な設定はこちらをご覧ください。
まとめ
SORACOM Air for Sigfoxは2017年のサービス開始の後、日本瓦斯様(ニチガス)といった大企業だけでなく、地場産業のDXを支える通信と、規模を問わずお使いいただいています。
今回のアップデートで、よりSigfoxの活用の幅が増えると思いますので、ぜひご活用ください!
また、これからSigfoxに取り組もうとお考えの方は、SORACOM IoTストアの「1台から使えるSigfoxデバイス」も併せてご覧いただければと思います!
― ソラコム岡本(kiyo)